🧭 全部株でいいの?【つみたて投資枠には、債券だけの投信が1本もありません】
積立を始めて口座を開いてみたら、持っているのは株の投資信託だけ。これで大丈夫なのかな、と思ったことはないでしょうか。調べると「100から年齢を引いた数字が株の比率」「バランス型なら分散できる」と出てきます。今回はその目安の出どころを探すところから始めました。
探しているうちに、想定していなかったものが出てきました。金融庁が公表しているつみたて投資枠の対象商品を数えると、債券だけの投資信託は1本もありません。うっかり載っていないのではなく、制度がそう決めています。そして「安全資産」と呼ばれてきた国内債券のインデックスファンドは、この4年7か月で約17%減っていました。「守り」のつもりで持つもののはずが、そうなっていません。
📌 本記事の制度・数値は2026年8月14日時点で確認できた法令および公的機関・業界団体の公表資料にもとづいています。個別の金融商品名・金融機関名には触れません。制度も税制も変更されることがあるため、実際の手続きの前にご自身が使っている会社の公式ページでご確認ください。
🔍 「100−年齢」を、誰が言い出したのか探しました
資産の配分の話でいちばんよく見かけるのが、「100から自分の年齢を引いた数字が、株式の比率」という目安です。40歳なら株が60%で、残り40%を債券に。ひとつ数字が決まれば、あとは掛け算で済みます。便利です。
なので今回も、その割合を最初に決めた人がどこかにいるはずだと思って探しにいきました。日本とアメリカの公的機関を順番に当たった結果が、これです。
| 探した資料 | 版・時点 | 年齢で比率を決める記述 |
|---|---|---|
| 米国SEC「Investor.gov」資産配分と分散のページ | 2026年8月確認 | なし。判断の軸は「投資できる期間」と「どこまで値動きに耐えられるか」 |
| 米国FINRA 資産配分のページ | 2026年8月確認 | なし |
| 金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」 | 2023年7月版 | なし。「金融庁が具体的な指数やそうした指数を用いた商品等への投資を推奨するものではありません」と明記 |
| 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」 | 2023年12月 | なし。分散の例は載っているが、推奨ではなく計算例 |
| 金融リテラシー・マップ(現在はJ-FLECが公開) | 2023年6月改訂版 | 比率の数字はなし。ただし「年齢などによって配分の比率は異なる」とは書いてある |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。各資料を2026年8月14日に取得し、本文を通して確認した結果です。「なし」は「今回確認した範囲では見当たらなかった」という意味です。
米国SECのページは、はっきりこう書いています。
「資産配分の決定は、個人的なものです。あなたにとっていちばん合う配分は、人生の時期によって変わります。投資できる期間と、どこまで値動きに耐えられるかによって変わるのです」(SEC・Investor.gov/筆者訳)
軸になっているのは「投資できる期間」と「どこまで値動きに耐えられるか」で、年齢の計算式は出てきません。日本側でいちばん近いのは、金融リテラシー・マップのこの一文でした。
「『資産の分散』には常に正解があるわけではなく、期待する投資効果や年齢などによって、投資対象の配分の比率は異なり、定期的に見直すことが必要であることを理解している」(金融リテラシー・マップ 2023年6月改訂版)
「100−年齢」の出どころは、今回調べた範囲では特定できませんでした。有名な投資家が広めたという説明はいくつも見つかるのですが、その原典にはたどり着けていません。誰が言い出したのかはっきりしない経験則、というのが正直なところです。
公的な出どころが見つからない、という結末はこれで3回目です。生活防衛資金の「3カ月分」も、毎月の積立額の「手取りの◯割」も同じでした。ただ今回は、そこで話が終わりませんでした。比率をどうするか考える前に、制度のほうに先に壁があったからです。
🚫 つみたて投資枠には、債券だけの投信が1本もありませんでした
金融庁が公表しているつみたて投資枠の対象商品リスト(2026年8月10日時点)を、分類ごとに数えるとこうなります。
| 分類 | 国内 | 内外 | 海外 | 計 |
|---|---|---|---|---|
| 株式型の投資信託 | 66本 | 36本 | 95本 | 197本 |
| 資産複合型=バランス型 | 5本 | 147本 | 3本 | 155本 |
| 上場投資信託(ETF) | 3本 | ー | 6本 | 9本 |
| 債券だけの投資信託 (分類そのものがありません) | 0本 | |||
| 合計 | 74本 | 183本 | 104本 | 361本 |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。バランス型は155本で、361本の約4割(42.9%)を占めます。金融庁「つみたて投資枠対象商品」の分類資料および対象資産別リスト(いずれも2026年8月10日時点)から作成。
数え漏れではありません。制度がそう決めています。
つみたて投資枠で使ってよい指数は、内閣府の告示(第540号)の別表で決まっています。1本の指数に連動するタイプで使える指数は「別表第一」の22本で、TOPIX、日経平均、S&P500、MSCI ACWI……と並んでいますが、22本すべてが株価指数です。債券の指数はここに1本もありません。
債券の指数がはじめて登場するのは「別表第二」で、こちらは複数の指数を組み合わせるタイプ、つまりバランス型でだけ使える一覧です。国内債券の指数も、世界の国債の指数も、REITの指数も、全部こちら側に置かれています。
さらに告示は、バランス型が主な投資対象にしてよい組み合わせを4つに限定しています。(i)株式/(ii)株式及び公社債/(iii)株式及び不動産投資法人の投資口等/(iv)株式、公社債及び不動産投資法人の投資口等。4つとも、必ず株式が入っています。
では、指数に連動しないタイプ(いわゆるアクティブ型)ならどうか。こちらには別の条文の要件がかかっていて、そこが2026年4月1日に改正されました。主な投資対象についての条件が「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」へ広げられたのです。金融庁は改正の趣旨を「債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢の充実を図るもの」と説明しています。つまり指数に連動しないタイプでは、債券が主役の投信がすでに解禁されています。ただし、これで「債券だけ」まで届いたわけではありませんでした。
ただし、そのアクティブ型でも投資の対象にしてよい組み合わせは同じ4つで、こちらは改正されていません。やはり4つとも株式を含みます。つまり「債券が主役」までは認められたけれど、「株式をまったく含まない」ものは、いまも対象になりません。
というわけで、つみたて投資枠で債券だけを積み立てる方法は、いまのところありません。「株だけだと不安だから、債券のインデックスファンドも毎月少しずつ買おう」と思っても、その入口は用意されていないのです。債券が主役の投信という新しい入口は開いたばかりで、商品の並びがこれからどう変わるかは、まだ見えていません。
一方、成長投資枠のほうは事情が違います。ここまで見てきた「別表第一」も「4つの型」も、すべてつみたて投資枠の商品に付いている条件で、成長投資枠にはかかりません。実際、資産運用業協会が公表している成長投資枠の対象商品リスト(非上場の投資信託2,322本・2026年8月13日更新)を開くと、ファンド名に「債券」と入っているものだけで168本ありました。「ボンド」「国債」といった名前のものは数えていないので、実際はもっとあります。債券の投資信託そのものは、成長投資枠でなら買えます。
そして、このリストには「つみたて投資枠の対象・非対象」という欄が付いています。名前に「債券」と入っていても中身はさまざまですが、この欄を見ると分かれ方がはっきりします。168本のうち、162本は「非対象」。つみたて投資枠でも対象になっている残り6本は、すべてバランス型でした(「債券重視型」や、株式・REIT・債券をまとめたもの)。告示を読んで分かったことが、そのまま商品リストの側にも出ています。
ただし、どちらの枠でも買えないものがあります。国債や社債そのもの(現物)です。日本証券業協会のQ&Aは「NISAでは、預金や国債、社債は対象となりますか?」という問いに、「つみたて投資枠・成長投資枠ともに対象とはなりません」と答えています。このあと出てくる個人向け国債も、NISAでは買えません。あわせて、MRFやMMF、外貨建MMFのような「公社債投資信託」も対象外です。さきほどの168本が買えるのは、中身が債券でも、法律のうえでは「株式投資信託」に分類されているからです。
⚠️ ここで挙げた制度の内容は2026年8月時点の告示と、同じ月の対象商品リストで確認したものです。条文の番号も中身も、改正のたびに動きます。数年後にこの記事を読んでいる方は、金融庁と資産運用業協会の最新の一覧でご確認ください。
📉 「安全資産」が、4年7か月で約17%減っていました
では、そうやって手に入れた債券は、本当に守りになるのか。いま実際に起きていることが、答えを先に出していました。
国内の債券に投資するインデックスファンドの基準価額は、2021年12月30日の10,158円から、2026年8月13日には8,443円になりました。−16.88%です。運用会社の違うもう1本でも−16.83%で、ほぼ同じでした。
| 年 | A社のファンド | B社のファンド |
|---|---|---|
| 2020年 | −0.88% | −0.96% |
| 2021年 | −0.25% | −0.28% |
| 2022年 | −5.34% | −5.35% |
| 2023年 | +0.45% | +0.41% |
| 2024年 | −3.07% | −3.12% |
| 2025年 | −6.15% | −6.04% |
| 2026年(8月13日まで) | −3.90% | −3.87% |
| 2021年末からの通算 | −16.88% | −16.83% |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。各年の年末最終営業日の基準価額どうしを比べた数字です(2023年のみ12月29日。いずれも分配実績なし)。指数そのものの騰落率ではなく、その指数に連動するインデックスファンドの基準価額から当社が計算しました。運用会社名・商品名は記載していません。
これは日本の公的年金でも同じです。年金積立金を運用しているGPIFの国内債券は、2021年度から2025年度まで5年連続でマイナスでした。2025年度は−5.11%で、公表されている年度の中でいちばん大きな下げです。
※ GPIFの「国内債券」には、2020年度以降、為替ヘッジを付けた外国債券も含まれています(GPIF公表資料の注記による)。日本国債だけの成績ではありません。
国内債券のインデックスファンドが下がっている理由は、はっきりしています。金利が上がったからです。
日銀は2026年6月16日の会合で政策金利を1.0%程度に引き上げ、7月31日の会合でもその水準を維持しました。10年国債の利回りは2026年8月13日時点で2.873%です。財務省が公表している金利の記録をさかのぼると、これ以上の水準を最後に付けたのは1996年11月12日(2.881%)でした。約29年9か月前になります。
※ ここでの利回りは財務省「国債金利情報」(流通市場の実勢価格から算出した半年複利ベースの数字)です。報道でよく使われる「新発10年国債利回り」とは日々わずかに差があるため、「何年ぶりの水準か」も、どちらの数字で見るかによって変わります。
金利が上がると、なぜ持っている債券の値段が下がるのか。あとから、もっと高い利息のついた債券が発行されます。すると、前に出た低い利息の債券は、そのままの値段では誰も買ってくれません。だから値段が下がります。日本証券業協会は、これを「金利が上昇する過程では公社債価格は下落(利回りは上昇)し、逆に金利低下の過程では公社債価格は上昇(利回りは低下)する」と説明しています。
「債券は安全」という感覚のほうが、金利がほとんど動かなかった時代に作られたものなのだと思います。いまは前提が変わっているところです。
🏦 同じ「債券」でも、元本の値段が動かないものがあります
ここまで読むと「債券は危ないのか」と思われるかもしれませんが、話はもう一段あります。同じ「債券」という名前で、元本の値段が動かないものがあるからです。個人向け国債です。
財務省は自分のサイトで、こう書いています。
「元本割れなし 満期時の元本のお返しも、半年毎の利子の支払いも、国が責任を持って行います。また、経済情勢などにより実勢金利が変動しても、元本部分の価格は変動しないので、安心です。」(財務省・個人向け国債のページ)
面白いのは、同じ財務省の同じページの中で、市場で売買される国債とはっきり対比されていることです。
| 種類 | 途中でやめるとき(財務省の説明・原文) |
|---|---|
| 個人向け国債 | 「発行後1年経過すればいつでも国の買取による中途換金が可能です(元本割れのリスクなし)」 ※中途換金時に、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます |
| 新窓販国債 (市場で売買される国債) | 「市場でいつでも売却が可能です。ただし、その時々の市場価格となるため、売却損、売却益が発生します(元本割れのリスクあり)」 |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」(令和8年8月5日現在)より引用。
同じページで募集されている新窓販国債の10年もの(第383回債・8月)は、募集価格が99円32銭でした(額面100円につき)。表面利率は2.7%、応募者利回りは2.788%です。利率が市場の実勢より少し低いぶんを、値段を下げて調整しているわけです。つまりこちらは、買う時点からもう値段のほうが動いている債券です。売るときも、そのときの市場価格になります。
ただし、個人向け国債にも条件があります。中途換金できるのは発行から1年たってからで、そのとき直前2回分の利子(税引前)に0.79685を掛けた額が差し引かれます。元本は減りませんが、直前1年分の利子は返すことになる、という感覚です。「1円も減らずに全額戻ってくる」ではありません。
いまの利率は、こうなっています。
| 置き場所 | 年利 | 時点 |
|---|---|---|
| 個人向け国債 固定5年(1万円から) | 2.06% | 9月15日発行分 |
| 個人向け国債 変動10年 | 1.87% | 9月15日発行分 |
| 個人向け国債 固定3年 | 1.71% | 9月15日発行分 |
| 定期預金(1年・1千万円以上) | 0.384% | 2026年7月 |
| 普通預金 | 0.255% | 2026年7月 |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。個人向け国債は2026年9月15日発行分(募集期間 2026年8月6日〜31日)の表面利率(税引前)。募集ごとに毎月変わります。預金は日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」の2026年7月の数字で、金融機関ごとの金利ではありません。
この表で目を引くのは、いま募集中のぶんでは、変動10年(1.87%)より固定5年(2.06%)のほうが利率が高いという逆転です。変動10年の利率は「基準金利×0.66」という式で決まるので、こういうことが起きます。ただしこの2つは、同じ性格の数字ではありません。固定5年の2.06%は5年間そのままですが、変動10年の1.87%は最初の半年分で、そのあとは半年ごとに見直されます。金利が上がっていけば追いかけますし、下がれば下がります。いまの数字だけを並べて期間の長短を比べても、あまり意味がありません。
なお、この動きは実際の金額にも出ています。個人向け国債の発行額は、2022年度の3兆4,184億円から2025年度は6兆1,526億円へ。2026年度は4月〜8月発行分の5か月だけで4兆661億円と、前年の同じ時期(2兆4,457億円)から66%増えました。金利が上がってきたことに、すでに多くの人が反応しているようです。
🔀 「株と債券は逆に動く」は、どの債券かで真逆になります
「株が下がったときに債券が上がるから、混ぜると全体の振れ幅が小さくなる」。これはよく聞く説明です。理屈としてはよく分かります。ただ、数字を並べるとそこまで単純ではありませんでした。
GPIFが運用の基本方針を作るときに使った、資産どうしの連動の強さ(相関係数)が公表されています。プラスなら同じ方向に、マイナスなら逆方向に動きやすいという数字です。
| 組み合わせ | 相関係数 | 向き |
|---|---|---|
| 国内債券 × 国内株式 | −0.254 | 弱く逆方向 |
| 国内債券 × 外国株式 | −0.125 | ごく弱く逆方向 |
| 外国債券 × 国内株式 | +0.271 | 弱く同じ方向 |
| 外国債券 × 外国株式 | +0.560 | はっきり同じ方向 |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。GPIF「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて ~詳細~」(2025年3月31日)より。1に近いほど同じ方向、−1に近いほど逆方向に動いたことを示します。
逆に動きやすいのは国内の債券と株のほうで、それも「弱く」です。外国の債券と外国の株は、むしろはっきり同じ方向に動いています(+0.560)。「株と債券は逆に動く」を一言で言い切ると、半分は逆のことを言ってしまいます。
実際の場面で見ると、もっとはっきりします。
| 持っていたもの | 2024年8月 の急落 | 2022年 (1年) | 2021年末 からの通算 |
|---|---|---|---|
| 国内株式(TOPIX連動) | −20.28% | −2.67% | +132.42% |
| 全世界株式 | −7.03% | −5.58% | +128.61% |
| 国内債券 | +2.30% | −5.34% | −16.88% |
| 先進国債券 為替ヘッジなし | −2.79% | −4.93% | +30.39% |
| 先進国債券 為替ヘッジあり | +1.37% | −16.51% | −21.37% |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。2024年8月=7月31日から8月5日まで。2022年=2021年12月30日から2022年12月30日まで。通算=2021年12月30日から2026年8月13日まで。いずれも基準価額から当社が計算(分配実績なし)。為替ヘッジありは1社のファンドで確認した数字です。
1つ目の場面、2024年8月の急落は、教科書どおりでした。国内株がわずか3営業日で20%下げたとき、国内債券は+2.30%。クッションになっています。ところが同じ日、為替ヘッジのない先進国債券は−2.79%で、いっしょに下がっていました。円高になった局面だったからです。同じ「債券」の名前で、プラスとマイナスに分かれました。
2つ目、2022年は全部マイナスでした。株も債券も、です。しかも為替ヘッジのある先進国債券は−16.51%で、株より大きく下げています。この年に「株半分・債券半分」で持っていた人は、組み合わせによっては株だけで持つより悪い結果になりました。混ぜれば必ず和らぐ、ではありません。
3つ目が、いちばん驚いた数字です。2021年末からの4年7か月で、同じ「先進国債券」という名前の商品が、片方は+30.39%、もう片方は−21.37%。50ポイント以上ひらきました。分けているのは中身の債券ではなく、為替の影響を受ける形にしてあるかどうかです。この間、1ドルは115.12円(2021年12月末)から160.21円(2026年7月末)へ動いています。
⚠️ 為替ヘッジの仕組み自体(何をして、どこに費用がかかるのか)は、それだけで1本ぶんの話になるので、ここでは結果だけにとどめます。覚えておきたいのは、投資信託の名前に「(為替ヘッジあり)」「(為替ヘッジなし)」と付いていたら、それは別物だということです。
ちなみに2022年は、アメリカでもS&P500が−18.11%、米国の総合的な債券指数が−13.07%と、両方下がった年として有名です。ただしこれはドルで見た世界の数字で、日本で買っていた人の実感は上の表のほうになります。海外の記事で見た数字を、そのまま自分の成績だと思わないほうがいいところです。
ここまでで、「債券」と呼ばれていたものが3つに分かれました。元本の値段が動かないもの(個人向け国債)、金利で動くもの(国内債券の投資信託)、金利と為替の両方で動くもの(外国債券の投資信託)。名前は同じですが、値段が動く理由が全部違います。
🧩 バランス型は「比率を自分で決めない」という選択です
つみたて投資枠で債券に触れる、いちばん大きな入口がバランス型でした。では、それはどういうものなのか。業界団体である資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会と日本投資顧問業協会が統合して発足)は、「ひとつの資産に偏ることなく、株式・債券などの異なる種類の資産を組み合わせた投資信託」と説明しています。
言い方を変えると、比率を自分で決めない、という選択です。何をどれだけ入れるかは、商品ごとに約款で最初から決まっています。なお、つみたて投資枠のバランス型155本のうち、指数に連動させるタイプ(インデックス型)は142本で、以下の数字はその142本のものです。そのうえで、知っておいたほうがいい点が3つありました。
- 🏷️「8資産均等型」のような呼び方に、公的な定義はありません。金融庁が公表しているのは「いくつの指数を組み合わせているか」までです。複数の指数を組み合わせるタイプ142本のうち、8つの指数を組み合わせたものが37本、9つが31本、4つが30本、といった数え方です。「均等」かどうかまでは公表されていません。中身の比率は、その商品の資料で確かめる必要があります。
- 🔁比率の調整は、全部が自動というわけではありません。業界団体の説明も「ファンドによってはファンドマネージャーがファンド内でリバランスを行ってくれます」という書き方です。告示も、比率を変える場合はその条件を約款に定めるよう求めています。つまり比率を固定するものと、動かすものの両方が制度上あります。
- 💱ほとんどが海外を含みます。複数の指数を組み合わせるタイプのバランス型142本のうち、国内の指数だけで作られているのは4本だけで、残り138本は海外の指数を含みます。ということは、為替の影響をほぼ必ず受けます。為替のところで見たとおり、そこは結果を大きく分ける部分です。
冒頭に挙げたもうひとつの目安、「バランス型なら分散できる」のほうの答えも、この3点で出ました。分散はされます。ただし、何と何に分けられているのかは商品ごとに違い、そのほとんどが海外の指数を含む=為替の影響を受ける形になっています。
費用の上限も、告示で決まっています。つみたて投資枠の指定インデックス投信の信託報酬の上限は国内型0.5%・海外型0.75%です(金融庁の資料では、いずれも税抜きの数字として示されています)。ここで注意したいのは、「海外型」かどうかは資産の中身ではなく、組み込んだ指数に海外のものが1本でもあるかで決まることです。だからバランス型のほとんどは、上限0.75%が適用される区分に入ります。
ただし上限は上限で、実際の水準はずっと低いところにあります。その金融庁の資料(2026年8月10日時点・いずれも税抜き)では、投資先を国内とする指定インデックス投信の平均が0.27%、内外・海外とするもので0.34%でした。
そして、これは書いておきたいところです。「バランス型は初心者向け」と勧めている公的機関の資料は、今回見つけられませんでした。金融庁のガイドブックには、そもそも「金融庁が具体的な指数やそうした指数を用いた商品等への投資を推奨するものではありません」と書いてあります。特定の商品を勧める立場ではない、ということです。一方、バランス型を「比較的リスクが抑えられているのが特徴です」と肯定的に説明しているのは、運用会社が集まった業界団体のほうでした。
どちらが正しいという話ではありません。業界団体の説明が間違っているわけでもありません。ただ誰が言っているかは、分けて読んだほうがいいと思います。私はそこを分けて読むようになってから、記事の書き方も少し変わりました。
🙋 私の場合
私も債券を少し持っています。外貨建ての債券です。何かのついでに買って残っているものではなく、「守り」のつもりで、意図して買いました。
ただ、この記事を書きながら振り返ってみると、私が言っていた「守り」は、ここまで見てきた「値動きが小さいこと」ではありませんでした。私が欲しかったのは、受け取れる額と時期が先に決まっている、という一点です。株のように、いくらになるか分からないまま持つのとは違う感触がある。それだけでした。円に直した評価額は為替で動きますが、そこは買うときから分かっていたことなので、いまも特に気にしていません。
つまり「守り」という一語に、少なくとも2つの意味が入っていることになります。値動きが小さいことと、予定が立つこと。この2つはよく混ざります。そして混ざったまま選ぶと、値動きの小ささが欲しかったはずの人が、為替で大きく動くものを持つことになります。私が持っているのも、まさにその「為替で大きく動くもの」です。たまたま私が求めていたのが値動きの小ささではなかった、というだけです。逆だったら、私も同じ場所に立っていたと思います。図解⑦で、50ポイントひらいたところです。
世の中でよく説明されるのは「株が下がったときのクッションとして債券を」という使い方だと思いますし、その理屈は分かります。データを見ても、2024年8月のような場面では、国内の債券にその働きが確かにありました。ただ私自身は、その使い方をしていません。だから、私の持ち方をそのまま真似したほうがいい、とは書けません。必要な「守り」は人によって違うと思うからです。
正直に言うと、この記事を書くまで、「守り」という言葉を2つに分けて考えたことがありませんでした。値動きが小さいほうなのか、予定が立つほうなのか。並べてみて、自分が選んでいたのはどちらだったのかを、はじめて言葉にできました。それだけのことですが、次に何かを買うときの見え方は少し変わりそうです。
📝 まとめ
最後にもうひとつ、意外だった数字があります。
| どこの数字か | 元本が確保されて いるもの | 債券 | バランス型 |
|---|---|---|---|
| 日本の家計ぜんぶ 2025年3月末・日銀 | 51.0%(現金・預金) | 1.4% | ー |
| 企業型の確定拠出年金 2025年3月末・資産額ベース | 30.3%(預貯金・保険) | 7.2%(国内3.2+外国4.0) | 20.9% |
| iDeCo 2025年3月末・資産額ベース | 23.1%(預貯金・保険) | 4.9%(国内1.7+外国3.2) | 16.2% |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。家計の数字は日本銀行「資金循環の日米欧比較」(2025年8月29日公表・2025年3月末時点)の「債務証券」の割合。確定拠出年金は運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2025年3月末)」で、分母は加入者数ではなく資産の金額です。家計の表にバランス型の欄がないのは、この統計が投資信託を中身で分けていないためです。
日本の家計が直接持っている債券は、金融資産全体の1.4%しかありません。年金の制度の中でも、債券型は企業型で7.2%、iDeCoで4.9%です。債券は、そもそもあまり持たれていないのがいまの日本です。守りをどこで持つかという話をするとき、多くの人にとっての実際の置き場所は、預金や元本確保型の保険という形のほうなのだと思います。「株か債券か」という問いの立て方自体が、日本の実態からは少し離れているのかもしれません。
- 🔍「100−年齢」の出どころは、今回調べた範囲では特定できませんでした。日米の公的機関を順に当たっても、年齢で比率を出す計算式は見当たりませんでした。あるのは「投資できる期間と、どこまで値動きに耐えられるかで決まる」「常に正解があるわけではない」まででした。
- 🚫つみたて投資枠には、債券だけの投資信託が1本もありません。対象361本のうち197本が株式型、155本がバランス型、9本がETF。使ってよい単独の指数22本はすべて株価指数で、告示が定める4つの型はどれも必ず株式を含みます。つみたて投資枠で債券だけを積み立てる方法は、いまのところありません(成長投資枠なら、債券の投資信託そのものも買えます)。なお2026年4月の改正で、指数に連動しないタイプでも「債券が主役」が認められるようになりました。ただし株式をまったく含まないものは、いまも対象外です。
- 📉「安全資産」も減ります。国内債券のインデックスファンドは2021年末から−16.88%。GPIFの国内債券も5年連続マイナスです。金利が上がると持っている債券の値段は下がり、いま日本の10年国債利回りは1996年11月以来の水準にあります。
- 🏦ただし、元本の値段が動かない債券もあります。個人向け国債について財務省は「元本部分の価格は変動しないので、安心です」と書いています。1年たてば国が買い取ってくれますが、直前1年分の利子は返す形になります。NISAでは買えません。
- 🔀「株と債券は逆に動く」は、どの債券かで真逆になります。逆に動きやすいのはGPIFの区分でいう国内債券と国内株式(−0.254)で、外国債券と外国株式はむしろ同じ方向(+0.560)。同じ「先進国債券」という名前の投資信託どうしでも、この4年7か月で+30.39%と−21.37%に割れました。
- 🧭「守り」という言葉には、2つの意味が混ざっています。値動きが小さいことと、予定が立つこと。この2つは、同じ「債券」の中でも担当が違いました。値動きの小ささを最初から約束しているのは元本の価格が動かないほうで、予定の立ちやすさは、受け取る時期と形が先に決まっているところから来ます。債券の投資信託は、そのどちらも約束していません。自分がどちらを欲しかったのかを先に決めておかないと、名前だけで選ぶことになります。
「全部株でいいの?」の答えは、結局、商品の名前の中にはありませんでした。「債券」という一語に、元本の値段が動かないもの、金利で動くもの、金利と為替の両方で動くものが同居していて、同じ期間の結果が50ポイント以上ひらいてしまうからです。名前で選ぶと、何を持ったのか自分でも分からなくなります。
代わりに手がかりになりそうなのは、そのお金をいつ使うかのほうだと思いました。来年使うかもしれないお金と、20年後まで触らないお金では、同じ「守り」でも欲しいものが違います。前者に必要なのは値動きの小ささで、それは今回見たとおり、債券の投資信託が引き受けてくれるとは限りませんでした。後者なら、そもそも守る必要があるのかどうかから変わってきます。比率を先に決めようとすると、この違いが消えてしまいます。
書き終えてから気づいたのですが、同じことが、最初に見たSECのページに先に書いてありました。「あなたに合う配分は、投資できる期間と、どこまで値動きに耐えられるかによって変わる」。先に決まるのは比率ではなく、その2つのほうだ、という順番です。期間、というのはつまり、そのお金をいつ使うかということだったのだと思います。年齢の計算式が見つからなかったのは、そもそも探すものが違っていたからなのかもしれません。
今回いちばん手が止まったのは、同じ「先進国債券」という名前の商品が、同じ4年7か月で+30%と−21%に割れていたところでした。中身の債券が違うのではなく、為替の影響を受ける形にしてあるかどうかだけの差です。名前は、思っているほど中身を説明してくれない。「安全」「守り」「バランス」といった、いかにも安心しそうな言葉ほどそうでした。調べる前の私は、債券をひとかたまりで見ていたと思います。株か債券か、で迷っていたつもりが、そもそも「債券」という一語を自分が何のことだと思っていたのか、そこから怪しかった。比率をどうするか、という話にたどり着く前で、ずっと足踏みしていました。
・オルカンとS&P500どっちがいい?(株の中での分散の話)
・生活防衛資金はいくら必要?(投資に回さないお金の決め方)
・投資信託の手数料、結局いくら引かれてる?(持っている間ずっとかかる費用)
・日経平均とTOPIX、何が違う?(指数の中身を見にいく話)
・リバランスとは?(崩れた比率を戻す考え方)
・長期金利とは?(債券の値段を動かしているもの)
以下の一次資料で照合して作成しています(すべて2026年8月14日に取得)。
- 内閣府告示第540号(つみたて投資枠の対象商品の要件・別表第一および別表第二)、同告示の一部改正(2026年3月31日公布・2026年4月1日適用)およびその新旧対照表
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品」の分類資料および対象資産別リスト(2026年8月10日時点)、「令和8年度税制改正について」(2025年12月)、「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(2023年7月版)、「基礎から学べる金融ガイド」(2023年12月)
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)公開「金融リテラシー・マップ」(2023年6月改訂版)
- 財務省「個人向け国債」各ページ、「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」(令和8年8月5日現在)、中途換金に関するQ&A、「個人向け国債発行額の推移」(2026年8月5日更新)、「国債金利情報」(日次CSV・全期間)
- 日本銀行「金融政策決定会合における主な意見・当面の金融政策運営について」(2026年6月16日・7月31日)、「資金循環の日米欧比較」(2025年8月29日公表)、「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」(2026年7月)、「外国為替相場(東京インターバンク相場)月次」、「教えて!にちぎん」国債金利
- GPIF「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて ~詳細~」(2025年3月31日)、2025年度業務概況書、公表資料「収益率」、用語集
- 日本証券業協会「公社債の売買取引について」「個人向け社債の特徴やリスク」「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月)
- 資産運用業協会(旧・投資信託協会)「成長投資枠の対象商品リスト(非上場投資信託)」(2026年8月13日更新)、「投資信託の基礎知識」、「契約型公募投資信託の資産増減状況」(2026年6月末)、投信総合検索ライブラリーの基準価額データ
- 運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料」(2025年3月末)
- 米国SEC「Investor.gov」資産配分と分散のページ、FINRA 資産配分のページ、米国証券取引委員会に提出された投資信託の年次報告書(2022年12月期)
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や、特定の資産配分・投資手法を推奨するものではありません。また、投資助言を行うものでもありません。記事中の運用実績は公表されている基準価額から当社が計算した過去の数字であり、手数料・税金は考慮していません。将来の運用成果を示すものでも、保証するものでもありません。個人向け国債の利率は募集ごとに変わり、預金金利も金融機関ごとに異なります。制度・数値は2026年8月14日時点で確認できた法令および公表資料にもとづきますが、税制も商品の内容も変更されることがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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