毎月いくら積み立てればいい?【世の中は「いくら」ではなく「やるか、やらないか」で割れていました】

毎月の積立額の決め方を初心者向けに解説した記事のアイキャッチ画像。収入の何割を投資に回すかという公的な基準は見つからず、つみたて投資枠は口座の半分が年間0円だったという金融庁の統計をもとに、生活防衛資金という下の線と制度の上限という上の線のあいだで金額を決める考え方を図解している
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💰 毎月いくら積み立てればいい?【世の中は「いくら」ではなく「やるか、やらないか」で割れていました】

投資の話でいちばん最初に出てくる質問だと思います。調べると「手取りの10〜20%」「余剰資金で」と出てきます。今回はその「◯割」に公的な裏づけがあるのかを、金融庁の教材と法令データベースまで戻って探すところから始めました。

結論から書くと、探していた「正解の割合」は見つかりませんでした。そのあと統計を見にいって、もっと意外なことが分かりました。世の中は「いくら積み立てるか」で分かれているのではなく、「積み立てているか、いないか」で割れていたんです。

🔍 公的な「◯割」は見つからず 📊 半分はつみたて枠で0円 📐 つみたて枠の「月10万」は法律ではない 🔁 何度でも変えられる 🧮 ツールで約21万円ちがう

📌 本記事の制度・数値は2026年8月13日時点で確認できた法令および公的機関・業界団体・各社の公表資料にもとづいています。個別の金融商品には触れません。証券会社の締切日や設定できる金額は変更されることがあるため、実際の手続きの前にご自身が使っている会社の公式ページでご確認ください。

🔍 まず、「収入の◯割」の出どころを探しました

「毎月いくら積み立てればいいですか」と聞かれたとき、いちばん答えやすいのは割合で返すことです。手取りの1割、2割。数字がひとつ決まれば、あとは掛け算するだけで済みます。

なので今回は、その割合を最初に決めた人がどこかにいるはずだと思って探しました。国が出している教材から、法令データベースまで。結果は、こうです。

📊 図解① 探した場所と、そこに書いてあった言葉
探した資料版・時点収入に対する割合の記述
金融庁「基礎から学べる金融ガイド」2023年12月改訂なし(「余裕資金で」とだけ)
金融庁「高校生のための金融リテラシー講座」指導教材2024年5月時点なし
金融庁 NISA特設サイト「投資の基本」2026年8月13日なし
J-FLEC「金融リテラシー・マップ」2023年6月改訂版なし(「一定額を天引き」)
e-Gov法令検索「余裕資金」2026年8月13日4件(すべて公的な基金の運用規定)
e-Gov法令検索「余剰資金」「生活防衛資金」2026年8月13日0件

※ 表は横にスワイプできます(スマートフォンでは縦に並びます)。
※ 「探した範囲で見つからなかった」という結果であって、どこにも存在しないと確認したものではありません。

いちばん近かったのは、金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」にあるこの一文でした。

「投資する資金は、生活資金とは別の余裕資金で行いましょう。」

読んだときに、また同じところで止まったな、と思いました。そのとおりなのですが、いちばん知りたいところが空欄なんです。「余裕資金」がいくらなのかは、この先に書かれていません。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「金融リテラシー・マップ」も見ました。若い社会人に期待される状態として「収入のうち、一定額を天引きにするなどの方法により、貯蓄を始めている」とあります。ここも「一定額」であって「一定割合」ではありません

それなら法律のほうはどうか。e-Gov(国の法令データベース)で全法令を検索すると、「余裕資金」は4件ヒットしますが、中身はすべて公的な基金がお金をどう運用するかを定めた規則でした。家計の話ではありません。「余剰資金」と「生活防衛資金」(いざというときのために手元に置いておく現金のこと)にいたっては、1件も出てきません

⚠️ 「知るぽると」を出典に使っている記事を見かけたら、日付を確認してください。知るぽると(金融広報中央委員会)の事業は2024年8月にJ-FLECへ移管され、サイト自体がアーカイブになっています(トップページに「本サイトはアーカイブサイトです」と表示されています)。よく引用される家計の目安の記述は、ここに残っているものであることがあります。

この記事はここから始まります。「投資は余裕資金で」とは言われているのに、その余裕資金がいくらなのかは、誰も決めていない。いちばん肝心なところが、意図的にか結果的にか、空欄のまま残されています。

📊 世の中は「いくら」ではなく「やるか、やらないか」で割れていました

基準がないなら、実態を見ればいい。実際にみんなはいくら積み立てているのか。これは金融庁が数字を公表しています。NISA口座の利用状況調査です。

つみたて投資枠について、2025年の1年間にいくら買ったかの分布表がそのまま載っていました。

📊 図解② つみたて投資枠を、2025年の1年間でいくら使ったか
2025年の買付額割合口座数
0円51.2%14,592,033
0円超〜20万円18.0%5,137,708
20万円超〜40万円12.3%3,513,567
40万円超〜60万円5.9%1,673,396
60万円超〜80万円2.1%609,105
80万円超〜100万円1.7%491,418
100万円超〜120万円8.7%2,477,110

※ 表は横にスワイプできます(スマートフォンでは縦に並びます)。
※ 金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2025年12月末時点・2026年7月3日公表)より。割合は表の合計28,494,337口座に対するもので、当社が計算しました。
※ この表はつみたて投資枠だけの数字です。成長投資枠で買っている口座も、つみたて投資枠での買付がなければ「0円」に入ります。月額への換算は、当社が年額を12で割った目安です(年の途中から始めた口座も含まれます)。
※ 金融庁の注記により、この表には2025年12月31日時点で廃止されている口座の取引も含まれます。そのため合計は、同じ資料のNISA口座数(28,206,434口座)とは一致しません。

最初に目に入るのはいちばん上の行です。NISA口座の半分以上(51.2%)が、つみたて投資枠では2025年に1円も買っていません。枠はあるけれど、使われていない。このうち、成長投資枠でも1円も買っていない——つまりどちらの枠でも買付がなかった口座が1,044万あります。NISA口座全体の3分の1を超える数です。

そして、買った人のほうを見ると、もっと不思議な形をしています。いちばん多いのは20万円以下(18.0%)。12で割ると、多くても月1.7万円くらいまでの範囲です。そこから金額が上がるほど数は減っていくのに——いちばん上の100万円超〜120万円だけが8.7%と跳ね上がります。同じように12で割ると、月8.3万円から10万円。年120万円はつみたて投資枠の上限なので、ほぼ上限いっぱいまで使っている人たちです。

真ん中の40万円〜100万円あたりは、合わせても1割に届きません。山がふたつあって、真ん中がへこんでいる形です。

別の調査でも同じ形が出ます。J-FLECが2025年に行った「家計の金融行動に関する世論調査」では、金融資産を持っている二人以上の世帯のうち、その年に手取り収入から金融資産へお金を回した世帯は38.4%残りの61.6%は、回した分がゼロでした。しかも回した世帯だけを見ると、いちばん多い答えは「35%以上」で、約4割を占めます(金融資産を持つ世帯全体でみると15.2%)。

⚠️ この調査の数字は、扱いに2つ注意が要ります。ひとつは、公表されている「平均35%」は”回した世帯だけ”の平均だということ(ゼロの世帯は平均に含まれていません)。「日本人は平均して手取りの35%を貯めている」と読むと、まったくの誤りになります。もうひとつは、ここでいう「金融資産」には預貯金が含まれること。投資に回した割合の数字ではありません。
なお、この調査は2024年から設問の文言が変わっています(「貯蓄割合」→「金融資産に振り分けた割合」)。2023年以前の数字と並べて増えた減ったと語ることはできません。

では、投資にはいくら回っているのか。総務省の家計調査(2025年平均・二人以上の勤労者世帯)を開くと、桁がひとつ変わります

📊 図解③ ひと月の家計と、そのお金の行き先(二人以上の勤労者世帯・2025年平均)
項目月平均
可処分所得(手取り)532,408円
 消費支出(使ったお金)346,297円
 黒字(残ったお金)186,111円
同じ月に、金融資産へ回った主なもの
預貯金の純増177,061円
保険の純増12,751円
有価証券の純購入5,059円

※ 表は横にスワイプできます。
※ 総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」(2026年2月6日公表)より。
※ 「有価証券の純購入」とは、有価証券(株式、債券など)を買った額から売った額を差し引いた金額です。「毎月5,059円しか投資していない」という意味ではなく、差し引きで5,059円ぶん増えているという意味です。
※ 投資をしていない世帯も含めた平均です。
※ 黒字の内訳には上の3つ以外の項目(住宅ローンの返済など)も入り、逆にマイナスに働く項目もあります。そのためこの3つを足した額(194,871円)は黒字(186,111円)と一致せず、少し上回ります。ここで見ているのは黒字の配分比ではなく、預貯金と有価証券の桁の違いです。

手取り53万円のうち、預貯金には17.7万円が積み上がっているのに、有価証券は差し引き5,059円。可処分所得に対しておよそ1%です(金額から当社が計算しました)。世の中で言われる「手取りの1〜2割を投資に」という話と、平均的な家計で有価証券が差し引きどれだけ増えているか。この2つのあいだには、それくらいの開きがあります。

3つの統計を並べて分かったのは、こういうことでした。世の中は「いくら積み立てるか」で分かれているのではありません。「やっているか、やっていないか」で割れている。そして、やっている人の中も、ほどほどの人と上限いっぱいの人に分かれていて、真ん中が薄い。

つまり「みんなはいくら?」の平均を出しても、その真ん中あたりは人がまばらだということです。参考にできる”みんなの平均”が、そもそも当てになりません。外に答えを探すのは、ここでやめたほうがよさそうです。

📊 図解④ 外に答えがないなら、決めるのは自分の側。上と下の線と、その間の額
⬆️ 上の境界=制度の上限
つみたて投資枠 年120万円/成長投資枠 年240万円/合わせて年360万円。これは天井であって、目標ではありません。
↕️ この間で決める=なかったことにできる額
毎月の家計から抜いても、暮らしが回る額。暮らしが変われば、ちょうどいい額も変わります。一度決めて終わりにする数字ではありません。
⬇️ 下の境界=生活防衛資金
ここから下は投資に回さない、と決めておくお金。割合ではなく、自分の毎月の支出から金額で引く線です。

🧱 下の境界=ここから下は投資に回さない、という線

先に下から決めます。理由は単純で、下の線が決まっていないと、その上にいくら積むかを考えても意味がないからです。手元の現金が足りなくなれば、いちばん困るタイミングで積み立てたものを売ることになります。

この下の線については、生活防衛資金の記事で一度きちんと書きました。そこで分かったのも、実は今回とまったく同じことでした。よく言われる「生活費の3カ月〜1年分」にも、現行の公的な出典が見つからなかったのです。

なのであの記事では、月数を当てにいくのをやめて、公的な制度の空白から逆算する形にしました。会社員は失業給付や傷病手当金でかなり守られている。ただし振込までに時間がかかる・給付額に上限がある・体調を崩した場合は失業給付が出ないという3つの空白がある。その空白を、自分の毎月の支出から埋める。なお、この2つの給付は雇用保険と健康保険の仕組みです。自営業やフリーランスの方は原則として雇用保険に加入しないため失業給付はありませんし、国民健康保険の傷病手当金は「任意給付」(実施するかどうかを保険者が決められる給付)とされています。同じ「空白を埋める」でも、埋める幅は働き方で変わります

ここで言いたいのは1点だけです。下の線は「割合」では引けません。家賃も、家族の人数も、勤め先の制度も、人によって違うからです。金額で引くしかない。そして金額で引いた時点で、「手取りの何割」という問いは、もう自分には関係のない問いになっています。

📐 上の境界=制度の上限は、どこにあるのか

次は上です。NISAで1年に入れられる金額は、こうなっています。

📊 図解⑤ NISAの枠(2026年8月13日時点)
1年の上限一生の上限
つみたて投資枠120万円合わせて
1,800万円
成長投資枠240万円
合計360万円1,800万円

※ 表は横にスワイプできます。
※ 一生の上限1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。
※ 根拠は租税特別措置法37条の14第5項第6号(2026年8月時点)。1,800万円 ÷ 360万円 = 5年という計算は成り立ちますが、これは当社が割り算したものです(金融庁が「最短5年」と書いているわけではありません)。

ここで、よく見かける説明をひとつ確かめておきます。「つみたて投資枠は月10万円が上限」という書き方です。

条文を読みにいきました。租税特別措置法37条の14第5項第6号イは、その口座に枠が設けられた日から、その年の12月31日までの期間に受け入れた金額の合計が120万円を超えないこと、という書き方をしています。判定しているのは1年という単位です。月の区切りは、条文に一度も出てきません。施行令のほうも全文を確認しましたが、「毎月」も「十万円」も出てきませんでした。(条文の号の番号は2026年8月時点のものです。)

では「月10万円」はどこから来ているのか。120万円 ÷ 12 の答えが、証券会社の「毎月コース」の入力欄の上限になっているからです。実際、ある会社の取引ルールを読むと「毎日コース」も用意されていて、そちらは1日あたり4,800円という刻み方でした。4,800円×250営業日で、だいたい120万円になります。刻み方は、法律ではなく会社の設計の話なんです。

ボーナス月の設定を使えば、特定の月だけ10万円を超えて買うこともできます。たとえば毎月5万円で設定していれば、1年ぶんで60万円。残りの60万円をボーナス月に振り分けられる、という考え方です。

⚠️ ただし、ここには2つ条件があります。ひとつは、クレジットカード決済の積立にはボーナス月の設定を付けられないこと(今回確認した5社のうち、クレカ積立でボーナス設定の可否を明記していた3社は、いずれも「不可」でした)。もうひとつは、「年に1回、まとめて120万円」はできないことです。つみたて投資枠に入れられるのは、一定額のものを定期的に継続して買い付ける契約で買ったものだけと法律で決まっていて、日本証券業協会のQ&Aは「2か月に1回」「3か月に1回」までは認めつつ、年に1回とすることは認められていない、とはっきり書いています。

クレジットカードで積み立てられる金額のほうは、月10万円で、こちらは本当に国のルールで決まっています。金融商品取引業等に関する内閣府令148条2号が、その月の買付代金の総額が10万円を超えないこと、という条件を定めているためです。

ついでに、よくある誤解をひとつ。「クレカ積立の上限は2024年に5万円から10万円に引き上げられた」という説明は、正確ではありません。条文の改正前後を取り寄せて読み比べたところ、「十万円」という数字は、少なくとも2017年から一度も変わっていませんでした。2024年3月の改正で変わったのは金額ではなく、何を基準に10万円を数えるかのほう(「同一人に対する信用の供与」から「その月の買付代金の総額」へ)です。

上の境界について、最後にもう1点。その年に使わなかった枠は、翌年に繰り越せません。日本証券業協会のQ&Aにも、ある年に使い残した年間投資枠を翌年に繰り越すことはできない、と明記されています。売って空いた枠が戻るのも翌年以降で、その年の360万円が増えるわけではありません

こうして上限を並べてみると、ずいぶん高いところに天井があります。年360万円。ただ、さっきの分布表を思い出してください。つみたて投資枠を上限近くまで使っている口座は8.7%でした。そして半分は、つみたて投資枠では0円だった。上限は天井であって、目指すべき高さではありません。

🔁 その間で、なかったことにできる額

下の線は手元に残す現金の残高、上の線は1年に入れられる額。ものさしは違いますが、毎月の額はこの2つに挟まれた場所で決まります。現金がその線を割りそうなら下げる、上限に当たればそれ以上は入らない、というだけのことです。

その間で決めるのは、毎月の家計から抜いても暮らしが回る額——いってしまえばなかったことにできる額です。

この額の決め方には、順序が2つあります。ひとつは、暮らして余ったぶんを回す。もうひとつは、先に投資に回す額を決めて、残りで暮らす。同じ金額に落ち着くこともありますが、この2つは、手を動かす場面が変わります。前者は、その月に何かあれば投資のほうが自動的にゼロになる——生活が先に守られる形とも言えます。後者は、何かあったときに自分で設定を開いて下げる必要があります。どちらが正しいという話ではなく、どちらの側に手間を置くかの違いです。

それに、この額は決めた翌年も同じとはかぎりません。家賃が上がる、家族が増える、働き方が変わる、収入の入り方が変わる。「抜いても暮らしが回る額」は、暮らしのほうが動けば動きます。去年の自分が決めた額が、今年の自分にちょうどいいとはかぎりません。

だからこそ、ここがこの記事でいちばん伝えたいところなのですが——この額は、あとから何度でも変えられます。

主要なネット証券5社の取引ルールと手数料表を確認しました。毎月の積立額そのものを変えること(増やす・減らす・止める・再開する)について、手数料の定めも、回数の制限も、どこにも書かれていませんでした。私が確認した範囲では、いつでも、何度でも変えられます。

ただし、「いつ変えれば次の買付に間に合うか」は、会社ごとにも、支払い方法ごとにもバラバラでした。同じ会社の中でも、現金決済とクレジットカード決済で1か月近く違うことがあります。

📊 図解⑥ 「変えたい」と思ってから、いつの買付に反映されるか
会社最低積立額変更が次回に間に合う締切の例増額(ボーナス)設定
SBI証券 100円以上1円単位 クレカ積立は毎月10日23時50分(三井住友カードの場合)。これを過ぎると翌々月からの反映 あり。クレカ積立には付けられない
楽天証券 100円から 楽天カードクレジット決済・楽天ペイ残高は毎月12日まで あり。クレカ決済・楽天ペイ残高では不可
マネックス証券 原則100円以上1円単位 現金は買付日の前営業日まで。クレカ積立の新規・追加は毎月8日23時59分 あり。クレカ積立・毎日つみたてでは不可
三菱UFJ eスマート証券 毎月100円以上1円単位 預り金・銀行引落は指定日を含めて7営業日前まで(6営業日以内なら翌月から) 増額月を年2回まで設定可
松井証券 100円以上1円単位 積立日の翌日、午前2時15分ごろにまとめて注文が作られるため、それより前の変更が次回に反映 増額設定を年2回まで設定可

※ 表は横にスワイプできます(スマートフォンでは縦に並びます)。
※ すべて各社公式ページの記載にもとづく2026年8月13日時点の内容です。締切日や条件は変更されることがあるため、実際に変更するときはご自身が使っている会社の公式ページでご確認ください。また同じ会社でも、支払い方法によって締切は上の例とは異なります。
※ この表は、どこが良いかを比べるためのものではありません。会社ごとにも支払い方法ごとにもバラバラなので、自分の使っているところを自分で確認するしかない、ということを示すための表です。

もうひとつ、確認していて意外だったことがあります。「昇給に合わせて毎年自動で積立額を上げてくれる機能」は、5社の公式ページを見た範囲では見当たりませんでした。あるのは、あらかじめ自分で月と金額を指定しておくボーナス月・増額月の設定だけです。

つまり積立というのは、放っておくと同じ金額のまま何年でも続く仕組みだということです。始めた日の自分が決めた金額が、そのまま動き続ける。増やしたいと思ったら、自分で設定を開くしかありません。

⚠️ 「止める」と「売る」は別のことです。積立を止めても、手数料はかかりません。ただしそれまでに買った投資信託には、持っている間ずっと信託報酬がかかり続けます。積立を止めるというのは「これ以上は買わない」ということであって、「費用がゼロになる」ということではありません(信託報酬の話は手数料の記事で詳しく書きました)。

最後に、これは書いておきたいことです。生活が苦しくなったときに積立を止めるのは、家計を守るための正当な判断です。止めた期間のぶんをあとで取り返せるかどうかは、そのときの相場しだいで誰にも分かりません。分からないことを理由に、いまの生活を削る必要はないと思います。止められること自体が、この仕組みの良いところです。

🧮 額の差は20年で何になるか。そして、その数字はどのくらい確かか

ここまで「額は自分で決めるしかない」と書いてきました。とはいえ、額の違いが最後にどれくらいの差になるのかは、見ておいたほうが決めやすいと思います。計算してみます。

📊 図解⑦ 年率5%が20年続いたと仮定した場合
積立額元本運用収益合計
毎月1万円240万円約173万円約413万円
毎月3万円720万円約518万円約1,238万円
毎月5万円1,200万円約864万円約2,064万円

※ 表は横にスワイプできます(スマートフォンでは縦に並びます)。
※ 年率5%が20年間続いたと仮定した試算です(毎月はじめに積み立て、年率5%を12で割った月利で複利計算。手数料・信託報酬・税金は考慮していません)。年率5%は過去の実績でも約束でもありません。
※ 計算方法(月のはじめか終わりか、月利の出し方)はツールによって違います。他のシミュレーターでは、同じ条件でも数十万円ちがう結果が出ることがあります。
※ 3つとも、合計は元本の約1.72倍で揃います。

毎月1万円と3万円で、20年後に800万円以上ちがう。数字だけ見れば、多いほうがいいに決まっている、という話になりそうです。

ところが、この表を作っているときに、自分の足元が崩れるようなことに気がつきました。

🚨 金融庁のつみたてシミュレーターのページに、こう書かれていました。

「シミュレーション結果の精緻化のため、令和7年9月に計算ロジックを一部修正しました。」

中身を確かめたところ、変わったのは月の利率の出し方でした(年率を12で割る方式から、12乗根を使う方式へ)。そのうえで、この記事の計算とは積み立てるのが月のはじめか終わりかという前提も違います。同じ「毎月3万円・年率5%・20年」でも、こうなります。

計算の前提20年後
この記事の計算(年率÷12・月のはじめ)約1,238万円
金融庁の現在の計算(12乗根・月の終わり)約1,217万円

※ 金融庁のシミュレーターの計算式を実際に読んで、当社で同条件を計算し直したものです。どちらかが間違っているのではなく、前提の置き方が違うだけです。

同じ条件を入れているのに、約21万円ちがいます。しかも国の機関が、2025年9月に計算のしかたを変えている。つまり少し前に同じツールで出した数字と、いま出る数字は違うということです。

そしてそもそも、「年率5%」という前提自体が仮定です。この20年がそうなる保証はどこにもありません。

なので、さっきの表の読み方はこうだと思います。額が違えば、結果も大きく違う。それはそのとおりです。ただ、そこに出てくる「20年後の金額」そのものが、前提の置き方ひとつで数十万円動く程度のものでもある。この表は「いくらにすれば正解か」を決めるための表ではなく、どのくらいの規模になるかの見当をつけるための表だと思っています。増えるかどうかは自分では決められません。決められるのは、続けられるかどうかのほうです。

🙋 私の場合

私は先に決めました。暮らして余ったぶんを回すのではなく、先に投資に回す額を決めて、残りで暮らすという順序です。

そしてその額を、これまでに何度か増やしてきました。

増やしたきっかけが、自分でも意外でした。収入が増えたからではありません。

自分のお金を実際に入れてみると、それまで素通りしていた経済のニュースが、急に気になるようになりました。この出来事は株価にどう効くんだろう。いまの水準は、過去と比べてどのあたりなんだろう。気がついたら、誰に言われたわけでもなく自分から調べていました。

学生のころ、経済という分野にはまったく興味がありませんでした。それが、知れば知るほど奥が深くて、単純に面白くなったんです。いまこうして毎朝ニュースを書いているのも、もとをたどればそこに行き着きます。

そうしているうちに、投資に対する怖さが、少しずつ薄くなっていきました。何が起きているのか分かるようになると、同じ下落のニュースでも受け取り方が変わります。そして怖さが薄くなったぶんだけ、毎月の金額を段階的に上げてきた——これが、私の場合の順番でした。

世の中では「昇給したら積立額も増やしましょう」とよく言われます。私の場合、先に増えたのは収入ではなく、分かることのほうでした。

ただ、これは私にたまたま起きた順番であって、勉強すれば誰でも怖くなくなる、という話ではないと思っています。調べたうえで「自分にはこの額が上限だ」と決める人もいるはずです。それも、筋の通った決め方だと思います。私が書けるのは、額を決めた理由が途中で変わることもある、というだけのことです。

📝 まとめ

「毎月いくら積み立てればいいか」の答えは、証券会社の画面の中にも、統計の平均値の中にもありませんでした。

  • 🔍
    「収入の◯割」に、公的な基準は見つかりませんでした。金融庁の教材にあるのは「投資する資金は、生活資金とは別の余裕資金で」まで。その余裕資金がいくらなのかは書かれていません。法令データベースでも、家計についての「余裕資金」の定義は出てきませんでした。
  • 📊
    世の中は「いくら」ではなく「やるか、やらないか」で割れています。NISA口座の半分(51.2%)が、つみたて投資枠では2025年に0円。買った人の中も、20万円以下と上限いっぱいに分かれていて真ん中が薄い。平均を出しても、その真ん中あたりは人がまばらです。40万〜100万を合わせても1割に届きません。
  • 🧱
    下の境界は、割合ではなく金額で引きます。家賃も家族構成も勤め先の制度も人によって違うので、割合では引けません。金額で引いた時点で「手取りの何割」という問いは自分には関係なくなります。
  • 📐
    「つみたて投資枠は月10万円が上限」は法律ではありません。条文が定めているのは年120万円だけで、月の区切りは出てきません。10万円は各社の毎月コースの入力上限です。一方クレカ積立の月10万円は内閣府令で決まっていて、この金額は少なくとも2017年から変わっていません
  • 🔁
    「なかったことにできる額」は、あとから何度でも変えられます。暮らしのほうが動けば、ちょうどいい額も動きます。5社とも手数料も回数制限もありませんでした。ただし次の買付に間に合う締切は会社ごと・支払い方法ごとにバラバラで、自動で増やしてくれる機能は見当たりませんでした。放っておけば、始めた日の金額のまま何年でも続きます。
  • 🧮
    20年後の金額は、前提をわずかに変えるだけで数十万円動きます。金融庁は2025年9月にシミュレーターの計算ロジックを変えました。同じ条件でもこの記事の計算とは約21万円ちがいます。最後の金額を先に決めることはできません。決められるのは、その額を続けられるかどうかのほうです。
💬 お金バイバイマンの一言

この記事を書いていて、いちばん背筋が伸びたのは国のシミュレーターが2025年9月に計算方法を変えていたところでした。同じ条件を入れても、少し前とは違う数字が出る。20年後の金額というのは、その程度には揺れるものなんだと思いました。毎月いくら入れるかは自分で選べても、それが20年後にいくらになるかは選べない。そう分かってからは、その額と何年つきあえるかのほうを考えるようになりました。金額の話をしていたはずが、最後は自分の暮らしの話になりました。

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経済用語辞典(ニュースに出てくる言葉をやさしく)

📚 参考にした一次情報源

以下の一次資料で照合して作成しています(すべて2026年8月13日に取得)。

  • e-Gov法令検索 租税特別措置法37条の14、同施行令25条の13、金融商品取引業等に関する内閣府令148条(2017年4月1日版・2024年2月1日版・現行版)
  • 金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2025年12月末時点・2026年7月3日公表)、NISA特設ウェブサイト、「つみたてシミュレーター」(令和7年9月に計算ロジックを修正した旨の記載を含む)
  • 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」(2023年12月改訂)、「高校生のための金融リテラシー講座」指導教材、「令和8年度税制改正について」
  • 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」(2025年12月18日公表/2026年1月21日付の訂正を反映した版)、「金融リテラシー・マップ」(2023年6月改訂版)
  • 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」(2026年2月6日公表)
  • 日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月版)
  • SBI証券・楽天証券・マネックス証券・三菱UFJ eスマート証券・松井証券の各公式サイト(取引ルール、手数料、積立設定および各決済方法の締切に関する記載)

【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や、特定の投資手法・投資金額を推奨するものではありません。また、投資助言を行うものでもありません。記事中の試算は年率5%が継続したという仮定にもとづく概算であり、手数料・信託報酬・税金は考慮していません。この利回りを保証するものでも、将来の運用成果を示すものでもありません。証券会社の締切日・最低金額・設定できる内容は変更されることがあるため、実際の手続きの前に各社の公式ページをご確認ください。制度・数値は2026年8月13日時点で確認できた法令および公表資料にもとづきますが、税制も各社のサービス内容も変更されることがあります。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

「お金バイバイマンの経済ニュース」運営者。

月曜から土曜の毎朝、日経平均・米国株・為替などマーケットの動きを「なぜ動いたのか」まで追いかけて、図解つきでやさしく解説しています。"今日の経済用語"コーナーでは、ニュースに出てくる言葉を1日1語ずつ深掘り中。気づけば用語辞典は70語を超えて、いまも増え続けています。

じつは昔、SNSのキラキラした投資情報に憧れて、情報商材を買ってしまったことがあります。遠回りの末にたどり着いたのが「長期・分散・積立でコツコツ」。相場が荒れた日も、合言葉は「今日も何もしません」です。

朝の意見コラム『今朝の経済、私はこう見る』は、noteで平日の毎朝、連載しています。

好きなものは、お酒・サウナ・食べ歩き。経済ニュースも、それくらい気軽な習慣にしてもらえたら嬉しいです📈

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