💴 昨夜ドル円が50分ほどで5円近い円高、一時157円台|日経・時事が「政府・日銀が円買い介入、米NY連銀はレートチェック」と報道、ただし当局の確認はなし/7月30日の日経平均は433円高で3日ぶり反発、でも上げ幅より1銘柄の押し上げ660円のほうが大きい
📅 為替介入報道・日本株・米国株・米GDP・PCE・日銀 / 今日の経済用語「年率換算(前期比年率)」 / 今日の昼に日銀の結果、15時30分から植田総裁の会見(復帰後初)
おはようございます、お金バイバイマンです。今朝いちばん先に書くべきなのは、株ではなく為替のほうでした。昨夜22時に1ドル=162.95円だったドル円は、22時30分過ぎに162円80銭近辺から急ピッチで下がりはじめ、50分ほどの間に安値157.98円をつけました。この間の下げ幅は4円82銭です。157.98円は5月14日以来、およそ2カ月半ぶりの円高水準です(日本経済新聞と時事通信は「一時157円80銭」と伝えており、情報源によって少し差があります)。ユーロ円も同じ夜に186.94円から183.21円へ、3円73銭動いています。
そして今朝、報道が一段進みました。日本経済新聞(31日5時26分)と時事通信(同6時14分)が、市場関係者の話として「政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切り、あわせてアメリカのニューヨーク連邦準備銀行が『レートチェック』を実施した」と報じています。レートチェックとは、当局が金融機関に「いまの相場はいくらか」と照会する行為で、実際の売買はともないません。介入の前段階と受け止められる動きです。報道のとおりだとすれば、日米が足並みをそろえて円安の抑制に動いた形になります。ただし、財務省・日本銀行・米財務省のいずれも、この記事を書いている時点で介入を公式に認めていません。ですからこの記事でも「介入した」とは断定せず、「報道各社が市場関係者の話として伝えた」「介入とみられる動き」という書き方をします。
もうひとつ、今日の昼には日本銀行の金融政策決定会合の結果が出ます。15時30分からは植田総裁の記者会見です。一日の値幅が5円76銭にもなった翌日に、金融政策の会合がある——という並びになりました。もうひとつ、昨夜21時30分にはアメリカの4〜6月期GDPと6月のPCE物価指数も出ています。GDPは前期比年率+1.5%で、市場予想(+2.0〜2.1%)を下回りました。今日の経済用語は、この「年率」のほうから「年率換算(前期比年率)」を選びました。+1.5%という数字は、4〜6月の3カ月で1.5%増えたという意味ではありません。ここは毎回まぎらわしいので、記事の後半でくわしく解説します。
🇯🇵 日本株式市場(7/30木 終値・日経平均は3日ぶり反発、TOPIXは反落)
一時+1,490円まで上げていた
日経平均とは逆の方向
財務省の確定値は7/29=2.757%
昨日の東京市場は、日経平均が+433.24円(+0.71%)の61,867.43円で3日ぶりの反発でした。7/28に2,566円安、7/29に930円安と2日で3,500円ほど下げたあとの、戻りの一日です。ただ、この日も指数の中身はねじれていました。同じ日、TOPIXは−0.54%で反落。東証プライムの騰落は値上がり534銘柄に対して値下がりが993銘柄で、変わらずが28銘柄。値下がりのほうが2倍近く多いのに、日経平均だけがプラスで終わったということです。昨日の記事(7/29の相場を扱ったもの)とちょうど反対の形になりました。あの日は日経平均が930円安でTOPIXがプラス、値上がり銘柄のほうが2倍多い、という日でした。同じ仕組みが、2日連続で逆向きに効いたことになります。
一日の流れも見ておきます。始値は61,258.34円で、前日の終値(61,434.19円)より約176円安く始まりました。前日のニューヨークでダウが1,153ドル安と大きく下げていたので、その流れを受けた寄り安です。安値は61,049.70円で、始値からさらに約209円下げた水準です。そこから買われて高値は62,924.84円。前日終値から一時+1,490円まで上げました。前引けの時点でも+784.22円です。ところが上値は続かず、終わってみれば+433.24円。高値からは1,057円、前引けの時点からでも351円を削られた形です。売買代金は12兆6,645億円でした。なお、高値と安値がついた時刻は、今回どの情報源でも確認できなかったので書きません。
買われた材料は2つです。ひとつめはアドバンテストの決算。7月29日の取引終了後に業績の上方修正を発表し、翌30日の株価は+10.8%上昇しました。半導体の検査装置をつくる会社なので、ここが上方修正すると、AI向けの投資はまだ続いているという受け止めになります。ふたつめが韓国サムスン電子の好決算です。ただし、ここは時間の書き分けが要ります。30日の朝に発表されたサムスンの決算は四半期として過去最高の売上高・営業利益で、韓国のKOSPIは一時5%を超えて上昇しました。半導体の比率が高い指数なので、東京の日経平均もこの日、上げ幅を一時+1,490円まで広げていました。ところが韓国株は昼にはマイナスへ転じ、KOSPIの終値は5,593.56で−1.23%。サムスン電子自身も日中は8%を超えて上げながら、終値は−0.72%でした(SKハイニックスは−5.64%)。つまり「韓国株高が反発材料」だったのは前場までで、終値で見れば韓国株は下げています。東京も、前引けの+784.22円から終値の+433.24円へ、後場だけで351円ぶん削られています。この2つを反発の理由に挙げていたのは、日経新聞と株探の大引け記事です。おとといは韓国のSKハイニックスの決算が「予想に届かない」と受け止められて東京の半導体株まで巻き込まれ、昨日はサムスンが逆に効いた——2営業日のあいだに、隣の国の決算で答えが2回ひっくり返ったことになります。
業種別に見ると、上昇率が高かったのは電気機器・その他製品・非鉄金属・精密機器・鉱業の順でした。反対に下落率が大きかったのは証券・商品先物取引業、銀行業、その他金融業、水産・農林業、空運業です。金融の3業種が並んで下位に来ているのは目を引きますが、その理由をはっきり書いた大引け記事は見つけられませんでした。日銀の会合を控えた持ち高の調整、という以上のことは書かないでおきます。ひとつだけはっきりしているのは、昨夜の円急騰は日本時間の22時以降の出来事で、東京市場が終わった(大引けは15時30分)ずっとあとだということです。銀行株が売られたことと為替の急変を結びつけて読みたくなりますが、時間の順番が合いません。円が動いたことへの東京市場の答えは、今日これから出ます。
国内の長期金利は上がりました。新発10年物国債の利回りは、7月30日の15時時点で2.795%(前日の同じ時点と比べて+0.050%)。取引時間中には一時2.805%をつけています。ここは時点の書き分けが必要な部分です。財務省が公表する確定値は、7月29日分の2.757%までしか出ていません(7月30日分は本日31日の午前9時30分頃に公表される予定です)。ですからカードに載せた2.795%は財務省の確定値ではなく、15時の引けが明示された日経の値です。数字を並べるときは、どの時点の・どこが出した数字なのかを一緒に書かないと、翌日には自分でも分からなくなります。
※終値ベースで表記(土日・祝日は休場のため含みません。7/20は海の日で休場のためデータがありません)。この12営業日では、7/15の68,751円が期間高値、7/29の61,434円が期間最安値で、最終日の7/30はそこから433円戻したところです。期間の始点7/14(67,743.50円)と比べると水準は約5,876円・8.67%低く、期間高値の7/15を基準にすると10.01%の下げになります。同じチャートでも、基準にする日を変えれば下落率は変わります。折れ線を青にしたのは最終日が反発だからで、期間の水準そのものは切り下がったままです。各営業日の終値は複数の情報源で照合した確定値で、前日比は終値から計算し直しています。
📌 注目ポイント:アドバンテスト1社で660円。それでも指数は433円しか上がっていない
変わらずは28銘柄
数字を並べると、昨日の指数の正体がはっきりします。日経平均を押し上げた1位はアドバンテストで、約+660円ぶん。ところが日経平均の上げ幅は433.24円です。1銘柄の押し上げが、指数全体の上げ幅を約227円も上回っている。ということは、残りの224銘柄をぜんぶ合わせると、指数を押し下げる側にまわっていたことになります。TOPIXが−0.54%だったことも、値下がり銘柄が993と値上がりの約1.9倍だったことも、この計算とちゃんと揃います。押し上げの2位以下は東京エレクトロン(約+225円)、TDK(約+33円)、ファナック(約+27円)、キオクシアホールディングス(約+26円)。押し下げ側はファーストリテイリング(約−153円)、ソフトバンクグループ(約−96円)、コナミグループ(約−29円)、KDDI(約−23円)、リクルートホールディングス(約−19円)でした。
面白いのは、上位5社の顔ぶれです。アドバンテスト・東京エレクトロン・TDK・ファナック・キオクシアホールディングスは、東証の業種分類でいずれも「電気機器」。5社そろって同じ業種というのは、そう毎日あることではありません。おととい(7/29)の押し下げ上位5社にはソフトバンクグループ(情報・通信業)が混じっていて、ひとまとめにできませんでした。昨日は上げ側がきれいに揃ったことになります。いっぽう押し下げ側は、ファーストリテイリングが小売業、ソフトバンクグループとコナミグループとKDDIの3社が情報・通信業、リクルートホールディングスがサービス業。上げ側のようには揃いませんでした。ここでいつもの話に戻ります。日経平均は225銘柄の株価をならした指数なので、1株の値段が高い銘柄ほど重く効きます。だから値段の張る1社が大きく上がると、市場の6割超が下げていても指数はプラスで終わります。「日経平均が433円高」と「昨日の東京市場は買われた」は、同じことを言っていません。私はこの2日間で、それを上下ひっくり返した形で2回見た気がしています。
📊 昨夜21時半の米GDPとPCE:成長は予想より弱く、物価は方向として鈍化
1〜3月期は+2.1%
予想(+2.3%)を上回る
総合は+3.7%(5月+4.1%)
まずGDPから。アメリカの4〜6月期の実質GDPは前期比年率+1.5%で、市場予想(+2.0〜2.1%。調査機関で割れているので幅で書きます)を下回りました。1〜3月期は+2.1%でしたから、伸びは落ちています。ひとつ断っておくと、昨日の記事では、GDPについて発表前の集計として「+2.3%前後」と紹介しました。今日使っているのは、発表のあとに各社が「市場予想」として報じた値です。事前の集計は時点によって動くので、どちらを基準にするかで下振れ幅の見え方も変わります。
ただ、中身を開けると印象がかなり変わります。個人消費は前期比年率+3.2%で、1〜3月期の+0.5%から大きく加速しました。企業の設備投資や住宅などを含めた民間国内最終需要は+3.9%(前期は+1.7%)です。ではなぜ全体が+1.5%にとどまったのか。BEA(米商務省 経済分析局)の発表資料で、1〜3月期から伸びが鈍った理由として挙げられているのは、政府支出が減ったことと、設備投資と輸出が、水準は高いまま前期より伸びを落としたことです。輸出は+4.5%へ、設備投資は+8.4%へ。それでも民間の内需全体が加速して見えるのは、いちばん割合の大きい個人消費が+0.5%から+3.2%へ跳ねたからです。そして政府支出の減少については、BEA自身が「主な要因は戦略石油備蓄の売却であり、これはGDP全体に直接の影響を与えるものではない」と注記しています。景気が冷えて政府が支出を絞った、という話ではないということです。見出しの+1.5%だけを見て「アメリカの景気が弱くなった」と読むと、消費が+3.2%へ加速した事実と噛み合わなくなります。GDPと同時に出る物価の指標では、四半期のPCE価格指数が前期比年率+5.1%(1〜3月期は+4.6%)、食品とエネルギーを除いたコアが+3.4%(同+4.4%)でした。
同じ21時30分に、6月のPCE物価指数も出ました。こちらはFRBが物価を見るときの本命の指標です。総合は前年比+3.7%(予想+3.7%、5月は+4.1%)、コアは前年比+3.3%(予想+3.3%、5月は+3.4%)。ここも昨日の記事では総合の予想を「+3.6%前後」と紹介していましたが、発表時に報じられた予想は+3.7%でした。前月比では総合が−0.1%(5月は改定後+0.5%)、コアが+0.1%(予想+0.2%、5月は+0.3%)でした。前年比でも前月比でも、総合・コアの4つとも前月より伸びが落ちています。方向としてははっきり鈍化です。ただし、方向と水準は分けて読む必要があります。FRBが「2%」と言っているのは総合のPCEに対してで、その総合がまだ+3.7%。目標の1.85倍です。ここは私が7月に、2%の目標が総合なのかコアなのかを取り違えたことがあるところなので、繰り返し確認しておきます。水準(まだ高いか)と方向(前より鈍ったか)は、どちらか片方だけを見ると逆の結論になります。下がってきている、けれどまだ高い。この2つは同時に成り立ちます。
この数字が出たのは、昨日未明のFOMCで3人が「0.25%の利上げをすべきだ」と反対票を投じた、その日の夜です。物価が方向として鈍っているという結果は、その3人にとっては向かい風にあたります。いっぽうで水準は目標の倍近い。ウォーシュ議長が会見で言っていた「5年を超える目標超えのインフレは、9週間では治らない。1カ月ぶんの小幅な値下がりでも治らない」という言葉は、そのまま今回にも当てはまる形になりました。市場の答えを見ると、米10年債の利回りは4.67%から4.68%へ+1bp(+0.01%)で、ほとんど動いていません。2年も30年も同じく+1bpです。「成長が弱くて物価も鈍ったのだから金利は下がったはず」と書きたくなるところですが、実際には債券市場はほぼ反応していません。動いたのはドルのほうでした。その話は、米国株のあとにまとめます。
🇺🇸 米国株式市場(7/30木 終値・マイクロソフトが15%高、ナスダックは+2.78%)
前日の1,153ドル安から反発
6日続落のあと反発
アメリカの株式市場は3指数そろって反発しました。前日はダウが1,153.18ドル安(−2.19%)と、2025年4月以来でいちばん大きな下落率を記録した日でしたから、その翌日の切り返しです。ナスダック総合は6営業日続けて下げたあとの+2.78%。主役ははっきりしていて、マイクロソフト1社です。株価は451.10ドルで+60.56ドル、率にして+15.51%。7月29日の取引終了後に発表した決算で、クラウドサービスのAzureの年間売上が1,000億ドルを超えたことが伝わりました。1日の上昇率としては2008年以来、時価総額の1日あたりの増加額としては過去最大だと報じられています。同社はダウの構成銘柄でもあります。ただし、この1社がダウを何ドル押し上げたかという寄与度の数字は、今回どうしても確認できませんでした。ダウは1株の値段をならす指数なので、60ドルを超える上昇が重く効いたことは間違いないのですが、「◯◯ドル押し上げた」という書き方は今日はしません。読者の方が電卓を叩いて合わない数字は、載せないほうがいいと思っています。
半導体も大きく戻しました。SOX指数は+8.19%(11,303.0)。前日が−5.33%で5日続落でしたから、その反動です。個別ではマイクロン・テクノロジー+18.36%、AMD+13.00%、インテル+11.30%、エヌビディアが+2.6%(195.04ドル)でした。クラウドの会社が「AIへの支出は続く」と決算で示すと、その支出の受け取り手である半導体の会社が買われる——という、ここ数カ月なんども見た流れです。いっぽうで、メタ・プラットフォームズは−8.0%(539.03ドル、−46.58ドル)と逆に下げました。同じく7月29日の取引終了後に決算を出した会社です。昨日の記事で私は、メタについて「株価は時間外で一時9%台後半(−9.64%)まで下げました」、マイクロソフトについて「時間外では7%前後の上昇」と書きました。ふたを開けると、メタの下げはそれより少し浅く、マイクロソフトの上げは倍以上でした。時間外の値は、翌日の通常取引でそのまま確定するとは限らない、ということです。
原油は反落しました。WTIの9月限は1バレル83.59ドルで清算され、前日から0.87ドル安・−1.03%です。前日(7/29)は中東での攻撃の応酬を受けて+6.56%と急騰した日でしたから、その翌日に少し戻した形になります。理由として挙げられているのは、外交による解決への期待です。ここ2週間ほど、原油は中東のニュースひとつで上下に大きく振れています。数字を追いかけるより、まだ落ち着いていない、という程度に受け止めておくのがちょうどいい気がします。金(ゴールド)は反発しました。COMEXの中心限月である12月物は、前日比63.6ドル(1.6%)高の1トロイオンス4,160.6ドルで取引を終えています。ドルが対円で急落したことが買いを誘いました。この数字は最初、情報源によって100ドルほど食い違って見えて出せずにいたのですが、原因は限月の違いでした。期近の8月物は4,065.70ドル(+27.00ドル)で、どちらも正しい数字です。金の値段を比べるときは、まず限月をそろえる。
💴 為替:ドル円は一時157円台、終値でも3円88銭の円高|日経・時事が「政府・日銀が円買い介入、NY連銀はレートチェック」と報道(当局の確認はなし)
この日の高値163.74・安値157.98
この日の高値187.44・安値182.13
安値からは少し戻したところ
昨夜の動きを時刻で並べます。22時にドル円は162.95円。24時には159.28円。この2時間で3円67銭の円高が進みました。ただし24時は安値から戻したあとの値なので、これは「2つの時点を結んだ差」です。下げが集中したのは22時30分過ぎからの50分ほどで、その間に162円80銭近辺から157.98円まで、4円82銭動いています。そのあと4時には158.93円、朝にかけて159円台へ少し戻しています。この日の高値は163.74円、安値は157.98円で、一日の値幅は5円76銭。安値の157.98円は、5月14日以来およそ2カ月半ぶりの円高水準です。ここは書き分けが必要なところで、157.98円はあくまで取引時間中につけた安値です。ニューヨーク市場の終値は159.53円で、前日の終値163.41円から3円88銭・率にして約2.4%の円高でした。ユーロ円も同じ時間帯に186.94円から183.21円へ3円73銭動き、安値は182.13円(5月6日以来)、終値は183.91円で、前日の187.38円から3円47銭の円高です。ドルに対してもユーロに対しても、同じ時間帯に、ほぼ同じ幅だけ円が買われたという形になります。
なぜこの書き分けが大事かというと、「ドルが売られたから円高になった」のか「円が買われたから円高になった」のかで、意味がまったく違うからです。昨夜は、ドルが売られやすい地合いがまず先にありました。FOMCのあとの会見を受けて、市場では利上げに慎重な姿勢だと受け止める見方が広がっていたこと。そこにアメリカのGDPが予想を下回ったことが重なり、ドルの総合的な強さを示す指数は6月17日以来の安値まで下げています。ただ、ドル安だけではユーロ円が3円73銭も下がる理由になりません(ドルが弱いだけなら、円とユーロは両方買われて、ユーロ円はそこまで動かないはずです)。ドルにもユーロにも同時に円高が進んだこと、しかも50分ほどという短い時間に集中したこと——この2つから、市場では「政府・日本銀行による為替介入があったのではないか」という見方が広がり、今朝になって日本経済新聞と時事通信が、市場関係者の話として「政府・日銀が円買い・ドル売りの介入に動いた」と報じました。あわせてアメリカのニューヨーク連邦準備銀行がレートチェックをしたことも伝えられています。ただ、それでも「介入だけが理由だ」と書いている媒体は、私が見た範囲では見当たりません。ドル売りの地合いのなかに、介入とみられる大口の円買いが重なった、という順番で読むのが正確だと思います。
ここで、報道と事実の距離をはっきりさせておきます。日経も時事も、書いているのは「市場関係者の話で分かった」であって、当局の発表ではありません。財務省・日本銀行・米財務省のいずれも、この時点で介入を認めても否定してもいません。片山さつき財務相の閣議後の記者会見も、この記事を書いている時点ではまだです。報道が「観測」から「関係者の話」へ一段進んだのは確かですが、当局の確認という最後の一段はまだ残っています。日本の場合、実際に介入があったかどうかは、財務省が月に一度公表する「外国為替平衡操作の実施状況」でしか確かめられません。ここで日付をはっきりさせておきます。財務省が出している公表予定によると、今日7月31日の午後7時にもその公表がありますが、対象になっているのは6月29日から7月29日までの分です。昨夜7月30日の動きは、この回には入りません。7月30日分が入るのは8月28日(金)午後7時の公表(対象期間は7月30日から8月26日)です。つまり答え合わせは、およそ1カ月先になります。じつは今年の4月にも、同じことがありました。4月30日の夕方にも介入とみられる動きがあり(このときも当局はその場では認めていません)、その日に公表された分の対象期間は4月27日までで、金額は0円。11兆7,349億円という数字が実際に出たのは、約1カ月後の5月29日の公表でした。ただし、そこで分かるのは4月28日から5月27日までの総額だけです。どの日にいくら実施したかが分かるのは、さらに先の四半期ごとの公表になります。市場が「介入だ」と受け止めたことと、介入があったことは、別々の事実です。前者はもう起きていて(値段がその通りに動いた)、後者は今の時点では誰にも確認できません。
家計から見た話も、ひとつだけ書いておきます。円高は、輸入するものの値段には下向きに効く方向です。ただ、一日の値幅が5円76銭にもなるような相場は、その効き方が読めません。値段に反映されるまでには時間もかかりますし、そもそもこの水準が続くのかどうかも分かりません。私は「円高になってよかった」とも「まずい」とも、今日の時点では思っていません。今日の時点では、慌てて何かを決めるつもりもありません。
🗓️ 今日の焦点:朝に日本の指標、昼に日銀、15時半に植田総裁の会見
結果は今日の昼ごろ
会見は15時30分から
そのあと鉱工業生産
今日の本番は昼です。日本銀行の金融政策決定会合の結果が、昼ごろに公表されます(日銀は公表の時刻を事前に決めていないので、これ以上は絞れません)。植田和男総裁の記者会見は15時30分からです。日銀の政策金利は、1カ月半前の6月15〜16日の会合で0.75%程度から1.00%程度へ引き上げられました。これは約31年ぶりの高さです。ですから今日の焦点は「上げるか」ではなく、6月に上げた分がどう効いているかを、どう説明するかのほうになります。私が見た範囲では、日経QUICKの「日銀ウオッチャー調査」で回答したエコノミストの全員が今回は据え置きを予想していました。理由もそろっていて、前回の利上げの影響をもう少し見極める段階だ、というものです。次の利上げの時期については12月を挙げる人がいちばん多く、10月がそれに続いています。金利先物などから計算した織り込みでは、7月28日の時点で9月28.2%・10月79.4%・12月98.5%という数字が紹介されていました。
ここで、今日の会見を見るうえで欠かせない前提をひとつ足しておきます。その6月の会合に、植田総裁はいませんでした。6月9日に検査入院し、そのまま治療のため入院しています(日本銀行の発表は10日)。1998年に新しい日本銀行法が施行されて以降、在任中の総裁が通常の決定会合を欠席したのは初めてでした。議長は氷見野良三副総裁が代行し、会合後の記者会見は内田真一副総裁が行っています。利上げの採決は総裁を除く8人で行われ、結果は7対1の賛成多数。反対したのは浅田統一郎委員で、その向きは「据え置きを主張」=利上げに慎重な側でした。植田総裁は6月23日に職務へ復帰していますが、会合と会見としては今日が復帰後はじめてです。つまり今日の15時30分は、自分がいない場で決まった利上げについて、本人がはじめて説明する場でもあります。私が今日の会見を、いつもより一段気にしているのはここです。
ここでひとつ、先回りして書かないでおきたいことがあります。「全員一致で据え置き」と決めつけないことです。日銀は9人の政策委員の多数決で決めますが、高田創委員と田村直樹委員が利上げを求めて反対に回る可能性がある、という見方が事前に出ています。もしそうなれば、6月とは逆向きの反対ということになります(6月の反対は「据え置きを」でした)。昨日未明のアメリカのFOMCがまさに9対3で、結論は据え置きでも中身は割れていました。結論の1行より、票の内訳のほうに中身が詰まっていることがある——というのは、昨日の記事で経済用語に「反対票」を選んだときに書いたとおりです。今日の昼は、私も金利の数字より先に票の内訳を探すつもりでいます。もうひとつの見どころが展望レポート(経済・物価情勢の展望)です。年4回、1月・4月・7月・10月の会合で公表される見通しで、今日がその回にあたります。事前の報道では、2026年度と2027年度の成長率の見通しがAI関連の需要を背景に上方修正されるいっぽう、2026年度の物価の見通しは電気・ガスの支援策の影響で小幅に下方修正されるという見方が出ていました。そして今日にかぎっては、会見で植田総裁が昨夜の円の急騰について何を語るかが、いちばん注目されるところだと思います。
日銀の前に、日本の経済指標も固まって出ます。朝8時30分に6月の完全失業率(予想2.5%・前回2.5%)、6月の有効求人倍率(予想1.17倍・前回1.17倍)、そして7月の東京都区部の消費者物価。8時50分に6月の鉱工業生産(前月比+0.9〜1.0%の予想・5月は+0.1%)です。注目は都区部のCPIで、6月は生鮮食品を除くコアが前年比+1.6%、総合が+1.7%、生鮮とエネルギーを除いたコアコアが+1.9%と、3つとも5月から伸びが拡大していました(5月は順に+1.3%、+1.4%、+1.6%)。7月のコアは+1.7〜1.8%が予想で、さらに伸びが拡大する見込みです。ひとつ補足すると、いまの都区部CPIには保育所の保育料が前年比−100.0%(総合への寄与度は−0.49ポイント)という、無償化にともなう大きな押し下げが効いています。この押し下げがある状態で+1.7%台なのだ、と思って見ると、数字の重みが少し変わります。全国の数字ではなく東京の数字ですが、全国に先立って出るので、日銀が物価をどう見るかを考えるうえでは毎月よく見られています。
年率換算(ねんりつかんさん/前期比年率)
年率換算とは、3カ月ぶんの伸びを「このペースが1年続いたらどうなるか」に引き伸ばした数字のことです。アメリカのGDPは、この形で発表するのが決まりになっています。ですから昨夜の「4〜6月期の実質GDPは前期比年率+1.5%」は、4〜6月の3カ月で1.5%増えたという意味ではありません。実際の3カ月ぶんの伸びは約0.37%で、発表元である米商務省の経済分析局(BEA)自身も、発表資料に「四半期ベースでは0.4%」と併記しています。計算のしかたにも決まりがあって、3カ月ぶんの伸びを4乗します(単純に4倍するのではありません)。BEAの公式Q&Aにも、四半期の伸びを4四半期ぶん複利で計算する式がそのまま載っています。
- GDPそのもの:4〜6月期の実質GDPは、1〜3月期と比べて0.3729%増えました。この0.3729%を4乗して1年ぶんに引き伸ばすと+1.50%になります。電卓で1.003729を4回かけ合わせれば1.0150です。「1.5%成長」の正体は、この0.37%です。
- ほかの項目も全部この形:同じ発表のなかの個人消費+3.2%も、民間国内最終需要+3.9%も、輸出+4.5%も設備投資+8.4%も、すべて年率です。3カ月ぶんの実際の伸びは、どれもこれよりずっと小さい数字になります。
- 物価も同じルール:GDPと一緒に出るPCE価格指数の+5.1%(1〜3月期は+4.6%)は、「前の年より5.1%高い」ではありません。4〜6月の3カ月の上がり方を1年ぶんに引き伸ばした数字です。毎月発表されるPCEの前年比(6月は総合+3.7%)とは別物です。私は、この2つを同じ表に並べないようにしています。
- 「このペースが続いたら」は、あくまで仮定:年率は、3カ月の結果に「もし1年続いたら」という仮定をかぶせた数字です。実際に1年続くかどうかは誰にも分かりません。私は年率の数字を見たとき、頭のなかでざっくり4で割って、3カ月ぶんの大きさに戻してから受け取るようにしています(正確には4乗の逆算ですが、この程度の伸びなら4で割ればだいたい合います)。そのほうが、いちいち驚かずにすみます。
- ブレも一緒に引き伸ばされる:4乗するので、四半期のわずかな上下が年率では大きく見えます。「+2.1%から+1.5%へ減速」と書くと大ごとに聞こえますが、3カ月ぶんに戻すと0.52%が0.37%になった、という差です。0.15ポイントの違いが、年率では0.6ポイントの違いに見えている、ということでもあります。どちらが嘘というわけではありませんが、受ける印象はずいぶん変わります。
- 速報値はあとで動く:アメリカのGDPは、速報値(advance estimate)→改定値(second estimate)→3次推計(third estimate)の3段階で発表されます。日本では3番目を「確定値」と呼ぶことが多いのですが、BEA自身は「最終(final)」という言い方をしていません。今回の分は8月26日と9月30日に更新され、しかも9月30日は年に一度の年次改定と同じ日です。BEAの過去の実績では、速報値から3次推計までに平均0.6ポイントほど動いています。だから私は、速報の1回目でいろいろ結論を出さないようにしています。
昨日の夜、寝る前に見たときのドル円は162円台でした。朝、起きて画面を開いたら157円台をつけたあとの159円台。「見ていないあいだに5円動く」というのを、久しぶりに見た気がします。おかしなもので、こういうときに私がまずやったのは、自分の口座を開くことではなく、時刻の並んだ表を探すことでした。22時に162.95円、24時に159.28円。1時間足らず、という短さのほうに驚いたというのが正直なところです。世間では「介入だ」という受け止めが一気に広がりましたし、そう読むのが自然な動き方だとも思います。市場がそう受け止めたことと、実際にそうだったことは、今日の時点ではまだ別の話です。私はここを分けておきたい性分で、たぶん来月の財務省の公表まで、答え合わせはできません。
そして今日の昼に日銀です。介入とみられる動きがあった翌日に、金融政策の会合がある——というのは、なかなか見ない巡り合わせだと思います。私は昼に結果だけ見て、票が割れたかどうかを確かめて、それで一日を過ごすつもりです。15時半の会見は、たぶん全部は見ません。私の家計に効いてくるのは、買い物の値段と住宅ローンの金利で、そこに出てくるのは半年か1年かけてです。今日ボタンを押して間に合わせるようなものではない。ただ、そう言い切れるようになるまでには、それなりに時間がかかった気もします。金曜日です。日銀の結果と会見の中身は、明日の土曜版で1週間ぶんとあわせて整理します。
📊 昨日の総括と、今日の焦点
本記事の数値・統計・要人発言は、以下の公式・準公式ソースを2つ以上で照合して作成しています。
- 米商務省 経済分析局(BEA)— 4〜6月期GDP速報と6月のPCE物価指数の原資料
- 米財務省 Daily Treasury Par Yield Curve(米国債2年・10年・30年の利回りと変化幅)
- 日本銀行 公式サイト(政策金利・会合日程・展望レポートの公表回)/財務省(国債金利情報・外国為替平衡操作の実施状況の公表スケジュール)
- 総務省統計局(東京都区部 消費者物価指数)
- 日本取引所グループ(JPX)・日経マーケットデータ・株探(日経平均の四本値・TOPIX・騰落銘柄数・寄与度・業種別)
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。「政府・日銀が円買い介入」「NY連銀がレートチェック」は、日経・時事が市場関係者の話として伝えた内容で、日米の当局はいずれも公式に確認していません。為替は7月30日のニューヨーク終値、高値・安値は取引時間中の値です。「7月31日6時10分ごろ」の値は執筆後に変動します。米国債利回りは米財務省の公表値(米東部時間15時30分が基準)、日本国債の2.795%は7月30日15時の市場の値(財務省の確定値は7月29日分=2.757%)。原油はNYMEX9月限、金はCOMEXの清算値。米GDPは速報値、伸び率は前期比年率です。騰落率は終値ベース(「一時」等と記した値を除く)、寄与度は概算値。発表日程は変更される場合があります。


コメント