💸 投資信託の手数料、結局いくら引かれてる?【信託報酬0.1%の差を20年で図解】
投資信託を持っていると、毎日少しずつお金が差し引かれています。でも、財布からお金を出した記憶はないし、取引履歴にも出てこない。気づかないように作られているわけではなく、そういう仕組みだからです。この記事では、その手数料が「いつ・どこから・いくら」引かれているのかを、実際に公表されている数字を使って図解します。そして最後に、0.1%の差を私自身がどう扱っているのか——買うときと、持ち続けるときで分けて、正直に書きます。
📌 本記事の数値は2026年7月25日時点で公表されている資料にもとづいています。信託報酬や費用は改定されることがあるため、実際に確認するときは最新の目論見書をご覧ください。また、記事中に出てくる具体的な投資信託は数字の実例として挙げているもので、特定の商品をおすすめするものではありません。
💸 なぜ「引かれている実感」がないのか
投資信託の手数料でいちばん大きいのは、たいていの場合「信託報酬」(運用管理費用)です。ところが、この信託報酬を「払った」という実感がある、という方は少ないのではないでしょうか。銀行引き落としもないし、証券口座の取引履歴にも出てきません。
理由は単純で、私たちの財布から直接出ていくのではなく、投資信託の財産から差し引かれる形で負担しているからです。払っていないのではなく、払い方が見えないだけ、ということですね。交付目論見書(そのファンドの説明書。以下、目論見書)を開くと、費用の欄がきれいに2つに分かれています。
購入時手数料(買うとき)/信託財産留保額(解約するとき)。買うとき・解約するときに、金額として提示されます。
信託報酬/その他の費用。ファンドの財産から引かれるので、気づきません。
信託報酬は右側(間接)です。これは私が勝手に分けたのではなく、目論見書の見出しが、もともとこの2本立てになっています。つまり「気づきにくい」のは制度としてそう設計されているだけで、隠されているわけではありません。
では、いつ引かれているのか。答えは毎日です。信託報酬は日々のファンドの財産(純資産総額)に対して日割りで計上され、その分を差し引いたあとの数字として基準価額が計算されます。ニュースやアプリで見る基準価額は、すでに信託報酬が引かれたあとの値ということです。「今日いくら引かれた」と通知が来ないのは、そもそも通知される種類のお金ではないから、というわけですね。
信託報酬は1社が総取りしているわけではなく、3者で分け合っています。目論見書には、3者にそれぞれ何%ずつ配分されるかまで書かれています(下は、それぞれが何をしているか)。
📊 0.1%の差は、20年でいくらになる?
ここが今日いちばん書きたかったところです。「信託報酬は低いほうがいい」とはよく言われますが、実際どのくらい違うのかを数字にしないと、本当のところは分かりません。
そこで、100万円を20年間持ち続けた場合を試算してみます。運用のリターンは年5%で一定と仮定し、そこから信託報酬を引いた率で計算した概算です。
※元本100万円・年率5%が20年間続いたと仮定した概算です(本文中の1,000万円・1,800万円の試算も同じ前提での計算です)。税金や信託報酬以外の費用は考慮していません。実際の信託報酬は日々差し引かれるため、簡便な計算による目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。
数字を並べてみて、私が意外だったのは差の「出方」でした。0.1%と0.2%の差は、20年かけて約5万円。「0.1%の差が命取り」と身構えていたほど派手な数字ではありません。ただ、これは元本100万円・20年という一点での話です。持つ期間が伸びれば差は開き、残高が増えれば同じ0.1%でも引かれる額は増えていきます。
ところが0.1%と1.0%を比べると、差は約41万円。桁がひとつ変わります。
ここまではすべて、元本100万円での試算です。この差は元本にほぼ比例するので、同じ条件なら元本1,000万円で約49万円と約412万円、新NISAの生涯投資枠の上限にあたる1,800万円なら約89万円と約742万円になります。金額そのものはご自分の残高しだいですが、0.1%と0.2%の差より、1.0%との差のほうが8倍以上大きい——この関係は、元本がいくらでも変わりませんでした。
もうひとつ、これらはいずれも100万円を1回置いたきりの試算です。毎月コツコツ積み立てている人の場合は、投じる元本そのものが大きくなるぶん、差の金額も大きくなります(そのかわり、預けている期間が短いお金も混ざるので、元本に対する割合は一括よりも小さくなります)。
毎月3万円を20年積み立てたら(総額720万円)
※毎月はじめに3万円ずつ20年間(総額720万円)積み立て、年率5%(月複利)が続いたと仮定した概算です。税金や信託報酬以外の費用は考慮していません。将来の運用成果を示すものではありません。
こちらでも構図は同じでした。0.1%と0.2%の差は約14万円。それに対して1.0%との差は約120万円で、20年で積み立てた元本720万円の、およそ6分の1に相当します。ここまで来ると、さすがに無視できる金額ではありません。
効き目が大きいのは、小数点以下の細かい差よりまず「桁」のほうだということです。いま持っている(あるいは買おうとしている)ものが1%を超えるような水準になっていないか。もしそうなら、その分を払う理由に自分が納得できているか。私の場合は、そこを一度確認するのが先だと思いました。そのうえで、これから選ぶのなら話は別です。中身がほとんど同じファンドどうしなら、その5万円は「払わなくてもよかった5万円」になります。大きいか小さいかは人によると思いますが、私が引っかかったのはそこでした。この話は、あとの「私はこう考えています」でもう一度書きます。
🔍 表示されている数字が、全部ではありません
ここからは、つい見落としがちな話をします。「信託報酬0.05775%」と書いてあっても、実際に負担している額はそれとは違うことがあるのです。実例を見たほうが早いので、実際に公表されている数字を並べてみます。
例として、全世界の株式に投資するタイプの代表的なインデックスファンドを1本取り上げます。あとで比較のために、同じシリーズの米国株式ファンドの数字も出します(いずれも数字の実例としてであり、これらの商品をすすめる意図はありません)。
目論見書やサイトに大きく出ている数字。「〜以内」と書かれた上限の率です 0.05775%
このファンドは規模が大きくなるほど率が下がる仕組み。実際に適用中の率はこちら 0.05755%
信託報酬に、監査費用などの「その他の費用」を足した実際の経費 0.07061%
※eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の交付目論見書(使用開始日2026年7月25日)および月次レポートより。総経費率の対象期間は2025年4月26日〜2026年4月27日。数字は今後変わることがあります。
ただ、この2つは性質が少しちがいます。①の表示は「これから引かれる上限」、③の総経費率は「過去1年に実際に引かれた実績」です。上限と実績を並べているので、厳密に同じものを比べているわけではない、という前提で見てください。
そのうえで見比べると、差は0.013%ほど。100万円を持っていて年130円くらいの話なので、金額としてはごくわずかです。ただし率で見ると表示の約1.2倍。時点のちがいを差し引いても、「表示の数字がそのまま実費ではない」ということは知っておいて損はありません。
ちなみに、これはいつも表示より高くなるという意味ではありません。同じシリーズの米国株式(S&P500)のファンドでは、表示0.08140%に対して実際に適用されている率は0.07655%程度、総経費率は0.07953%と、むしろ表示より低い結果になっています(表示はあくまで上限で、実際の適用率がそれより低く設定されているためです)。上がるか下がるかはファンドの規模や運用の中身しだいで、実際に見てみないと分からないのです。
ややこしいのは、それでも総経費率そのものは全世界株のほう(0.07061%)が低いという点。「表示より低い=安い」でもないわけです。どちらが優れているという話ではなく、表示の率だけでは判断できない、というだけの話だと受け取っています。
総経費率は「これで全部」と思いたくなりますが、売買委託手数料(ファンドが株を売り買いするときの手数料)と有価証券取引税は、原則として含まれません。ルール上そう決まっています。だから総経費率も「かなり実態に近い数字」であって、完全な総額ではない——というのが正確なところです。
🧾 信託報酬のほかに、かかるかもしれない費用
手数料は信託報酬だけではありません。ただしいまのインデックスファンドでは、かからないものも多いです。順番に見ていきます。
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購入時手数料(買うときにかかる)
買った金額の数%が引かれるタイプ。ただし新NISAの「つみたて投資枠」に入っている投資信託は、購入時手数料が無料であることが条件になっています。つみたて投資枠の投資信託を選ぶ限り、ここは気にしなくて大丈夫です。
例外がひとつあります。つみたて投資枠の対象360本のうち9本はETF(上場投資信託)です(2026年7月24日時点・金融庁公表)。ETFは購入時手数料ではなく「売買手数料1.25%以下」(投資家が証券会社に払うほうの手数料です)という別のルールで、これは制度上の上限。実際にいくらかかるかは証券会社によって変わるので、つみたて投資枠でETFを選ぶときは確認しておくと安心です。
ここまでは、つみたて投資枠の中の話です。成長投資枠や課税口座で買う商品には、購入時手数料がかかるものもあります。
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信託財産留保額(解約するときにかかる)
解約するときに基準価額から差し引かれる費用です。かからないファンドも多く、先ほどの2本もどちらも「ありません」。ここは誤解されがちですが、このお金は運用会社や証券会社の取り分になるのではなく、そのままファンドに残ります。解約する人の売却コストを、残る人に押し付けないための仕組みだからです。
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その他の費用(監査費用など)
ファンドの決算を監査してもらう費用や、財産を保管する費用など。先ほど見た総経費率には、これが含まれています。事前に確定できない性質のものなので、目論見書では金額を明示できないと書かれていることが多いです。
📖 目論見書の、どこを見ればいい?
実際に自分が持っているファンドを確認したいときは、「交付目論見書」という書類を開きます。証券会社のファンド紹介ページからPDFで見られます。開いたら、いちばん後ろのほうにある「ファンドの費用・税金」という欄を探してください。費用の情報は、ここにひととおりまとまっています。
購入時手数料と信託財産留保額。ここが「なし」なら、売り買いでの持ち出しはありません買う・解約
運用管理費用(信託報酬)。年率・税込で書かれているのが一般的です持っている間
実際にかかった経費。運用報告書にも載っています実績
総経費率が目論見書に載るようになったのは、実はわりと最近です。投資信託協会(2026年4月に日本投資顧問業協会と統合し、いまは資産運用業協会)のルールで、運用報告書には2019年から、交付目論見書には2024年から記載されるようになりました。どちらも法律ではなく業界の自主ルールで、位置づけも「参考情報」です。昔の資料には載っていないことがあるのは、そのためです。
投資信託のなかには、別の投資信託を通じて投資するタイプがあります。その場合、自分が買ったファンドの信託報酬に加えて、投資先のファンドの信託報酬も間接的に負担します。目論見書に「実質的に負担する運用管理費用 年◯%程度」と書かれていたら、それが合計の目安です。「程度」とあるのは、投資先の組み入れ状況によって変わるからで、この場合は表示の率だけを見ると実際より安く見えます。
🙋 私はこう考えています
信託報酬の話をすると、「1円でも安いほうがいい」という声と、「小数点以下の違いなんて気にしても意味がない」という声の両方を見かけます。どちらの言い分も分かります。私も低コスト競争のニュースを見るたびに、なんとなく「乗り換えたほうがいいのかな」と考えていました。
そのうえで、私はこう整理しています。手数料への力の入れ方を、「買うとき」と「持ち続けるとき」で分けている、ということです。まず、買うときの話から。
前提として、この5万円は信託報酬0.1%と0.2%を比べたときの差で、年5%で運用できたと仮定して、元本100万円を20年持った場合の話です。同じ0.1%の差でも、毎月3万円を20年積み立てた場合(元本720万円)なら約14万円になりますし、持つ期間が伸びればもっと広がります。そして同じ指数(インデックス)に連動するファンドどうしなら、投資先の中身はほとんど同じです。厳密には指数への連動のうまさや為替ヘッジの有無、表示に出ない費用の差もあるのですが、選ぶときにいちばん見比べやすい違いは手数料です。中身がほとんど同じなら、私は0.1%の差でも安いほうを選びます。ここは、こだわる価値があると思っています。
いっぽう、すでに持っているものを、安いファンドが出るたびに乗り換えることは、私はしません。各社の値下げ競争はかなり激しくて、「最安になりました」というニュースは何度も出てきます。その都度切り替えていたら、まず単純に労力がかかります。それに、売れば含み益もそこで確定します。特定口座(課税口座)なら利益に税金がかかるので、増えていた分をそのまま全額、運用に回し続けることができません。NISAの中なら税金はかかりませんが、買い直すにはその年の投資枠を使うことになり、売った分の非課税枠が戻るのは翌年以降です。乗り換えで取り戻せるのは、この先の、残高しだいで年に数千円から1万円台という手数料差です。そのために、それだけのものを差し出すのは、私には合わないと感じます。
だから私は、力を入れるのは最初に買うときだと思っています。同じ指数に連動するファンドを並べて、信託報酬(できれば総経費率も)を見比べて、そのなかでなるべく安いものを選ぶ。あわせて純資産総額(ファンドの規模)も見ます。規模が小さいままだと運用が途中で終わってしまうこと(繰上償還)もあり、目論見書には「受益権の総口数が◯億口を下回った場合」などの条件が書かれています。ある程度の規模があって、コストにも自分が納得できる——そこまで確認して選べたら、あとは長く持つほうに気持ちを使いたい。
もちろん、その都度いちばん安いものへ移していく方もいて、手数料を1円でも削るという意味では、そちらのほうが理にかなっています。私は、最初に一度きちんと選んで、そのあとは動かさない形が自分には合っている、というだけの話です。
📝 まとめ
- 💸
信託報酬は毎日、ファンドの財産から日割りで差し引かれている。財布から出ないので実感がないだけで、基準価額はすでに引かれたあとの数字です。
- 📊
元本100万円・20年なら、0.1%と0.2%の差はおよそ5万円、1.0%との差はおよそ41万円。金額は元本の大きさに比例し、持つ期間が長くなるほど開いていきます。
- ⚖️
まず大きく効くのは「桁」。そのうえで、中身がほとんど同じファンドどうしなら、私は0.1%の差も見て選びます。
- 🔍
表示の率と、実際にかかった経費(総経費率)は違うことがある。高くなることも、低くなることもあります。
- 📖
確認するのは交付目論見書の「ファンドの費用・税金」欄。直接負担・間接負担・総経費率の3か所を押さえれば、大きな取りこぼしはありません。
手数料の話は、地味なわりに一度わかってしまえばずっと使えます。相場のように毎日変わるものでもないので、私は買うときに一度しっかり見比べて、あとは思い出したときに確認するくらいでちょうどいいと思っています。今日はここまでです。
・新NISA、結局なにから始めればいい?(つみたて枠と成長枠のちがい)
・オルカンとS&P500、どっちがいい?(中身が6割重なる話)
・ドルコスト平均法とは?(経済用語辞典)
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「同 米国株式(S&P500)」交付目論見書(使用開始日2026年7月25日)・月次レポート(2026年6月末現在)
- 資産運用業協会(旧・投資信託協会)「交付目論見書の作成に関する規則に関する細則」「投資信託及び投資法人に係る運用報告書等に関する規則」
- 金融庁「つみたて投資枠 対象商品の要件」「つみたて投資枠対象商品の分類」(購入時手数料・ETFの売買手数料に関する要件)
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記事中の投資信託は、公表されている数値の実例として挙げたものです。数値は2026年7月25日時点で確認できた資料にもとづいており、信託報酬や各種費用は改定される場合があります。試算はいずれも一定の運用利回りを仮定した概算であり、税金および信託報酬以外の費用は考慮していません。将来の運用成果を示すもの、また保証するものではありません。


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