証券口座はどこで開けばいい?【その前に、開くのは「3つ」あります】

証券口座を開くときに実際に開いている3つの口座(取引の土台になる口座・特定口座などの課税口座・NISA口座)の関係と、あとから変えられるもの・その年のうちに選び直せないものを図解で解説する記事のアイキャッチ画像
MONEY BASICS · 投資のはじめ方

🏦 証券口座はどこで開けばいい?【その前に、開くのは「3つ」あります】

「証券口座、どこがいいですか」という質問は、とても多いです。ただ、比較サイトを何時間見ても決まらない、という話もよく聞きます。理由のひとつは、自分がいま何を開こうとしているのかが分かれていないことだと思っています。多くの方が「NISA口座を開く」と言いますが、その申し込み1回で実際に開いているのは3つです。そして、あとから思い立ってもすぐには置き場所を動かせないのは、証券会社そのものではなく、3つのうちのNISA口座だけです。この記事では、その3つの関係と、会社ごとに本当に差が出る場所を、法令と各社の公表資料まで戻って整理します。

🏦 開くのは3つ 🔀 申込フォームで聞かれる3つ 💸 手数料が無料になる条件 🔁 変えられる/変えにくい 📊 2025年の買付ゼロが1,044万口座

📌 本記事の制度・数値は2026年8月5日時点で確認できた法令および公的機関・業界団体・各社の公表資料にもとづいています。制度も各社の条件も変わります。特に手数料は改定が速いため、申し込む前に各社の公式ページでご確認ください。

🏦 「NISA口座を開く」と言うとき、実は3つ開いている

証券会社の申込ページを開くと、いきなり聞かれます。「特定口座を開設しますか」「NISA口座を同時に申し込みますか」。ここで手が止まる方はとても多いです。

止まる理由は、たぶん、この2つの質問が「別々のものを決めている」ようには見えないからだと思います。ふだん私たちは「証券口座を開く」と一言で言いますが、この申し込み1回で開いているものを分けて描くと、こうなります(図1)。この3つのうち1つは、聞かれもしないまま開いています。

📐 図1:証券口座を開くとき、実は3つ開いている
※ この図は下から読んでください。①の土台の上に、②と③が対等に乗ります(②と③は入れ子ではありません)。
② 税金の計算をしてもらう場所
課税口座
特定口座(源泉徴収あり/なし)
または 一般口座
③ 非課税で買える場所
NISA口座
つみたて投資枠
+ 成長投資枠
① いちばん下の土台
取引の土台になる口座
呼び名は会社ごとに違います(総合口座/総合取引口座 など)

②と③は入れ子ではなく、対等な関係です。ここを取り違えると、このあとの話がまとめてズレます。

⚠️ よくある誤解として「NISA口座は特定口座の中にある」という説明を見かけますが、これは違います。租税特別措置法では、特定口座(37条の11の3)と非課税口座=NISA口座(37条の14)がそれぞれ別の口座として定義されています。入れ子ではなく、並列です。だから「NISAの枠を使い切ったら、次は課税口座のほうへ」という話も成り立ちます。

①の呼び名が会社ごとに違うのは、これが法令用語ではないからです。ふだんの呼び方と法律上の名前を並べておきます(図2)。一度見ておくと、公的機関のページを読んだときに「同じことを言っている」と気づけます

📐 図2:ふだんの呼び方と、法律上の名前
ふだんの呼び方法律上の名前
総合口座法令用語ではない(各社の約款上の名前)
特定口座特定口座
(租税特別措置法 37条の11の3)
特定口座
(源泉徴収あり)
源泉徴収選択口座
(同 37条の11の4)
一般口座法令用語ではない(特定口座に入れていない上場株式等を扱う口座の呼び名)
NISA口座非課税口座
(同 37条の14 ほか)
つみたて投資枠特定累積投資勘定
成長投資枠特定非課税管理勘定

※ 表は横にスワイプできます。根拠は租税特別措置法の各条文および国税庁のタックスアンサー・NISA手続ページです。

この表で意外なのは、「特定口座(源泉徴収あり)」という名前が法律には出てこないことです。条文上の名前は源泉徴収選択口座で、それを選ぶために出す書類も「特定口座源泉徴収選択届出書」といいます。選ぶ/選ばないという言葉が名前に入っているのは、偶然ではありません。「あり」にするというのは届出書を出して選択する行為で、その届出には出せる時期が決まっているからです。つまりこの「あり/なし」は、いつでも自由に切り替えられるわけではありません。切り替えられる条件は、後半の一覧で整理します。

🔀 申込フォームで必ず聞かれる、3つのこと

どの会社で申し込んでも、聞かれることはだいたい同じです。会社ごとの画面の違いに気を取られがちですが、さきほどの2つにマイナンバーの出し方を加えた3つだけです(図3)。しかも、そのうち1つは選ぶ形で聞かれるのに、出す・出さないは選べません

📐 図3:申込フォームで聞かれる3つ
A 税金の計算を、誰がやるか
特定口座(源泉徴収あり) 特定口座(源泉徴収なし) 一般口座
B NISA口座を一緒に申し込むか
同時に申し込む あとから申し込む
C マイナンバーをどう出すか
個人番号カードで送る 個人番号入りの住民票の写しなど
※ 選べるのは出し方だけです。「出さない」という選択肢はありません。

AとBは、どちらを選ぶかで結果が変わります。Cで選べるのは出し方だけで、出す・出さないは選べません。理由は「マイナンバーは、任意ではありません」のところで書きます。

A 特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、何が変わるか

「源泉徴収あり」を選ぶと、売って利益が出たときや配当を受け取ったときに、証券会社が20.315%を差し引いて納めてくれます。自分で計算して確定申告をしなくてよくなる、というのが最大の中身です。初心者向けページが「迷ったらこれ」と書いているのは、この手間の話です。

⚠️ ここは射程を間違えやすいところです。源泉徴収ありは「確定申告をしなくてよい」であって、「できない」ではありません。他社の口座と損益を通算したいときや、その年の損を翌年以降に繰り越したいときは、自分で確定申告をする必要があります。「源泉徴収ありにしたから一生申告不要」ではありません。

20.315%の内訳(所得税・復興特別所得税・住民税)は、税金の記事のほうで分解しています。

では、3つ目の一般口座を選ぶとどうなるか。特定口座には、証券会社が1年分の損益をまとめた「特定口座年間取引報告書」を作って交付する義務があります(措法37条の11の3第7項)。一般口座には、この義務がありません。つまりいくらで買っていくらで売ったかを自分で計算して申告することになります。相続などで入ってくる場合を除けば、これから始める方が最初に選ぶ場面は少ない、というのが実際のところだと思います。

B NISA口座を一緒に申し込むか

同時でも、あとからでも申し込めます。ただしNISA口座には税務署のチェックという別の工程が入るため、課税口座より少し時間がかかります。この流れは「申し込んでから、買えるようになるまで」のところで整理します。制度の中身(つみたて投資枠と成長投資枠の違い)は、新NISAの記事にまとめています。

C マイナンバーは、任意ではありません

「マイナンバーを出さずに口座は作れませんか」という質問をときどき見かけます。答えははっきりしていて、出さないという選択肢はありません。法令上の義務だからです。

「特定口座開設届出書の提出をしようとする居住者……は……住民票の写しその他の政令で定める書類を提示し、又は署名用電子証明書等を送信して氏名、生年月日、住所及び個人番号を告知し、当該告知をした事項につき確認を受けなければならない
(租税特別措置法 第37条の11の3第4項)

NISA口座も同じで、国税庁の手続ページに個人番号の告知が必要と明記されています。なお、すでにその証券会社にマイナンバーを伝えてあれば、NISA口座を追加で開くときの再告知が不要になることがあります。

使える書類は個人番号カード、または個人番号が記載された住民票の写しなど。手元に通知カードがある方は、下の注意もご覧ください。

⚠️ 通知カードの扱い
通知カードは2020年5月25日に新規発行・再交付などの手続が廃止されました。ただし廃止されたのは手続であって、券面そのものではありません記載された氏名・住所等が住民票と一致していれば、いまもマイナンバーを証明する書類として使えます(マイナンバーカード総合サイト)。逆に、引っ越しや改姓で券面と住民票がズレていると使えません。証券口座では、住所等確認書類と併せて提示する扱いになっています(日本証券業協会)。いっぽう、その後に送られてくる個人番号通知書は、確認書類として使えません。引き出しの奥から出てきたのが通知カードなら、券面の住所が今の住所と同じかどうかだけ、先に見ておくと安全だと思います(個人番号通知書のほうは、住所が合っていても使えません)。

💸 会社ごとに差が出るのは、実はこの3点

ここからが「どこで開くか」の話です。比較の軸を増やすほど決まらなくなるので、実際に差が出ているところだけを3つに絞ります。売買手数料取扱商品積立の決済手段です。

先にお断りしておくと、以下は事実を並べたもので、どこかをすすめるものではありません

売買手数料 ─「ネット証券は無料」ではなく「条件を満たすと無料」

「ネット証券なら国内株の手数料は無料」という説明をよく見ます。ただ、各社の公式ページを1社ずつ読むと、無料になる条件がそれぞれにあることが分かります(図4)。

📐 図4:国内株の売買手数料が0円になる条件(2026年8月時点)
会社0円になる条件
SBI証券 インターネットコース等を選び、かつ取扱書面をすべて電子交付に設定する(同社の「ゼロ革命」)
楽天証券 ゼロコースを選択し、SOR(Rクロスを含む)の利用に同意する
マネックス証券 NISA口座の国内株式等は無料課税口座は有料(取引毎手数料コースは約定代金5万円以下で55円〜)
松井証券 1日の約定代金合計50万円以下は0円。加えて25歳以下は金額にかかわらず無料
三菱UFJ eスマート証券
(旧auカブコム証券)
2026年5月18日から、SOR注文を選ぶと無料(名古屋・福岡・札幌の各取引所上場銘柄はSORの対象外)

※ 表は横にスワイプできます。2026年8月時点の各社公式ページ・プレスリリースにもとづきます。最新の条件は各社公式でご確認を。信用取引・単元未満株・外国株は、さらに条件が分かれます。

こうして並べると、「無料」の中身が同じではないことが見えてきます。設定を変えるだけで無料になる会社もあれば、注文方法の選択が条件になっている会社もあり、口座の種類で分かれている会社も、1日の取引金額や年齢で分かれている会社もあります。「無料」という同じ2文字の下に、少なくとも4種類の条件が入っているということです。

言い換えると、手数料は「どの会社を選ぶか」だけでなく「開いたあとに設定したか」でも決まっているということです。開設したまま初期設定を触っていないと、無料のつもりで有料のまま使っている、ということも起こり得ます。

取扱商品 ─ 制度の対象と、その会社が扱っている数は別

つみたて投資枠で買える商品は、金融庁が一覧にしています。2026年7月30日時点で、指定インデックス投資信託が286本、それ以外の投資信託(アクティブ運用等)が65本、ETFが9本。合わせて360本です。

ただしこの360本は「制度の対象になり得る商品」の一覧で、どの会社でも全部買えるわけではありません。実際に何本を扱うかは金融機関ごとに違います。比較サイトの「取扱本数」は、この差のことです。

🏛 銀行・郵便局とのいちばん大きな違い
銀行や郵便局のNISA口座では、上場株式・ETF・REITは買えません。買えるのは株式投資信託だけです(日本証券業協会)。投資信託だけを考えている方には関係の薄い差ですが、「あとで個別株も見てみたい」気持ちが少しでもあるなら、先に知っておくと迷いが減ると思います。

購入時にかかる手数料は、商品の種類で条件が違います。つみたて投資枠の対象になる投資信託は、制度上ノーロード(購入時手数料ゼロ)が要件です。いっぽう、つみたて投資枠の対象になっているETF(上場株式投資信託)9本のほうは、要件が「売買手数料1.25%以下」で、ゼロであることまでは求められていません(金融庁「NISAを利用する皆さまへ」の対象商品要件。ETFは買うときと売るときの手数料で要件が決まっています)。実際にいくらかかるかは、さきほどの図4と同じで会社ごとの条件しだいです。成長投資枠や課税口座で買う投資信託も、ネット証券では原則として購入時手数料なし、というだけで、SBI証券自身が「一部銘柄は対象外」と書いています。「ネット証券なら全部ノーロード」と覚えてしまうのは少し危ういです。保有中にかかるコストの話は投資信託の手数料の記事で扱っています。

積立の決済手段(クレカ積立)─ 上限は月10万円

クレジットカードで投資信託を積み立てられる仕組みがあります。上限は月10万円。この10万円は各社が決めたサービス内容ではなく、金融商品取引業等に関する内閣府令の第148条第2号という法令に書かれた数字です。NISAの制度で決まっているのではない、というのが地味に大事なところです。

⚠️ 誤解されやすいのは、この月10万円が「つみたて投資枠の枠」ではないことです。その証券会社でのクレカ積立の合計額(課税口座・NISAのつみたて投資枠・成長投資枠をすべて合わせた金額)に対する上限です。「NISAで10万円、課税口座でも10万円」とはなりません。

面白いのは、この「10万円」という数字は昔から条文にあったことです。変わったのは金額ではなく、数え方のほうでした。2024年3月8日の改正まで、条文の要件は同一人に対する「信用の供与」が十万円を超えないことでした。そのため各社は実務上、月5万円に抑えていました。金融審議会の報告書も、その理由を「クレジットカード会社の決済サイクル等を踏まえ」と説明しています。改正でこれが、その月に買い付けた代金の合計で十万円を判定する形に変わり、条文どおりの月10万円が実際に使えるようになりました。なお、カードのポイント還元率は、カードのランクや改定で変わるため、この記事では扱いません。

🔁 でも、選び直しに「年に1度の窓」があるのは1つだけ

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

最初に決めた3つのうち、あとから変えやすいもの変えにくいものは、はっきり分かれています(図5)。

📐 図5:あとから変えられるもの/変えにくいもの
決めるものあとからどうなるか
証券会社そのもの
(取引の土台と課税口座)
◎ 変えられます。しかも複数持てます
ただし、持っている商品を他社へ移すときは費用がかかるのが原則です(移った先が負担してくれる常設の仕組みもあります・下記)
源泉徴収
あり/なし
△ 条件つき
その年にまだ1度も売っていない・配当を受け入れていない場合だけ、年の途中で変更できます。すでに動いていたら翌年から
NISA口座
(どの金融機関か)
▲ 年単位でしか変えられません
しかも、その年にすでにNISA枠で買っていると、その年の変更はできません

※ 表は横にスワイプできます。根拠は租税特別措置法37条の11の4、国税庁のNISA手続ページ、金融庁および日本証券業協会のQ&Aです。

証券会社は乗り換えられます。ただし、商品ごと移すかどうかで話が変わります

証券口座は、1人でいくつ持っていてもかまいません。主要なネット証券では口座管理料もかかりません(2026年8月時点。対面型や一部の商品では管理料がかかる場合も)。

ただ、「乗り換えられる=タダで動かせる」わけではありません。持っている商品を他社へ移す(移管する)とき、国内株式は無料の会社が多い一方で投資信託は1銘柄あたり3,300円(税込)を、いま預けている会社に払うのが原則です。2026年8月時点で、SBI証券・楽天証券・松井証券は3,300円、三菱UFJ eスマート証券は5,500円(国内株式も1銘柄1,100円・上限33,000円)でした。3,300円の会社なら、5本で16,500円です。

ただ、実際に自腹で終わるとは限りません移った先の会社が負担してくれる仕組みがあるからです。SBI証券の「投信お引越しプログラム」と松井証券の「移管手数料負担サービス」は、どちらも終了日を設けていない常設のサービスとして、移管元に払った手数料を全額戻すと案内されています(内容は予告なく変更・中止の可能性あり、との注記つき)。ほかの会社でも、期間を切ったキャンペーンとして実施されることがあります

見落としやすいのは、いったん自分で払ってから、あとで戻ってくるという順番です。しかも自動ではなく、領収書を添えて申請が必要で、期限もあります。出し忘れれば、そのまま自腹です。

費用より先に確かめたいこともあります。移る先の会社がその投資信託を扱っていなければ、そもそも移せません。なお、ここまでは課税口座(特定・一般)の話です。NISA口座のほうは事情が違うので、このすぐあとで書きます。

もっとも、これは「いま持っている商品ごと引っ越す」場合の話です。古い口座はそのままにして、新しい会社では新しく買っていく。それなら、この費用も制約もかかりません。

「あとで変えられる。ただし、最後にいくら残るかも、そもそも移せるかも、移る先しだい」——この温度感が、私にはいちばん実感に近いと思いました。

変えにくいのは、NISA口座のほうです

NISA口座の金融機関を変えるには、変更したい年の前年10月1日から、その年の9月30日までに「金融商品取引業者等変更届出書」を出す必要があります。年内ならいつでも、ではありません。

さらに条件があります。よく「その年に1度でも買っていたら変更できない」と説明されますが、法令の言い回しは「買付」ではなく「上場株式等の受入れ」。正確には、変更届出書を提出する日以前に、その年分の枠で商品を受け入れていると、その年分の変更はできません。1月に買って9月に届け出ても、変更できるのは翌年分からになります。

💡 買っていなければ変えられる、が判定の軸です

条件は「受入れ」なので、その年に売っただけなら変更できます。買っていなければ大丈夫、と覚えるとシンプルです。

変更したあと、前の会社のNISA口座にある商品はそのまま非課税で持ち続けられます。ただし新しい会社のNISA口座へ移すことはできません。持っている場所が分かれたまま続く、ということです。

また、つみたて投資枠はA社、成長投資枠はB社という分け方はできません。NISAは同じ金融機関の中でしか使えない仕組みになっています。

⚠️ よく見る「1人1口座だから、2つの会社にNISA口座は持てない」は、少し不正確です。年単位で金融機関を変更すると、前の会社(過年度に買った分)と新しい会社(今年の分)の両方にNISA口座がある状態になります。これは正常な状態で、正確には「その年に新しく買えるNISA口座が1つだけ」ということです。

整理すると、会社選びで悩んでいる部分の多くは、あとから変えられる部分です。取引の土台と課税口座は、いくつ作ってもかまいませんし、あとから増やすことも乗り換えることもできます。けれどNISA口座だけは、その年に新しく買える場所がそのうちの1社だけで、置き場所を変えられるのは年に1度の窓だけ。同じ「どこで開くか」でも、この2つは重さがまったく違います。順番として、そこだけ少し丁寧に考えておく、という向き合い方はあり得ると思っています。

📮 NISAなのに配当が課税される、たったひとつの設定

口座を開いたあとの設定で、いちばん見落とされやすいのがこれです。

NISA口座で株を買えば、値上がり益も配当も非課税になる——多くの方がそう理解していると思います。売買益はそのとおりです。ところが配当は、ある設定をしていないと20.315%が引かれます。

その設定が「株式数比例配分方式」です。配当金を証券口座で受け取る方式で、これを選んでいないと、NISA口座で持っている株の配当でも課税されます。

先にお伝えすると、投資信託だけを買う予定の方は、この話は関係ありません。
この設定が必要なのは上場株式・ETF・REITの配当(分配金)です。投資信託(株式投資信託)の分配金は、手続をしなくてもNISAで非課税になります(日本証券業協会)。ここを混ぜた解説をよく見かけますが、必要なのは上場しているほうです。

📮 配当金の受取方式と、NISAでの扱い
受取方式NISA口座の配当は
株式数比例配分方式
証券口座で受け取る
非課税
配当金領収証方式
郵便局などで受け取る
20.315%が引かれます
登録配当金受領口座方式
銀行口座でまとめて受け取る
20.315%が引かれます
個別銘柄指定方式
銘柄ごとに受取口座を指定
20.315%が引かれます

※ 表は横にスワイプできます。日本証券業協会の資料にもとづきます。売買益はどの方式でも非課税のままで、配当(分配金)だけが分かれます。

もうひとつ、あまり触れられていない性質があります。この受取方式は、その人が持っているすべての証券会社・すべての口座の上場株式に一律で適用されます。「A社では株式数比例配分方式、B社では銀行受け取り」という使い分けはできません。

また、2009年の株券電子化のときに信託銀行などに作られた特別口座(ここまで何度も出てきた「特定口座」とは別のものです)に株が残っている方は、この方式を選べない場合があります。「昔、親から株を引き継いだまま放っている」という方は、証券会社に確認しておくと安心だと思います。

⏳ 申し込んでから、買えるようになるまで

「思い立ってから、実際に買えるまでどれくらいかかるのか」。ここは会社の公表値がはっきりしています(図6)。

📐 図6:申し込みから買えるようになるまでの流れ
1
申し込み・本人確認
マイナンバーカードでオンライン完結するか、書類を郵送するかで日数が大きく変わります。
2
取引の土台になる口座+課税口座が開く
SBI証券は「ネットで口座開設」を選ぶと取引まで最短翌営業日、書類を返送する場合は到着後3営業日程度。楽天証券はオンライン完結で最短翌営業日にログインIDがメールで届き、郵送だと約5営業日。(2026年8月時点・各社公式)
3
NISA口座は、税務署のチェックが入ります
同じ年に複数の会社でNISA口座が開かれていないか(二重口座でないか)を税務署が確認します。会社の努力では縮められない工程です。
※ ただし、この確認を待たずに買える仕組みがあります
これはステップ3のあとに起きることではなく、ステップ3と並行して使える例外です。税務署の確認が終わる前でもNISA口座で買えるようにするもので、呼び名が会社ごとに違います。楽天証券は「即日買付制度」、SBI証券は「仮開設制度」。いまの法令や国税庁・日本証券業協会の資料には、この制度をまとめて呼ぶ名前が出てきません。公式ページで探すときは、この2つの言葉を手がかりにするのが早いです。

※「最短翌営業日」は、マイナンバーカードによるオンライン本人確認で、かつ書類に不備がない場合の話です。混雑や不備があれば、もっとかかります。

この「確認を待たずに買える」仕組みについて、初心者向けの解説でいちばん誤って書かれているのが、二重口座だと分かったときにどうなるかです。

⚠️ 「買った取引が無効になる・取り消される」と書かれていることがありますが、そうではありません。日本証券業協会のQ&Aによれば、そのNISA口座で買った上場株式等は「当初より一般口座で買い付けたものとして扱われます」。買ったもの自体が消えるのではなく、非課税の扱いだけが外れるということです。税務署の確認は受付順で、最初に受け付けられた会社のものが有効になります。

もうひとつ、2026年に動きがありました。この仕組みは、これまで新しくNISA口座を作るときの話でしたが、金融機関を変更するときにも適用する会社が出てきています。楽天証券は2026年3月22日の申込受付分から対応。ただし全社が一斉に対応しているわけではないので、移る先の会社の案内をご確認ください。

👶 年齢の条件は、2027年に変わることが決まっています

2026年8月時点では、NISA口座を使えるのは18歳以上(利用する年の1月1日時点)です。ただし、この年齢の条件が変わることは、すでに法律になっています。2026年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)で、2027年から、つみたて投資枠の対象年齢が0〜17歳にも拡充されることが決まりました(年60万円・非課税保有限度額600万円)。成長投資枠のほうは18歳以上のままです(つみたて投資枠が、いまの18歳以上に加えて0〜17歳にも広がる、という形です)。ちなみに0〜17歳分の枠は、条文上「未成年者特定累積投資勘定」という名前がついています。「NISAは18歳から」という説明は、2027年には書き換えが必要になります。

🙋 開いたあと、1,044万口座が2025年は1度も買っていません

ここからは、数字と私見です。

金融庁が2026年7月3日に公表した調査によると、NISA口座は28,206,434口座(2025年12月末時点)。約2,821万です。ところが同じ調査には、こういう数字も載っています(図7)。

📐 図7:2025年に1度も買付がなかったNISA口座
2025年に買付があった
約1,811万口座
1度も買付がなかった
約1,044万口座

金融庁「NISA口座の利用状況調査(2025年12月末時点)」より。この分布の集計対象は28,558,925口座(上の口座数とは集計の取り方が異なるため一致しません)で、そのうち10,446,488口座が2025年中に1円も買っていません。割合にすると約37%です。

開かれたNISA口座の、3つに1つ以上が、その年は1度も買付がなかった。この数字を見たとき、私は「開設のハードルより、その先のほうが高いのかもしれない」と思いました。

もうひとつ、「みんなやっているのか」に答える数字も並べておきます。証券会社の個人の口座数は42,103,831口座(2026年3月末・日本証券業協会)。ただしこれは同じ人が複数の会社に持てる延べ数です。

株主の人数のほうも、数え方が2つあります。東京証券取引所などの「株式分布状況調査」は、上場会社をまたいだ名寄せができないため、10銘柄持っている人を10人と数えます。2025年度末の個人株主数は、この延べ人数で9,198万人(2026年7月2日公表・過去最高)。いっぽう証券保管振替機構(ほふり)は銘柄横断の名寄せをしていて、そちらでは1,677万人(2025年10月〜2026年3月・日本証券業協会も同じ数字を引用しています)。

同じ「個人株主」を数えているのに、9,198万と1,677万。数え方が違ううえに集計の対象期間も揃っていないので、単純に比べることはできません。それでも、延べで数えるか、名寄せして数えるかで、見える景色がここまで変わる、ということは分かります。「口座数◯千万」「株主◯千万人」という大きいほうの数字を、そのまま「投資をしている人の数」だと読まないほうがよさそうだ、というのが、私がこの2つを並べて思ったことです。

私はこう考えています

正直に書くと、私自身、この記事を書くために調べ直すまで「開くのは3つ」だと分けて考えたことがありませんでした。NISA口座と特定口座が並列だということも、頭では分かっていたつもりで、絵にしたことはなかったです。

私が投資を始めたのは2019年です。始めてしばらくして個別株で下げに耐えられず投げ売りしたことがあって、そのときに痛感したのは、事前に迷っていた場所と、実際にきつかった場所がぜんぜん違ったということでした。口座を開くまでに悩んだ時間と、開いたあとに効いてきたことは、まるで別のところにありました。

世間では「証券会社選びが最初の関門」という言われ方をします。比較記事も山ほどあります。ただ、こうして条件を並べてみて私が拍子抜けしたのは、自分がいちばん時間をかけて比べていたところが、まさに「あとから変えられるところ」だったことでした。

いっぽうで、NISA口座をどこに置くかだけは年単位でしか動かせず、その年に買っていれば動かせません。それでも、「一生変えられない」わけではないんですよね。1年待てば変えられます。

そう考えると、私は、どこで開くかという悩みよりも、1,044万という数字のほうが気になります。開くところまでは進んだのに、そこで止まっている。もちろん、生活に必要なお金の準備を優先して意図的に止めている方もいると思います。生活防衛資金が整うまで動かさない、というのは十分に筋の通った判断です。それは「止まっている」のではなく「順番を守っている」だけだと思います。

ただ、もし止まっている理由が「どこがいいのか決めきれないまま時間が経った」であれば、私はそれを少しもったいなく感じます。これは私の受け止め方であって、急いだほうがいいという意味ではありません。順番として先に整理する場所があるとしたら、それは会社の比較ではなく、自分が開こうとしている3つの関係のほうだった——今回調べてみて、私はそう思いました。

📝 まとめ

  • 1️⃣
    「証券口座を開く」とき、実際に開いているのは3つ取引の土台になる口座の上に、課税口座NISA口座並びます(図1)。NISAは特定口座の中にあるのではありません。
  • 2️⃣
    申込フォームで聞かれるのは3つ。源泉徴収ありは「申告しなくてよい」であって「できない」ではありません(損益通算や繰越には申告が必要)。マイナンバーの告知は法令上の義務です。
  • 3️⃣
    会社ごとに差が出るのは手数料・取扱商品・積立の決済手段。「ネット証券は無料」ではなく「条件を満たすと無料」です(図4・2026年8月時点)。銀行や郵便局では上場株式・ETF・REITは買えません。
  • 4️⃣
    取引の土台と課税口座はいくつ作ってもよく、乗り換えもできます。ただし他社へ移すとき、国内株は無料の会社が多い一方で、投資信託は1銘柄3,300円(税込。会社によっては5,500円)をいまの会社に払うのが原則です(2026年8月時点)。移った先が全額負担してくれる常設の仕組みもありますが、いったん立て替えて申請が必要です。
  • 5️⃣
    いっぽうNISA口座は、その年に新しく買えるのがそのうちの1社だけです。置き場所を選び直せる窓は年に1度で、前年10月1日〜その年の9月30日の届出のあいだだけ。しかも、その年にすでに枠で買っていると、その年分は動かせません(売っただけなら変更可)。つみたて枠だけ別会社、はできません。
  • 6️⃣
    NISAでも、株式数比例配分方式でなければ上場株式・ETF・REITの配当だけ20.315%引かれます。投資信託の分配金は手続不要。この方式は全証券会社に一律です。
  • 7️⃣
    NISA口座は約2,821万(2025年12月末)。同じ調査の分布集計28,558,925口座のうち、2025年に1度も買付がなかったのは10,446,488口座(約37%)(図7)。証券口座4,210万は、同じ人が複数の会社に持てる延べ数。個人株主のほうも、銘柄をまたいで名寄せしない延べなら9,198万人ほふりが銘柄横断で名寄せすると1,677万人です。
お金バイバイマンの一言

開くのは、3つ。どこで開くかは、あとからでも変えられました。置き場所をすぐには選び直せないのは、そのうちのひとつ——NISAだけです。比べる前に、自分がいま何を開こうとしているのかを3つに分けて眺めてみる。私にとっては、それが遠回りに見えていちばん短い道でした。

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📚 参考にした一次情報源

以下の一次資料で照合して作成しています。

  • e-Gov 法令検索(租税特別措置法・同施行令、金融商品取引業等に関する内閣府令)
  • 国税庁(タックスアンサー、NISA口座の新規開設又は変更に関する手続等について)
  • 金融庁(NISA特設サイト、NISAを利用する皆さまへ、NISA口座の利用状況調査、つみたて投資枠対象商品届出一覧、金融審議会 市場制度WG・資産運用TF報告書)
  • 財務省(令和8年度の税制改正)
  • 日本証券業協会(NISAに関するQ&A、顧客口座数等の統計、個人株主の動向、配当金等受取方式に関する注意事項)
  • 全国4証券取引所(東京・名古屋・福岡・札幌/株式分布状況調査)、証券保管振替機構(属性別株主数状況)
  • 地方公共団体情報システム機構(マイナンバーカード総合サイト)
  • SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・三菱UFJ eスマート証券の公式ページ

【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融機関・金融商品の利用や購入を推奨するものではありません。また、投資助言および個別の税務相談を行うものでもありません。税務上の取扱いは、お一人おひとりの状況によって異なります。具体的な取扱いについては、所轄の税務署または税理士にご確認ください。掲載した会社名は、条件の違いを示す事実であり、優劣を示すものではありません。制度・数値は2026年8月5日時点で確認できた法令および金融庁・国税庁・財務省・日本証券業協会・各取引所・各社などの公表資料にもとづきますが、制度も各社の条件も変更されることがあります。手数料やサービス内容は改定が頻繁なため、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

「お金バイバイマンの経済ニュース」運営者。

月曜から土曜の毎朝、日経平均・米国株・為替などマーケットの動きを「なぜ動いたのか」まで追いかけて、図解つきでやさしく解説しています。"今日の経済用語"コーナーでは、ニュースに出てくる言葉を1日1語ずつ深掘り中。気づけば用語辞典は70語を超えて、いまも増え続けています。

じつは昔、SNSのキラキラした投資情報に憧れて、情報商材を買ってしまったことがあります。遠回りの末にたどり着いたのが「長期・分散・積立でコツコツ」。相場が荒れた日も、合言葉は「今日も何もしません」です。

朝の意見コラム『今朝の経済、私はこう見る』は、noteで平日の毎朝、連載しています。

好きなものは、お酒・サウナ・食べ歩き。経済ニュースも、それくらい気軽な習慣にしてもらえたら嬉しいです📈

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