📊 日経平均とTOPIX、何が違う?【同じ日に、片方が上がって片方が下がる理由】
ニュースはたいてい日経平均で語られます。「日本株は今日、○○円上がりました」。でも同じニュースの中に、もうひとつTOPIXという数字が並んでいるのを見たことがあると思います。しかもこの2つ、同じ日の同じ日本株の話なのに、片方がプラスで片方がマイナスになることがあります。
この記事で書きたいのは、計算式の暗記ではありません。この2つは「誰の話をしているか」が違う、という一点です。そこが分かると、「日本株が上がった」というニュースを、自分の持ち物の話として読んでいいのかどうかが見えてきます。ついでに、いまTOPIXそのものが作り変えの途中にあることも、あわせて書きます。
📌 本記事の指数の仕組み・数値は2026年8月8日時点で確認できた算出要領および取引所・公的機関の公表資料にもとづいています。相場の数値はすべて過去の実績であり、将来を示すものではありません。指数のルールそのものも変わります(実際にこの記事の後半で、いま変わりつつあるルールを扱います)。
🔀 同じ日の、同じ日本株。それでも逆を向きます
まず、理屈より先に実物を見てもらったほうが早いと思います。この1か月ほどの中から、実際にあった3日を並べます。
| 日付 | 日経平均 | TOPIX | その日、値上がりした銘柄と値下がりした銘柄 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月30日 | +433.24円 (+0.71%) | −21.53pt (−0.54%) | 値上がり528/値下がり987 下がったほうが約1.9倍 |
| 2026年8月6日 | −617.18円 (−0.93%) | +9.68pt (+0.24%) | 値上がり1,120/値下がり394 上がったほうが約2.8倍 |
| 2026年8月7日 | −76.55円 (−0.12%) | +19.08pt (+0.47%) | — |
※ 表は横にスワイプできます。
※ 値上がり・値下がり銘柄数は東京証券取引所「株式相場表」から、東証プライム市場でその日に売買が成立した約1,540銘柄を集計したものです(売買が成立しなかった銘柄は含みません)。
※ 値上がり・値下がりのほかに「変わらず」が20〜30銘柄あるため、2つを足しても総数にはなりません。
※ 8月7日は指数の動きだけを示しています(銘柄数の集計対象外)。
とくに8月6日を見てください。日経平均は617円安。ニュースの見出しだけなら「日本株、大幅安」です。ところがその日、実際に値上がりした銘柄は1,120、値下がりは394。上がった銘柄のほうが約2.8倍も多かった日でした。TOPIXもきちんとプラスで終わっています。
7月30日はその逆です。日経平均は433円高で「上がった日」なのに、値下がり銘柄のほうが約1.9倍多く、TOPIXはマイナスでした。ちなみに8月7日も、8月6日と同じ向きです。2日続けて逆を向いていたことになります。
どちらかが間違っているわけではありません。2つとも正しく計算されていて、それでも答えが違う。理由はひとつです。
⚖️ 「何を平均しているか」が、そもそも違います
日経平均は、選ばれた225社の「株価」を足して割った数字です。株価平均型、と呼ばれます。単位が円なのは、そのためです。もともとは東京証券取引所が算出していて、1970年から日本経済新聞社が算出しています。
TOPIXは、会社の「大きさ」を合計した数字です。正確には、市場で実際に売買されうる株式ぶんの時価総額(浮動株時価総額)を積み上げ、1968年1月4日の水準を100として比べています。単位がポイントなのは、基準日を100に置いた比率だからです。算出しているのは株式会社JPX総研です。
言葉で並べてもピンと来ないと思うので、2社しかない架空の市場で計算してみます。
A社=株価30,000円・会社の大きさ1兆円(株価は高いが、会社としては小さい)
B社=株価1,000円・会社の大きさ30兆円(株価は安いが、会社としては大きい)
※これは仕組みを見せるための架空の計算で、実際の日経平均の計算式ではありません(本物は「株価換算係数」と「除数」が入ります。このあと本文で説明します)。
| 株価を平均する指数 (日経平均のやり方) | 大きさで重みをつける指数 (TOPIXのやり方) | |
|---|---|---|
| A社だけが10%上がった日 | +9.7% | +0.32% |
| B社だけが10%上がった日 | +0.32% | +9.7% |
※ 表は横にスワイプできます。
※ 計算は本文の数字だけで再現できます。株価平均:(30,000+1,000)÷2=15,500 → A社が33,000円になると(33,000+1,000)÷2=17,000。大きさ加重:合計31兆円 → A社が1.1兆円になると31.1兆円。
※ 分かりやすさのため、実際の日経平均が使っている「株価換算係数」と「除数」は省いています。
まったく同じ市場で、まったく同じ「1社が10%上がった」という出来事なのに、答えが9.7%と0.32%に割れました。しかも、上がったのがA社かB社かを入れ替えるだけで、2つの指数の数字がそっくり入れ替わります。
これが、8月6日に起きたことの正体です。株価の高い会社が下がり、株価の安い会社が広く上がった——それだけで、片方の指数はマイナス、もう片方はプラスになります。計算方法が違うから答えが違う、というより、そもそもこの2つは「誰の話をしているか」が違う。そういうことだと思います。
🏋️ 「1社の重さ」の決まり方が、まるで違います
日経平均のほうは、実際にはもう少し手が入っています。各社の株価に「株価換算係数」という数字を掛けてから足し、「除数」で割るという作りです。
- ✖️株価換算係数は、新しく採用される銘柄には原則「1」が設定されます。ただし、毎年1月末と7月末の時点で、その1社の株価が225社ぶんの合計の1%を超えている場合は、1%を超えない範囲で0.1〜0.9(0.1刻み)に下げられます。このほか、想定される比重のわりに売買代金が少ない銘柄も、いったん半分の値で採用されることがあります(次の見直しで予定の値に戻します)。株式分割や併合があったときは、その比率に応じて変更されます。
- ➗除数は「225」ではありません。銘柄の入れ替えや株式分割のように、相場が動いたわけではないのに合計額が変わってしまう出来事が起きたとき、この分母のほうを直して指数がガタつかないようにするための数字です。だから日経平均は「225で割った平均値」ではなく、過去とつながるように調整された数字です。
- 🧢ウエイト上限(キャップ)もあります。1銘柄の比重が上限を超えると、その比重を抑える調整が入ります。上限は導入時(2022年10月)が12%、2023年10月から11%、2024年10月以降は10%と、段階的に引き下げられてきました。
一方のTOPIXは、重みが会社の大きさで決まります。実際の数字はこうです。
| TOPIXのウエイト | 比重 |
|---|---|
| いちばん重い1社(三菱UFJフィナンシャル・グループ) | 3.57% |
| 上位10社を全部合わせて | 23.17% |
※ 出典=JPX「TOPIXファクトシート」および「構成銘柄別ウエイト一覧」(いずれも2026年6月30日時点)。
※ 特定の銘柄をすすめる意図はありません。仕組みを説明するために、公表されている比重の数字を引いています。
この1,638銘柄は、上位10社を全部足しても23.17%。残りの4分の3以上は、細かく散らばっています。
ここで、TOPIX側の上限にも触れておきます。じつは、上限そのものは2つとも同じ10%です。TOPIXの算出要領にも、比重が10%を超えた銘柄は調整する、と書かれています(どちらも「超えたら抑える」という上限であって、そこまで重い銘柄が実際にいるという意味ではありません)。
つまり違いは「上限が何%か」ではなく、放っておいたときに何で重くなるかのほうです。TOPIXは会社の大きさで決まるので、1株の値段がいくらかは関係ありません。日経平均は225社の株価を足す作りなので、1株の値段が高い会社ほど、放っておくと重くなっていきます。
💭 ここは私の読み方です。日経平均の上限は、12%で入り、そこから2年続けて締め直されています。上限を作ったうえに、入れた翌年から2年連続で締めた。そして締め切った先が、TOPIXと同じ10%でした。「1社が重くなりすぎる」が、理屈の上の心配だけでは済まなかった——私はそう読みました。仕組みの説明としては「上限がある」で終わりですが、入れて終わりにしなかったところに、この指数の性格が出ている気がしています。
なお、「1つの銘柄が指数をどれだけ動かしたか」を表す寄与度という言葉があります。ニュースでよく出てくるので、意味は用語辞典の「寄与度」にまとめてあります。この記事では、公表のされ方が媒体によって割れる数字なので、個別の銘柄の寄与度は載せません。かわりに、取引所が公表している実際の値動きだけを見ます。
| 銘柄 | 終値 | 前日比(円) | 前日比(率) |
|---|---|---|---|
| イビデン | 20,330円 | +4,000円 | +24.5% |
| アドバンテスト | 33,720円 | +2,720円 | +8.8% |
| 東京エレクトロン | 58,550円 | +1,850円 | +3.3% |
| ソフトバンクグループ | 5,958円 | +730円 | +14.0% |
| フジクラ | 5,073円 | +445円 | +9.6% |
※ 表は横にスワイプできます。
※ 出典=東京証券取引所「株式相場表」2026年8月5日。率は終値と前日比から算出(小数第2位を四捨五入)。
※ 選び方=この日、日経平均の構成銘柄のうち値動きが目立った5社です(業種は電気機器・情報通信・非鉄金属にまたがり、ひとつのテーマでくくれる5社ではありません)。特定の銘柄をすすめるものではありません。
※ 円の値幅の大きさが、そのまま日経平均への効き方になるわけではありません。本文のとおり、各社の株価には「株価換算係数」が掛かってから足されます。ここで見てほしいのは、「率で大きい」と「円で大きい」が同じ順番にならないという一点だけです。
東京エレクトロンは率では+3.3%と、この中でいちばん小さい上がり方です。それでも円では+1,850円動いています。フジクラは率では+9.6%とその約3倍上がっているのに、円では+445円です。
「円」を足す指数と、「大きさ」で重みをつける指数では、同じ日の同じ出来事の見え方が変わる。率でしか見ていない人と、円でしか見ていない人は、同じ日の同じ会社を見ても違う感想を持ちます。この日、日経平均は+3.66%、TOPIXは+2.13%。どちらも大きく上がった日ですが、上がり方に1.5%分以上の開きがあります。
📏 「どちらが正しいか」ではなく、「誰の話か」
ここまでを、ひとことにまとめます。
選ばれた225社の話。顔ぶれは年2回(4月と10月の第1営業日)に見直され、1回に入れ替わるのは最大3銘柄まで(合併や会社の再編などによる入れ替えは数に入りません)。株価の高い会社の動きが効きやすい指数です。
1,638銘柄の話(2026年6月末時点)。会社の大きさで重みが決まるので、株価が1万円でも500円でも、そこは関係ありません。市場全体の平均点に近い数字です。
⚠️ 「TOPIXは東証一部の全銘柄」という説明は、いまは誤りです。2022年4月の市場区分の見直しで東証一部という区分そのものがなくなりました。いまのTOPIXは、そのときの構成銘柄を「どの市場を選んだかに関わらず」引き継いでいるので、スタンダード市場やグロース市場を選んだ会社も入っています。だから「プライム市場の全銘柄」でもありません。実際、2026年6月末でTOPIXは1,638銘柄、同じ日のプライム市場の上場会社数は1,553社です。
そしてもうひとつ、地味ですが大事なことがあります。日経平均の単位は「円」、TOPIXの単位は「ポイント」です。「日経が500円上がった」と「TOPIXが50ポイント上がった」を並べても、どちらが大きいかは分かりません。比べるなら、率(%)で比べるしかないということです。
そのうえで、この記事を書いている時点で起きていることを見てください。「日経平均が最高値」と「日本株全体が最高値」は、同じではないという話です。
| 日経平均 | TOPIX | |
|---|---|---|
| 終値ベースの 史上最高値 | 2026年6月25日 72,366.34円 | 2026年7月6日 4,101.96pt |
| 2026年8月7日 の終値 | 65,606.71円 | 4,074.93pt |
| 最高値からの 距離 | −9.34% | −0.66% |
※ 表は横にスワイプできます。
※ 終値ベース。2026年8月7日の終値まで確認しています(日々の終値は複数の市場データ提供元で一致を確認した値、TOPIXの過去の最高値水準はJPX「TOPIX年間四本値」〔終値ベース・2025年まで〕と照合しました)。
※ 過去の実績であり、将来の値動きを示すものではありません。
最高値をつけた日が、11日ずれています。そして8月7日の時点では、日経平均は最高値から9%以上下にいるのに、TOPIXは0.66%しか離れていません。
日経平均だけを見ていると「相場が崩れた」と感じる場面で、日本株全体はほとんど最高値のままだった。逆のことも当然起こります。どちらが正しいかではなく、どちらの話を聞いているのか。私はこの2つを、そう分けて読むようになりました。
🏛 日本株を1株も買っていない人にも、TOPIXは無関係ではありません
ニュースで有名なのは日経平均のほうです。でも、日本でいちばん規模の大きい公的な運用資金が「ものさし」に使っているのは、TOPIXのほうです。
公的年金の積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内株式の運用のものさしにTOPIX(配当込み)を使っています。2026年8月7日に公表された最新の四半期資料にも、はっきりそう書かれています。
規模はこうです。2026年6月末でGPIFが運用している資産額は317兆7,596億円。資産の25%を国内株式に置くという方針で、実際の国内株式は78兆4,321億円です(年金積立金全体で見ると24.48%。上の317兆円とは集計の範囲が少し違うので、この2つで割り算はできません)。
ここから先は、話を大きくしすぎないための限定が要ります。それを飛ばすと、事実より怖い話になってしまいます。
日本の公的年金は賦課方式。いま働いている人が納める保険料が、いまの高齢者の年金になります。財源のうち、積立金からまかなわれるのは約1割。残りの9割ほどは保険料収入と国庫負担です(2024年の財政検証で、今後おおむね100年間の平均として示された割合です)。
GPIFが運用しているのはここ。国内債券・外国債券・国内株式・外国株式に25%ずつ置く方針です。運用している残高は2026年6月末で317兆7,596億円。上の「1割」は財源の割合の話で、この金額とは別の軸の数字です。
ここのものさしがTOPIX(配当込み)。2026年6月末の実額は78兆4,321億円(この金額は年金積立金全体で見た集計で、割合は24.48%)。
※ 出典=GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」(2026年8月7日公表)、「年金財政における積立金の役割」、「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオ」。
⚠️ ここから「TOPIXが下がったら年金が減る」とは読めません。GPIF自身が「年金給付に必要な積立金は充分に保有しており、積立金の運用に伴う短期的な市場変動は年金給付に影響を与えません」と明記しています。また、あなたが納めた保険料がそのまま積み立てられてTOPIXに入っている、という構造でもありません(賦課方式だからです)。ここで言えるのは、日本株の平均点をどう測るかという物差しに、TOPIXが使われているという一点だけです。
もうひとつ、TOPIXと縁が深いのが日本銀行です。日銀は金融緩和の一環でETF(上場投資信託)を買い続けてきました。2021年4月1日からは、買う対象をTOPIXに連動するものだけに絞りました(それ以前は、TOPIX連動が約75%、日経平均などを含む3指数連動が約25%という配分でした)。
——と、買い入れの話はここまでが過去形です。新規の買い入れは2024年3月19日に終了し、2025年9月19日には保有分を市場で売っていくことが決まりました。実際の売却は2026年1月19日から始まっています(ペースはETFで年3,300億円程度・簿価ベース)。それでも保有残高は、2026年7月31日現在で簿価37兆円あまりあります。
🔧 その「市場全体」が、いま作り変えの途中です
年金は「ものさし」として、日銀は「買う対象」として、どちらも日本株の「全体」の代わりにTOPIXを使ってきました。ところが、その「全体」の中身が、これから変わります。
JPXは2024年9月27日にTOPIXの見直しを決めています。すでに見直し後の算出要領も発行済みで、これは検討中の話ではなく決まったルールです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| いつから | 2026年10月の最終営業日に、最初の定期入替が行われます(基準日は2026年8月の最終営業日)。次は2028年10月の最終営業日、その後は毎年1回です。 |
| どう変わる | いきなり外れるのではなく段階的。選ばれなくなった銘柄は、四半期ごとに8段階で比重が下げられ、2028年7月の最終営業日にゼロになります。途中の2027年に一度、再評価も行われます。 |
| 何で選ぶ | ①年間売買代金回転率(新しく入るには0.2以上、残るには0.14以上)と、②浮動株時価総額の累積比率(新しく入るには上位96%以内、残るには上位97%以内)。どれだけ活発に売買されているかが基準に入ったのが大きな変更です。 |
| どこから選ぶ | プライム市場だけではありません。スタンダード市場・グロース市場も含めた全市場区分が対象になります。 |
※ 出典=JPX総研「東証指数算出要領(TOPIX編)2026年10月1日版」および「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)。日付は算出要領の規定どおり「◯月の最終営業日」と書いています。
※ なお「スタンダード・グロースから約50銘柄が入る」という数字は、JPXが2026年3月末を基準日として行った試算であって、決定ではありません。
🚨 ここは、いま検索するとほぼ確実に古い数字が出てきます。「見直し後は約1,200銘柄になる」と書いている記事が大量に残っていますが、これは古い数字です。JPXが最新資料(2026年5月)で示している試算は2つで、2024年8月末を基準日としたものが約1,150銘柄、2026年3月末を基準日とした最新のものが約1,050銘柄。よく見かける「約1,200銘柄」は、前者を100銘柄刻みで丸めた概算です(同じ資料の脚注に「前回資料までは100銘柄刻みの概算として約1,200銘柄と記載」と書かれています)。しかも、どれも「試算」であって決定ではありません。実際にどの会社が残るかは、選定結果が公表される2026年10月まで、誰にも分かりません。数字を見かけたときは、「いつの基準日の、試算か決定か」を見に行くと迷いません。
つまりこれから数年かけて、TOPIXの「全体」の指すものが変わっていきます。試算どおりなら1,600を超える銘柄が1,000銘柄前後まで絞られ、かわりに市場区分の壁がなくなる。入ってくる顔ぶれのほうは、まだ試算の数字しか出ていない——そういう段階です。「昔のTOPIXと今のTOPIXを、同じ意味で比べられるのか」という問いが、これから何年か、ついて回ることになります。
🙋 私は、どちらの数字も「自分の残高の話」としては読んでいません
——ここまで、2つの数字の話をずっとしてきました。最後に、この数字を毎朝書いている私自身が、これをどう読んでいるかを書きます。平日はほぼ毎朝この2つを書いていて、人よりは見ている回数が多いはずなのですが、自分の資産が増えたか減ったかの手がかりとしては、ほとんど読んでいません。
理由は単純で、私が持っているものと、この2つの指数の顔ぶれが違うからです。いま金額がいちばん多いのは全世界や米国の株にまとめて連動するインデックスの投資信託で、それとは別に日本の高配当株も持っています(ほかにも少しずつありますが、中心はこの二つです)。日経平均に連動する商品も、TOPIXに連動する商品も、持っていません。
「じゃあ無関係なのか」と言われると、それも違います。私が持っている日本の株にも、TOPIXの構成銘柄に入っているものがあります。全世界の株に連動するファンドの中にも、日本の株は入っています。だから無関係ではない。でも「TOPIXが上がった=私の株が上がった」でもない。1,638銘柄の中の、ごく一部を持っているだけだからです。
世の中には「日経平均が上がったのに、自分の資産が増えていない」ともやもやする話がよくあります。そう感じる気持ちはよく分かります。大きく報じられる数字が、自分の口座の代表値のように見えてしまうからです。ただ私にとっては、あの数字はもともと自分の代表値ではありません。ズレているのではなく、最初から別の人の話でした。
この記事を書きながらいちばん意外だったのは、日経平均が617円下がったあの日、実際には7割を超える銘柄が上がっていたことでした。毎朝あれだけ数字を見ていて、私はその日を「下がった日」として記事に書いています。間違いではないけれど、その日に何が起きたかを説明しきってはいなかった——それが、この記事を書こうと思った本当の理由です。
📝 まとめ
日経平均とTOPIXは、どちらが正しいかを競っている数字ではありません。ここまで見てきたのは、ぜんぶ「誰の話をしているか」の違いでした。
- 🔀同じ日に逆を向くことがあります。2026年8月6日は、日経平均が617円安なのに、値上がりした銘柄のほうが約2.8倍多く、TOPIXはプラスでした。どちらも計算は正しいのに、答えが違います。
- ⚖️日経平均は「株価」を、TOPIXは「会社の大きさ」を平均しています。だから単位も違います(円とポイント)。2つを比べるなら、率でしか比べられません。
- 🏋️1社の重さの決まり方が違います。TOPIXは会社の大きさで決まり、いちばん重い会社でも3.57%、上位10社を足して23.17%(2026年6月末)。日経平均は株価で決まるので、1株の値段が高い会社ほど重くなります(上限は2つとも10%で同じ。違うのは、放っておくと何で重くなるかのほうです)。
- 📏「日経平均が最高値」と「日本株全体が最高値」は別です。史上最高値(終値ベース)をつけた日は、日経平均が2026年6月25日、TOPIXが7月6日と11日ずれました。8月7日時点では、日経平均は最高値から9%以上下、TOPIXは0.66%下です。
- 🏛公的年金の積立金を運用するGPIFは、国内株式のものさしにTOPIX(配当込み)を使っています。ただし年金財源のうち積立金は約1割、そのうち国内株式は25%。「TOPIXが下がると年金が減る」ではありません(GPIF自身が短期の市場変動は給付に影響しないと明記しています)。
- 🔧TOPIXは作り変えの途中です。2026年10月の最終営業日から段階的に入れ替わり、2028年7月の最終営業日まで続きます。「約1,200銘柄になる」は古い数字で、最新の試算は約1,050銘柄。実際の顔ぶれは10月まで分かりません。
- 🙋そして、どちらの数字も「あなたの残高」ではありません。自分が持っているものと顔ぶれが重なっているかどうかは、自分にしか分かりません。ニュースの数字は、そこを教えてくれない——それだけの話だと、私は思っています。
「今日は日本株が下がりました」というニュースを、私は長いあいだ、日本の会社が全部ちょっとずつ下がった日のことだと思っていました。でも実際には、東証プライムでは7割を超える銘柄が上がっているのに「下がった日」と呼ばれる日がある。どちらの数字も嘘はついていなくて、ただ見ている場所が違うだけでした。だから私は、あの数字と自分の残高を、はじめから別のものとして見ています。知りたいのが自分のことなら、見に行く場所はニュースではない。
・日経平均が1,000円動いた日、初心者がやるべきこと(結論:何もしない)
・オルカンとS&P500どっちがいい?(中身が6割重なるという話)
・積み立てたお金、いつ・どうやって取り崩す?(出口の3つの箱)
・経済用語辞典「寄与度」(1銘柄が指数をどれだけ動かしたか)
・経済用語辞典(ニュースに出てくる言葉をやさしく)
以下の一次資料で照合して作成しています。
- 日本経済新聞社「日経平均株価 算出要領」(2025年7月24日作成版)および同要領の別紙「構成銘柄選定基準」(2023年10月2日適用)
※2026年10月1日から適用される新しい算出要領と選定基準(いずれも2026年7月9日作成)も公表されていますが、変更は銘柄の選び方に関する部分で、この記事で扱った計算の仕組みや入れ替えの上限には及びません。 - 株式会社JPX総研「東証指数算出要領(TOPIX編)」(現行=2025年12月10日版/見直し後=2026年10月1日版)
※見直し後の版は、算出要領の一覧ページではなく「TOPIXの見直し」のページで配布されています。 - JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)、JPX「TOPIXの見直し」各ページ
- JPX「TOPIXファクトシート」「構成銘柄別ウエイト一覧」(いずれも2026年6月30日時点)、「上場会社数」(2026年8月7日更新)
- 東京証券取引所「株式相場表」(2026年7月29日〜8月6日)、JPX「TOPIX年間四本値」(終値ベース・2025年まで)
- GPIF「2026年度第1四半期運用状況(速報)」(2026年8月7日公表)、「年金財政における積立金の役割」、「公的年金制度と年金積立金」、「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオ」
- 日本銀行「当面の金融政策運営について」「ETF等の処分に関する決定」(2025年9月19日)、「『指数連動型上場投資信託受益権等の処分の指針』の実施日について」(2026年1月16日)、「ETFの買入れの運営について」(2021年3月23日)、営業毎旬報告(令和8年7月31日現在)
※ 日経平均株価・TOPIXの終値および前日比は、複数の市場データ提供元で一致を確認した値を使用しています(2026年8月8日時点)。
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・指数の利用や購入を推奨するものではありません。また、投資助言を行うものでもありません。記事中の個別銘柄名は、指数の仕組みを説明するために公表資料から引用したものであり、売買を推奨するものではありません。相場の数値はすべて過去の実績であり、将来の値動きを示すものではありません。指数の仕組み・数値は2026年8月8日時点で確認できた算出要領および日本取引所グループ・JPX総研・日本経済新聞社・GPIF・日本銀行の公表資料にもとづきますが、指数の算出ルールは変更されることがあります。なお「日経平均株価」「TOPIX」の名称および指数データに関する権利は、それぞれの算出会社に帰属します。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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