🗓 買ったあと、年に1回だけ見ること【「年に1度」と勧めていたページは、2024年6月で更新が止まっていました】
積立の設定を終えると、次にすることが急に無くなります。そこで見かけるのが「あとは放っておけばいい」という説明と、「年に1回は見直しを」という説明です。どちらもよく見るのに、何を、いつ、どうやって見るのかは、あまり書かれていません。
その「年に1回」は誰が言い出したのだろうと思って、公的な資料を辿ってみました。するとそう勧めていたページは見つかったのですが、そのページ自体の更新が2024年6月で止まっていました。そのかわり、法令と規約の側には本当に日付が決まっているものがいくつも見つかりました。年に1回かどうかはさておき、見る先は値段ではなくカレンダーのほうにあったようです。
この記事で扱うのは、NISAや投資信託の積立を始めたあとに出てくる日付の話です。制度の説明は2026年8月時点で確認できた法令・規約・公表資料にもとづいています。実際の締切は金融機関ごとに前倒しで設定されていることがありますので、日付は必ずご自身の口座の案内でご確認ください。
🌀「放っておけばいい」と「年に1回は見直そう」を、同じ日に読みました
積立の設定が終わったあと、多くの入門記事は同じことを言います。相場を見なくていい。毎日値段を確認しても意味がない。長く持つことが大事だ。ここまでは、だいたい一致しています。
ところが同じ記事の終わりのほうに、「ただし年に1回は見直しましょう」と書いてあることがあります。見なくていいと言われた直後に、見ろと言われる。しかも「何を見るのか」がはっきりしないまま終わることが多いのです。
調べていくうちに、この違和感の正体が少し分かりました。「年に1回見るもの」と呼ばれているものの中に、性質のまったく違う3種類が混ざっていたのです。
| 中身 | 逃したらどうなるか | |
|---|---|---|
| 見ても、押すボタンがないもの | 評価額。損益。今月いくら増えたか | 何も起きません。見なかった日の値段も、見た日の値段も、持っている数量は変わりません |
| 日付が決まっているもの | 口座を置く会社を変える。税金の扱いを選ぶ。掛金の額を変える。申告する | 次のチャンスが翌年になります。物によっては、その年はもう動かせません |
| 日付は決まっていないのに、放っておけないもの | 持っているファンドが続いているか。暮らしのほうが変わっていないか | 逃す、という形になりません。かわりに、気づくのが遅れます。ファンドが終わるのは向こうの事情、暮らしが変わるのはこちらの事情で、どちらもカレンダーに先に書けないからです |
※ 画面の幅によっては、表を横にスワイプできます。この分け方は本記事の整理であって、どこかの機関が示している区分ではありません。
世の中で「年に1回」の代表として語られるのは、日付が決まっているものではなく、評価額を見て判断する側の話です。比率を元に戻す作業、いわゆるリバランスがそれにあたります。それなら、その「年に1回」はどこから来た数字なのか。まずそこから確かめました。
🔍「年に1度」と書いていたページを探しにいったら、更新が止まっていました
結論から書くと、「個人は年に1度」と明記している公的な団体の記述は、実在しました。日本証券業協会が運営していた投資の入門サイトのQ&Aです。回答者として同協会の担当部署の名前が入っています。
「リバランスには、”毎年1回”など一定の期間ごとに行う場合と、”最初の状態から1割以上ずれたら”など変化に応じて行う場合があります。(中略)頻度は、毎月、四半期、半年、1年、3年などさまざまですが、個人の場合は1年に1度、家計全体の棚卸しの一環としてリバランスを行うことをおすすめします。」
同じサイトの用語集にも、「年1回程度の見直しが適当と考えられています」とあります。理由として挙げられているのは売買手数料でした。つまり「年に1回」は運用の理屈から出てきた数字というより、やりすぎるとコストがかさむので、それくらいに抑えておくという発想のようです。
ここまでなら、よくある話です。気になったのは、そのページのいちばん下でした。
「※本ウェブサイトは、日本証券業協会が行っていた金融・証券教育支援事業が2024年8月に金融経済教育推進機構に移管される前において、日本証券業協会により制作されたコンテンツです。2024年6月以降、コンテンツの内容を更新していませんのであらかじめご承知おきの上、ご覧ください。」
このサイトは2024年8月に金融経済教育推進機構へ事業ごと引き継がれ、いまは引き継いだ側のサイトの「リンク集」の下に置かれています。もとの協会のサイトの当時のURLは、2026年8月15日に確認したところ開けませんでした。つまりこの「年に1度」は、2024年6月で時計が止まったページに残っている記述です。
では、引き継いだ側は何と言っているのか。現行の教材を一つずつ開いて、「リバランス」という言葉を探しました。
| 資料 | 時点 | 出現 |
|---|---|---|
| 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」 | 2023年12月版 | 0件 |
| 金融庁「NISA早わかりガイドブック」 | 2023年7月版 | 0件 |
| 金融経済教育推進機構「金融リテラシー・マップ」 | 2023年6月版 | 0件 |
| 同「資産形成ハンドブック(個人での資産形成編)」 | 現行 | 0件 |
| 同 標準講義資料(若年層社会人向け・60分モデル) | 2025年9月 | 0件 |
| 日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」 | 2025年9月 | 0件 |
| 資産運用業協会「投資信託Q&A100選(基礎編)」 | 現行 | 0件 |
| 更新が止まったサイトのQ&A・用語集 | 2024年6月で停止 | 記載あり |
※ 各資料のPDFおよびページを取得して全文検索した結果です。探した範囲はこの7点で、「どこにも存在しない」ことを示すものではありません。また、言葉が出てこないことは、リバランスが否定されたことを意味しません。
⚠️ ここは慎重に書きます。「言葉が消えた」ことは、「リバランスが否定された」ことではありません。教材を作る主体が変わり、対象も分量も変わっているので、単に扱わなくなっただけかもしれません。確かめられたのは「いまの公的な現行教材には、この言葉が出てこない」という事実だけで、その理由までは分かりませんでした。
むしろ公平を期すために書いておくと、「年に1度」と勧めていた当の記述自身が、こう留保をつけています。
「※ただし、常にプラスに働くとは限りません。特定の投資対象が値上がり続ける場合、もしくは値下がり続ける場合には、リバランスを行ったことがマイナスに働くこともあります。」
勧めている側が、同じ場所で「必ず得になるわけではない」と書いている。そう考えると「年に1回リバランスすべきだ」も「リバランスは無意味だ」も、どちらも言い過ぎということになります。ここは決着のついていない話として、そのまま置いておくのが正直だと思いました。なお金融庁のNISA特設サイトにもこの言葉が出てくるページがありますが、そちらは外部の方との座談会で、冒頭に「当庁の見解、意見等を示すものではありません」と明記されています。役所の見解としては読めません。
🏛 GPIFもやっています。ただ、理由が家計とは違いました
リバランスの説明でよく引き合いに出されるのが、私たちの公的年金の積立金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。たしかに、この組織は決めた比率から離れすぎないように運用しています。あらかじめ「ここまでは離れてよい」という幅が公表されています。
| 国内債券 | 外国債券 | 国内株式 | 外国株式 | |
|---|---|---|---|---|
| 決めている比率 | 25% | 25% | 25% | 25% |
| 離れてよい幅(それぞれ) | プラスマイナス6% | プラスマイナス5% | プラスマイナス6% | プラスマイナス6% |
| 離れてよい幅(債券どうし・株式どうしをまとめて) | プラスマイナス9% | プラスマイナス9% | ||
※ 2025年4月1日から始まった第5期の基本ポートフォリオ。前の期はそれぞれ7%・6%・8%・7%、まとめた幅は9%ではなく11%でした。運用の目標も1.7%から1.9%に変わっています。「幅は9%」とだけ覚えると、資産ごとの幅を取り違えます。
ここで大事なのは、GPIFが「どのくらいの頻度で戻しているか」を公表していないことです。資料の言い方は一貫して「適時適切に」で、年に何回といった数字は見つかりませんでした。つまり「GPIFも年1回やっている」という説明は、少なくとも公表資料からは出てきません。
そのうえで、GPIF自身がなぜ自分たちがそれをするのかを書いている一文があります。そこに挙げられていた理由が、意外でした。
「リバランスにおけるリスク許容度は運用主体によって様々ですが、GPIFは、中期目標において、最低限のリスクで基本ポートフォリオの収益率を確保することが求められていることに加え、お預かりしている資金が巨大であることから、市場変動によって受ける意図しないリスクはできるだけ抑制するとの方針のもと、リバランスの高度化を進めてきました。」
「運用主体によって様々」と、最初に断っています。そして自分たちの理由として挙げているのは、中期目標という外から与えられた縛りと、預かっている金額の大きさです。別の箇所では「市場に与える影響に留意することも求められており」とも書いています。自分が売り買いすると相場そのものが動いてしまう立場の話であって、家計の話ではありません。手本にしてはいけない理由を、GPIFが自分で書いてくれているように読めました。
📈 積立1年目に起きているのは、「値動きで崩れた」ではありませんでした
そもそも、いま積立を始めたばかりの人に「戻す作業」の出番はあるのでしょうか。ここで、よく見かける説明を一つ訂正しておきます。
| 持っているもの | 中で比率は戻るのか | 理由 |
|---|---|---|
| バランス型 複数の資産をまとめた投信 |
戻ります | 約款で決めた配分に戻す運用が行われるため、持っている側の作業としては発生しません |
| 全世界株のインデックス 時価総額で比重が決まる指数に連動 |
戻りません | そもそも戻すべき固定の比率が存在しません。指数の変動率に一致させる運用なので、国や地域の比重は市場の時価総額の側で決まります |
※ つみたて投資枠の対象商品361本の内訳は、株式型197本・資産複合型155本・ETF9本(2026年8月10日時点)。資産複合型が全体の4割強にあたります。
「1本だけ持っているならファンドが勝手に戻してくれる」という説明を見かけますが、それが当てはまるのはバランス型のほうです。全世界株のインデックスで米国の比重が上がっていくのは、指数がそう動いているからであって、放置して崩れたわけではありません。「直してくれる」のと「直すべきものが無い」のは、結論が同じでも中身が別です。
では何も動かないのかというと、そうでもありません。現金まで含めて眺めると、比率は勝手に動いていきます。しかもその原因は値動きではありません。
| 経過 | 投信の評価額 | 現金 | 投信の比率 | 現金の比率 |
|---|---|---|---|---|
| 開始時 | 0円 | 100.0万円 | 0.0% | 100.0% |
| 1年後 | 37.0万円 | 100.0万円 | 27.0% | 73.0% |
| 2年後 | 75.9万円 | 100.0万円 | 43.1% | 56.9% |
| 3年後 | 116.7万円 | 100.0万円 | 53.9% | 46.1% |
| 5年後 | 204.9万円 | 100.0万円 | 67.2% | 32.8% |
| 10年後 | 467.8万円 | 100.0万円 | 82.4% | 17.6% |
※ 現金100万円・投信0円から始めて、毎月はじめに3万円を積み立て、年率5%(年率を12で割った月複利)で計算した場合の試算です。現金は取り崩さず、増やしもしない前提。10年間に出したお金は360万円。金額は1,000円未満を四捨五入しており、比率は四捨五入する前の金額で計算しているため、表の金額どうしを割った値とわずかにずれることがあります。年率5%は計算のための仮定であって、将来を約束するものではありません。金融機関のシミュレーションは計算の方法が異なることがあり、条件が同じでも金額は一致しないことがあります。参考までに、年率0%として計算した場合の1年後の投信の比率は26.5%です。
1年が終わった時点で、投信と現金の比率は27対73になっています。相場が上がったからでも下がったからでもなく、毎月お金を足しているからです。(仮に年率0%として計算しても、1年後の投信の比率は26.5%になります)世の中のリバランスの説明が想定しているのは「値上がりで比率が崩れた状態」ですが、積立を始めて1年目の人に起きているのは、そもそも別の現象でした。ここを混ぜて考えると、話が噛み合わなくなります。はじめの問いに戻ると、動いていたのは投信1本の中ではなく、現金まで含めた全体のほうでした。しかもそれは、崩れたのではなく、自分で積み立てた結果です。
🗓 では、締切がついているのはどちらなのか
ここから先が、日付の話です。値段のほうには締切がありませんが、手続きのほうには締切があります。調べていて驚いたのは、その数の多さでした。
もう一つ大事なのが、その締切が「何で決まっているか」が一つではないことです。法律で決まっているもの、政令や団体の規約で決まっているもの、制度を運営している機関が決めているもの、そして取引している会社が自分で決めているもの。同じ「締切」でも、性質が違います。
| いつ | 何ができる/何が起きる | 何で決まっているか |
|---|---|---|
| 1月1日 | NISAの年間の枠がリセット。売った分の空きが使えるようになるのもこの日から | 法律 租税特別措置法 |
| その年の1回目の売却より前 | 特定口座の源泉徴収あり・なしの切り替え。一度売ったら、その年はもう変えられません(信用取引をしている場合は、最初の差金決済のほうが早ければそちらが期限です) | 法律 租税特別措置法 |
| 2月16日〜3月15日 | 確定申告。損の繰り越しはこの期間が基本です(土日祝なら後ろにずれます)。ただしもともと申告の必要がない人なら、この期間を過ぎても出せます(毎年続けて出すことが条件)。還付を受けるだけなら5年間いつでも出せます | 法律 所得税法・租税特別措置法 |
| 前年10月1日〜9月30日 | NISA口座を置く会社の変更。その年にもう買っていたら、その年は変えられません | 法律 租税特別措置法 |
| 12月分〜翌年11月分で1回 | iDeCoの掛金の額の変更。数えるのは掛金の月で、暦の1月から12月ではありません | 政令と規約 確定拠出年金法施行令・個人型年金規約 |
| 例年10月下旬 | iDeCoの控除証明書が届く。初回の払込が10月以降だと、順に後ろへずれます | 実施機関 国民年金基金連合会 |
| 年末(会社ごとに別) | その年の枠で買える最後の申込み。法律が見ているのは12月31日までに口座へ入ったかどうかだけです | 各社の運用 日付は会社ごとに違います |
※ 2026年8月時点。締切にあたるものは、いずれも制度の側の期限で、実際に手続きが必要な日はこれより前になります。書類の受付や事務処理に日数がかかるためで、金融機関が独自に前倒しの締切を設けていることもあります。なお1月1日は締切ではなく起点、10月下旬は書類が届く時期です。「その年の1回目の売却より前」だけは暦の日付ではなく、自分が売った日で決まります。
この表を作ってみて、自分でも意外だったことがあります。「年に1回見ましょう」という言い方は、実はどの日付とも合っていません。1月1日に起きることと、9月30日に締め切られることは、別々の予定です。1年に1回どこかで見る、では拾えない。以下、そのうち間違えやすいものを見ていきます。
📮 NISAの日付は、締まるのが早く、戻るのが遅い
NISA口座を置く会社を変えたい場合、期間は「変えたい年の前年10月1日から、その年の9月30日まで」です。ここまではよく書かれています。ただ、条文を読んで気づいたことがありました。
9月30日は、2つあります。いま使っている会社に出す届出書の期限が9月30日で、新しく使う会社に出す書類の期限も、同じ9月30日なのです。根拠になっている条文はそれぞれ別の項ですが、期限は同じ日に置かれています。
問題は、この2つが順番につながっていることです。まず今の会社に届出書を出し、「勘定廃止通知書」という書類を返してもらい、それを新しい会社へ持っていく。日本証券業協会のQ&Aは、最初の会社での手続きに「概ね1週間程度」かかる見込みだと書いています。そのあと新しい会社の側にも税務署への確認などの事務があります。
🚨 つまり9月30日は、最後の書類が受け付けられる日であって、動き出していい日ではありません。9月の中ごろに思い立つと、書類が行き来しているあいだに9月30日を越えてしまう可能性があります。「9月30日まで」とだけ覚えていると、いちばん危ないタイミングで安心してしまいます。
もう一つの条件も大事です。その年に一度でも買っていると、その年の変更はできません。条文の言い方は「買付」ではなく「上場株式等の受入れ」で、受入れがあった場合は届出書を受理することができない、と書かれています。売っただけなら受入れにはあたりません。毎月の積立を設定したまま年を越すと、1月の買付が済んだ時点でその年は動かせなくなる、ということでもあります。
なお会社を変えても、前の会社で買った分をあとから移すことはできません。ただし前の会社に置いたままでも非課税は続きますし、その買付額は1,800万円の枠の計算にもきちんと入ります。「変えると前の分が無駄になる」わけではない、ということです。
売った枠が翌年まで戻らない理由が、条文に書いてありました
NISAで売却すると、その分の枠は翌年からまた使えるようになります。これもよく知られていますが、なぜ翌年なのかを説明したものは、あまり見かけません。条文にはっきり書いてありました。1,800万円の判定に使う金額が、「同年の前年十二月三十一日に」受け入れている株式等の購入の代価の額と定義されているのです。
法律は、12月31日時点の写真しか見ていません。だから3月に売っても、その写真は来年の1月1日にならないと撮り直されない。仕組みが分かると、覚えやすくなりました。
⚠️ ここは2つの枠を混ぜると必ず分からなくなります。売ってもその年の年間の枠(つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円)は戻りません。戻るのは翌年以降の、1,800万円のほうの空きです。使わなかった年間の枠を翌年に繰り越すこともできません。年をまたぐ仕組みが、そもそも条文に用意されていないためです。
🧾 iDeCoの「1年」は、1月から始まりません
iDeCoの掛金の額は1年に1回だけ変えられます。ここで言う1年が曲者でした。暦の1年ではなく、12月分から翌年11月分までの12か月を1つの区切りとしています。掛金の月で数えれば12月分から翌年11月分、それを納める月で数えれば1月から12月。同じ期間を、どちらの月で呼ぶかの違いです。回数を数えるのは、掛金の月のほうです。
そしてこの「1年に1回」の根拠は、法律の条文そのものではありませんでした。確定拠出年金法のほうは「規約で定めるところにより決定し、又は変更する」とだけ書いていて、「1回に限る」と決めているのは政令と、それを受けた個人型年金規約です。同じ記事の中に、法律で決まっている期限と、政令と規約で決まっている期限が並んでいる。どちらも守らないと困るのは同じですが、変わるときの変わり方が違います。
そしてもう一つ、手続きの重さが、進む向きによって釣り合っていません。
| やりたいこと | 必要な手続き |
|---|---|
| 額を変える | 変更届を出す。12月分から翌年11月分のあいだで1回だけ。会社の掛金が変わったことによる自動的な減額は、この回数には数えません |
| 拠出を止める | 加入者資格喪失届を1枚。これで掛金を出さない状態になります |
| また出し始める | 加入申出書を出し直します。公式の案内には「改めて加入者となる手続きが必要」とあり、つまり新しく入るときと同じです |
※ 変更が実際に反映されるまでの期間は、公式には示されていませんでした。ネット上には具体的な月数を書いたものがありますが、公表資料では確認できなかったため、ここには書きません。
止めるのは1枚、戻すのは入り直し。この非対称は、家計が苦しくなったときに「とりあえず止めよう」と考える場面で効いてきます。額を下げるだけなら年1回の変更で済むのに、いったん止めてしまうと、戻すときは新規加入と同じ手続きになる。同じ「やめる」でも、額を下げるのと止めるのとでは、後戻りの重さが違いました。
もう一つ、掛金をまとめて出す「年単位」のやり方は、企業型の確定拠出年金に入っている人は選べません。公式サイトに明記があり、政令の側でも、企業型DCの加入者などは月ごとに出す方法だけと定められています。会社員向けの解説で紹介されていることがありますが、勤め先に企業型DCがある人には使えない選択肢です。
払込証明書が、年末調整に間に合わないことがあります
iDeCoの掛金は全額が所得控除になりますが、そのためには国民年金基金連合会から届く払込証明書が要ります(給与から天引きで納めている人は、そもそもこの手続きが不要です)。この証明書は例年10月下旬に一括で発送され、その年に途中から始めた人には、あとから順に追加で発送されます。
問題はその年の12月に初めて払込があった人です。直近の年の実績では、この区分の発送は翌年1月下旬でした。年末調整には物理的に間に合いません。ただし取り戻せなくなるわけではなく、確定申告をすれば還付されます。還付だけの申告なら、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。間に合わなかったから損をする、ということではありません。
⏳ 日付は決まっていないのに、放っておけないもの
最後に、カレンダーには載らないものを2つ。「買ったあと」を考えるなら、こちらのほうが大事かもしれません。
1つめは、持っているファンドのほうが先に終わることがあるという話です。投資信託の交付目論見書には、途中で運用をやめる場合の条件が書いてあります。実物を読んでみると、条件は「純資産総額が◯円を下回ったら」ではありませんでした。典型的なのは「受益権の口数が◯億口を下回ることとなった場合」という書き方です。ほかに、連動している指数が無くなったときなども挙げられています。
| 年 | 新しく設定 | 償還(終了) | 年末の運用中の本数 |
|---|---|---|---|
| 2017年 | 523本 | 431本 | 6,152本 |
| 2020年 | 311本 | 432本 | 5,913本 |
| 2023年 | 406本 | 381本 | 5,913本 |
| 2024年 | 316本 | 453本 | 5,776本 |
| 2025年 | 346本 | 347本 | 5,775本 |
| 2026年1〜6月 | 189本 | 128本 | 5,836本 6月末 |
※ 契約型の公募投資信託。運用中の本数は2017年末の6,152本がピークで、いまは5,800本台です。直近は2026年6月末までに61本増えていますが、ピークは超えていません。償還の本数には、別のファンドと一つにまとめられて消えたものも含まれます。またこれは公募投信の全体の数字であり、つみたて投資枠で買えるような低コストのインデックス投信がこの割合で終わっている、という意味ではありません。
2017年から2025年までは、毎年300本を超えるファンドが終わっています(多い年は450本を超えます。表の最後の行は半年ぶんの数字です)。数として珍しいことではない、ということです。ここは値段を見に行く話ではなく、自分が持っているものがまだ続いているかを確かめる話なので、性質が違います。
2つめは、その知らせが届く形が変わってきていることです。運用の結果をまとめた交付運用報告書は、よく「年に1回届く」と説明されますが、正確には「決算のたび」です。年1回決算のファンドなら、結果として年に1回になります。ただし、決算が6か月より短い間隔で来るファンド(毎月決算型など)では、報告書が6か月に1度にまとめられます。つまりどんなファンドでも、多くても年2回です。毎月決算だから毎月届く、ということにはなりません。
さらに2025年4月から、この報告書は紙で渡すかわりに電子的な方法で提供してよいことになりました(欲しい人が請求すれば交付されます)。「年に1回、封筒が届くから、それを見ればいい」という前提そのものが、崩れつつあります。ちなみに、実際に引かれた費用の割合をまとめた総経費率が載るようになったのは2019年9月からで、これは法律ではなく業界団体の自主的なルールにもとづく参考情報という位置づけです。
なお、iDeCoや企業型DCでこれから買うものの割合を変えたり(配分変更)、持っているものを入れ替えたり(スイッチング)する手続きは、掛金の額の変更と違って、年1回といった回数の縛りはかかっていません。ただし法律が保証しているのは「少なくとも3か月に1回はできること」までです。実際にはネットからいつでもできる会社が多いのですが、「何回でも、いつでも」と法律が決めているわけではありません。回数の扱いは規約や運営管理機関によって違うことがあり、入れ替えのときに費用がかかる商品もあります。だからこれは「年に1回の作業」ではなく、暮らしのほうが変わったときにするものだと考えたほうが、素直だと思います。
🏦 ついでに、よく誤解されるところを一つ。証券会社や運用会社が破綻しても、信託財産は運用会社や販売会社とは別に、信託銀行が分けて管理することが法律で義務づけられています。ただし「守られる」というのは、返してもらえるという意味であって、値下がりを埋めてもらえるという意味ではありません。投資者保護基金という制度もありますが、そもそも分けて管理されていれば基金の出番はなく、値下がりによる損失は対象外だと明記されています。
📅 これから日付が変わるもの(決まっていますが、まだ先の話です)
・2026年12月1日:iDeCoなどの掛金の上限が変わります(会社員は企業年金と合わせて月62,000円。専業主婦・主夫の方などは月23,000円のままです)。あわせて、2027年11月30日までのあいだにかぎり、上限が上がったぶんを増やす変更は「年に1回」の数に入れない、という取り扱いが厚生労働省の通知で示されています(上限が変わらない人は、この扱いの対象になりません)
・2027年1月1日:つみたて投資枠が0歳から17歳も対象になります(年60万円・限度額600万円)
・2027年1月1日:防衛特別所得税が新設され、復興特別所得税の割合が下がります。入れ替わるだけなので、利益にかかる20.315%は変わりません
※ いずれも公布済みの確定事項です(法律・政令のほか、掛金の特例は省令と厚生労働省の通知によります)。上の日付の表は2026年8月時点のものなので、混ぜないように分けて書いています。
🙋 私には「年に1回」という区切りがありませんでした
この記事を書きながら、自分はどうしているだろうと考えてみました。答えは「年に1回というものが、そもそも無い」でした。決算期でも年末でもなく、私が数字を見る日は、自分が買った日です。
投資信託は毎月買っていますし、日本の高配当株のほうは買いたい銘柄が出てきたときに買うので、こちらは決まった日がありません。自分で作った管理用のシートに買ったものを書き足していくので、そのときに評価額と損益が目に入ります。見にいっているというより、記帳のついでに見えているという感じです。
ついでに正直なことを書いておくと、その数字に何も感じないわけではありません。プラスになっていれば単純に嬉しいですし、マイナスのときも、落ち込むことはありません。ただ、モヤっとした気持ちが一瞬よぎります。気にならないとはいえ、そこは人間なので消えません。ただ、そこで売り買いの手が動くことはないというだけの話です。
だから今回、締切の表を作ってみて、いちばん腑に落ちたのは私自身でした。「年に1回見なきゃいけないのに見ていない」と思っていたわけではないのですが、見る対象がずっと値段の側にあると思い込んでいたのは確かです。私の場合、締切があったのはいつも手続きの側でした。それなら、私がカレンダーに書き込むとしたら、手続きのほうです。
比率を戻す作業についても、私は必ずやるものだとは考えていません。投資に回しているのは当座の暮らしと切り離したお金なので、その中で比率が動いても、生活が揺らぐわけではないからです。ただ、そう思えない人がいるのも当然だと思います。現金の割合が減っていくのが落ち着かなくて、そわそわしてしまう。そういうときに比率を戻すのは、成績を良くするための手というより、投資を続けるための手として、十分に理由があると思っています。私が要らないと感じることと、誰にとっても不要であることは、別の話です。
📝 まとめ
- 🔍「個人は年に1度」と勧めていた公的な記述は実在しますが、そのページは2024年6月で更新が止まっています。事業は2024年8月に別の機関へ移り、引き継いだ側の現行教材と金融庁の現行教材には、「リバランス」という言葉が出てきませんでした(この記事で調べた7点の範囲)。ただし言葉が消えたことは、否定されたことを意味しません。勧めていた当の記述自身も「常にプラスに働くとは限りません」と留保をつけています。
- 🏛GPIFは比率を戻していますが、理由が家計とは違います。離れてよい幅は資産ごとに定められていて(それぞれプラスマイナス6%・5%・6%・6%、債券どうし・株式どうしをまとめるとプラスマイナス9%)、頻度は公表されていません。GPIF自身が理由として挙げているのは「お預かりしている資金が巨大であること」と、市場に与える影響への配慮です。
- 📈積立を始めて1年目に比率が動くのは、値動きのせいではなく、積み立てているからです。年率5%と仮定した試算では、1年後に投信と現金が27対73になります。現金は1円も動かしていません。また「1本ならファンドが戻してくれる」が当てはまるのはバランス型で、全世界株のインデックスは戻すべき比率がそもそもありません。結論は似ていても理由は別です。
- 📮NISA口座を置く会社を変えられるのは9月30日までで、しかもその9月30日は2つあります。いまの会社への届出と、新しい会社への提出が、同じ日を期限にしています。あいだの手続きに「概ね1週間程度」かかると案内されているので、9月30日は動き出す日ではありません。その年にもう買っていると、その年は変更できません(売っただけなら該当しません)。
- 🗓売った枠が戻るのが翌年なのは、法律が12月31日時点の金額しか見ていないからです。1,800万円の判定に使う金額が「同年の前年十二月三十一日に」受け入れている購入代金と定義されています。その年の年間の枠は戻りませんし、使わなかった枠を翌年に繰り越すこともできません。
- 🧾iDeCoの「1年」は12月分から翌年11月分で、「1回に限る」と決めているのは法律の条文そのものではなく、政令と規約です。そして止めるのは届出1枚、また出し始めるのは新規加入と同じ手続きになります。掛金をまとめて出す年単位のやり方は、企業型DCに入っている人は選べません。控除証明書は例年10月下旬に発送されますが、その年の12月に初めて払い込んだ人は、直近の年の実績では翌年1月下旬で、年末調整には間に合いません(確定申告で還付を受けられます)。
- ⏳ファンドのほうが先に終わることもあります。公募投信は2017年から2025年までの各年で300本を超えるファンドが償還され(多い年は450本を超えます)、運用中の本数は2017年末の6,152本をピークに、いまは5,800本台です。約款の条件は純資産総額ではなく受益権の口数です。そして知らせが届く形も変わりつつあり、交付運用報告書は「年に1回」ではなく「決算のたび」。ただし決算の間隔が6か月より短いものでは、報告書が6か月に1度にまとめられ、多くても年2回です。2025年4月からは電子的な提供も可能になりました。
この記事を書く前は、「年に1回、何を点検すればいいか」の一覧を作ることになるだろうと思っていました。比率を確かめて、ずれていたら直す。そういう手順の話になるはずでした。
調べ終えて残ったのは、少し違うものでした。点検すべき値段のリストではなく、日付のリスト、つまりカレンダーでした。しかもその日付は、1年に1回どこかでまとめて見る、という形にはなっていませんでした。1月1日に起きることと、9月30日に締め切られることと、3月15日までにすることは、全部別の予定です。値段のほうは、いつ見ても手続きが発生しません。締切があるのは、いつも手続きのほうでした。
いちばん手が止まったのは、「個人は年に1度」と書いてあるページのいちばん下に、「2024年6月以降、コンテンツの内容を更新していません」と添えられていたところでした。書いてある中身が間違っているという話ではありません。ただ、自分がどこかで覚えた「常識」の出どころを辿っていくと、時計の止まった場所に着くことがある。それが分かっただけでも、調べた価値がありました。言葉が消えたからといって、間違いだったと決めつけるのも、それはそれで早とちりです。分かったのは「いまの教材には載っていない」というところまでで、そこから先は書けませんでした。はっきりしていたのはカレンダーのほうでした。9月30日も、1月1日も、こちらの気分とは関係なく、毎年同じ場所にありました。
・証券口座はどこで開けばいい?(口座を置く場所を変えるときの話)
・投資の利益にかかる税金、結局いくら引かれる?(申告と損益通算のこと)
・投資信託の手数料、結局いくら引かれてる?(総経費率と運用報告書の話)
・日経平均が1,000円動いた日、初心者がやるべきこと(値段を見た日にできること)
・毎月いくら積み立てればいい?(額を決め直したくなったときに)
・経済用語辞典(記事に出てくる言葉をまとめています)
以下の法令および一次資料で照合して作成しています(すべて2026年8月15日に取得)。
- 租税特別措置法および同法施行令(現行版のほか、2027年1月1日施行版の条文を比較)、所得税法、確定拠出年金法および同法施行令、投資信託及び投資法人に関する法律および同法施行規則、投資信託財産の計算に関する規則
- 国税庁タックスアンサー No.1474・No.1476・No.2030(いずれも令和7年4月1日現在法令等)
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品の概要について」(2026年8月10日時点)、「基礎から学べる金融ガイド」(2023年12月版)、「NISA早わかりガイドブック」(2023年7月版)
- 日本証券業協会「2024年以降のNISAに関するQ&A」(2025年9月)、および同協会が制作し金融経済教育推進機構へ移管された「投資の時間」Q&A・用語集(2024年6月以降更新停止)
- 金融経済教育推進機構「資産形成ハンドブック」「金融リテラシー・マップ」(2023年6月版)「標準講義資料(若年層社会人向け・60分モデル)」(2025年9月)
- 国民年金基金連合会「個人型年金規約」(令和8年4月更新)、「各種変更届について」、控除証明書の発行スケジュール、厚生労働省年金局長通知(令和8年6月30日)
- 資産運用業協会「投資信託及び投資法人に係る運用報告書等に関する規則」(令和7年2月20日改正)、「投資信託の主要統計等ファクトブック」(2026年6月)、月次統計「投資信託の全体像」、「投資信託Q&A100選(基礎編)」
- 年金積立金管理運用独立行政法人「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて」(2025年3月31日)、「2025年度業務概況書」
- 日本投資者保護基金の案内、投資信託の交付目論見書(使用開始日2026年7月25日)
【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や特定の手法の利用を推奨するものではありません。また、投資助言を行うものでもありません。本記事で示した日付は制度の側の期限であり、実際の手続きの締切は金融機関ごとに前倒しで設定されていることがあります。試算に用いた年率は計算のための仮定であって、将来の運用成果を示すものではありません。統計は各機関が公表した時点の数字であり、その後の状況を示すものではありません。制度・数値は2026年8月15日時点で確認できた法令・規約および公表資料にもとづきますが、法令も税制も変更されることがあります。実際の手続きや判断は、ご利用の金融機関および公式の案内をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。


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