トヨタが通期の見通しを上方修正、1兆円の自社株買いも。それでも株価は下げました|上乗せした4,000億円の中身は「想定為替レートを160円に置き直した分」、実勢はもう157円台です/8月4日の日経平均は202円高でも、東証プライムで下がった銘柄は上がった銘柄の1.4倍

2026年8月4日にトヨタ自動車が2027年3月期の通期見通しを上方修正した一方、株価は1.52%安で終えたことを伝える、お金バイバイマン経済ニュースの平日版アイキャッチ画像。上乗せした営業利益4,000億円の中身は想定為替レートを1ドル150円から160円へ置き直した分で、8月4日の実勢は157円台後半。8月4日の日経平均は202円高の63,957円、その夜のNYダウは初の54,000ドル台。
DAILY MARKET NOTE · 2026.08.05(水)

🚗 トヨタが通期の見通しを上方修正、1兆円の自社株買いも。それでも株価は下げました|上乗せした4,000億円の中身は「想定為替レートを160円に置き直した分」、実勢はもう157円台です/8月4日の日経平均は202円高でも、東証プライムで下がった銘柄は上がった銘柄の1.4倍

日本株・米国株・為替・金利・商品/熊本地震のその後/今日の焦点は23時の米ISM非製造業|今日の経済用語「想定為替レート」

想定為替レート トヨタ決算 日経平均 熊本地震

おはようございます、お金バイバイマンです。昨日の記事で、今日のトヨタの決算では会社側が熊本地震の影響をどう説明するかを確かめておきたい、と書きました。その答え合わせから始めます。結論から言うと、会社は「反映されていない」としています。

🚗 トヨタの決算:4〜6月期は営業減益、なのに通期の見通しは上方修正されました

8月4日14時、トヨタ自動車が2027年3月期の第1四半期(4〜6月期)決算を開示しました。数字を並べると、少し不思議な形をしています。

4〜6月期 営業収益
13兆5,254億円
▲ +1兆2,720億円(+10.4%)
4〜6月期 営業利益
1兆634億円
▼ −1,026億円(−8.8%)
営業利益率7.9%(前年同期9.5%)
通期 営業利益の見通し
3兆4,000億円
▲ 前回予想から+4,000億円
ただし前期比では約1割の減益

売上にあたる営業収益は10.4%増えているのに、営業利益は8.8%減りました。売上が1兆2,720億円ふくらんで利益が1,026億円減っているので、増えたぶんの原価や費用のほうが大きかったことになります。営業利益率は前年同期の9.5%から7.9%へ、1.6ポイント下がりました。

それでいて通期の見通しは引き上げられています。営業収益は51兆円から54兆円へ、営業利益は3兆円から3兆4,000億円へ、純利益は3兆円から3兆2,500億円へ。ここは読み間違えやすいところなので念のため書いておくと、上方修正は「前回の自社予想より良くなる」という意味であって、前の年より増えるという意味ではありません。営業利益3兆4,000億円は、前期と比べれば約1割の減益です。上方修正と減益は同時に成立します。

📌 注目ポイント:上乗せした4,000億円の正体は、為替の前提を置き直した分でした

では何が良くなったのか。会社は想定為替レートを1ドル=150円から160円へ、1ユーロ=180円から181円へ、円安の方向に置き直しました。期初に置いた前提より円安で推移したので、前提のほうを実態に合わせた形です。この見直しによる営業利益の押し上げは4,800億円とされています(日本経済新聞・ブルームバーグ)。上方修正した4,000億円を、800億円ほど上回っています。裏返せば、為替以外の要因は差し引きで800億円ぶんのマイナスだったことになります。

ただし、ここは会社の言い分も並べて書いておきます。トヨタは同じ資料に「為替・スワップ等の影響を除けば+600億円」と注記しています。さきほどのマイナス800億円と符号が逆ですが、引いている中身が違います。マイナス800億円は「為替だけ」を引いた数字で、会社のプラス600億円は「為替とスワップ等」をまとめて引いた数字です。差の1,400億円ぶんは、スワップ等がマイナスに効いている計算になります。実際、通期の連結販売台数の見通しは960万台から970万台へ10万台引き上げられています(北米と欧州が好調で、ハイブリッド車の需要が強いことが理由)。中東情勢による打撃も通期で5,100億円と見込みつつ、前回の見通しからは1,600億円改善したとしています。上乗せの大半が為替の前提の置き直しで説明できてしまうのは事実ですが、事業そのものが縮んでいるわけではありません。

ここで昨日の経済用語「為替感応度」がそのまま効いてきます。報道各社によれば、トヨタは対ドルで1円の円安が営業利益を約500億円押し上げるという水準です(1円あたりいくら、という数字まではトヨタの開示資料で確認できなかったので、報道にもとづく数字として書いています)。この数字を使うと、今回の修正の中身が自分で確かめられます。置き直した幅は10円、10円×500億円=5,000億円。会社が示した為替の押し上げ4,800億円と、ほぼ重なります。逆に言えば、今回の上方修正は、為替の前提を動かした分だけで説明がついてしまう——どころか、為替だけなら4,800億円のはずが、上方修正は4,000億円にとどまっているということです。

そして、8月4日の実勢は157円台後半です。会社が置いた160円より、すでに2円ほど円高の側にいます。同じ感応度をあてはめれば、この2円は1,000億円ぶんの押し下げにあたる規模ですが、ここは計算どおりに起きる話ではありません。会社の前提は1年の平均として置かれていますし、4〜6月期の実績はすでに確定していますし、そもそも報道されている500億円がどの期間に対する感応度なのかを、私は確認できていません。あくまで桁を掴むための計算です。ただ、先週末に日米が協調して円買い介入をした直後に、円安前提へ置き直した見通しが出てきた——という位置関係だけは、はっきりしています。

もうひとつ、記事にしておきたいことがあります。熊本地震による生産への影響は、この通期見通しに反映されていません。会社は「熊本地震で生産に影響が出ているが、その影響は今回の通期業績見通しには反映されていない」と説明しています(Car Watch)。昨日の記事で確かめておきたいと書いた点への答えが、これでした。影響がないという話ではなく、まだ数えられていないという話です。止まっている拠点がいつ戻るかが決まっていない以上、そうなるのは自然だと思いますが、この見通しには「これから入ってくる減額要因」が残っている、という読み方は必要だと思います。

なお、営業利益とは逆に、4〜6月期の純利益は1兆4,770億円で、前年同期比75.6%増と大きく伸びています。営業利益(1兆634億円)を上回っているのは、営業外の損益が前年同期の860億円から9,003億円へ、8,143億円ふくらんだからです。トヨタは決算説明会の質疑で、この9,003億円の中身を「豊田自動織機株式の売却で大体6,000億円ほど」「3,000億円が海外事業体が保有しているドル資産の為替差益」と説明しています。足すと9,000億円で、ほぼ全額がこの2つです。つまり本業の儲けではなく、株の売却益と為替の評価差が押し上げた部分です。来期も続く種類の利益ではありません。

💰 同じ日に、上限1兆円の自社株買いと2億株の消却も発表されています

決算と同じ日に、株主還元の発表も出ています。自己株式の取得枠を1兆円(上限5億株・自己株式を除く発行済株式の4.22%)設定し、取得期間は2026年8月5日から2027年8月4日まで。あわせて2億株(発行済株式総数の1.37%)を消却するとしています(取得枠の4.22%は自己株式を除いた株数が分母、消却の1.37%は自己株式を含めた総数が分母なので、割合の出し方が違います)。自社株買いは発行済の株数を減らして1株あたりの利益を押し上げる方向に働くので、ふつうは株価を支える材料とされます。

株価のほうは、8月4日の終値が2,918.5円、前日比45.0円安(−1.52%)でした。開示は14時、大引けは15時30分ですから、1時間半ほど取引時間が残っていて、この下げは決算を見たあとの動きを含んでいます。上方修正に1兆円の自社株買いまで乗せて、それでも下げた形です。理由を断定できるほどの材料は持っていませんが、上乗せの中身が為替の前提の置き直しだったことと、その前提より実勢が円高に振れていることは、少なくとも読者が自分で確かめられる事実として並んでいます。

🇯🇵 日本株式市場(8/4火 終値・1日ぶり反発、ただし下がった銘柄のほうが多い一日)

日経平均株価
63,957.53
▲ +202.63円(+0.32%)
1日ぶり反発
TOPIX
3,961.78
▲ +1.75pt(+0.04%)
日本国債10年利回り
2.8%台
8/3の終値は2.820%(日本相互証券)
8/4は入札低調で一時2.861%・確定値は8/5午前

8月4日の日経平均は63,957.53円、202.63円高(+0.32%)で1日ぶりに反発しました。ただ、この日も終値だけ見ていると中身を取り違えます。

四本値は、始値63,995.28円、高値64,240.50円、安値62,864.43円、終値63,957.53円。安値は前日比で890.47円安にあたり、日本経済新聞は「800円あまり下落する場面もあった」と書いています。前引けは63,333.35円(421.55円安)。つまり寄り付きこそ240円あまりのプラスで始まったものの、そこから売られて前引けはマイナス、後場に切り返して終値でプラスに乗せたという流れです。始値からいったん1,130円ほど下げて、そこから戻したことになります。(高値と安値がついた時刻は確認できませんでした。)

そして、ここが今日いちばん書いておきたい点です。東証プライムの内訳は、値上がり629・値下がり902・変わらず26。数のうえでは、下がった銘柄が上がった銘柄の約1.4倍ありました。指数は日経平均もTOPIXも上がっているのに、です。TOPIXにいたっては+1.75ptで上昇率0.04%、ほとんど動いていないに等しい水準でした。売買代金は10兆2,837億円です。

日経平均の寄与度を見ると、押し上げの上位5銘柄が合計で約415円(東京エレクトロン、キオクシアホールディングス、フジクラ、イビデン、京セラ)、押し下げの上位5銘柄が合計で約344円(ソフトバンクグループ、アドバンテスト、ファーストリテイリング、TDK、コナミグループ)。上位10銘柄を差し引きすると約71円の押し上げにしかならず、指数の上げ幅202.63円には届きません。残りの215銘柄で約130円ぶん押し上げた計算になります。ここは昨日と同じで、「差し引きで見るか、押し上げ分だけで見るか」で景色が変わります。押し上げ分だけを取れば上位5銘柄で415円ぶんあり、指数の上げ幅の2倍です。ただ差し引きで見るかぎりは、指数を押し上げたのは上位に出てこない銘柄のほうだったことになります。なおこれは日経平均の225銘柄の中の話で、東証プライム全体では下がった銘柄のほうが多い——という二層構造なので、混ぜないほうがいいと思います。

複数の市況解説で共通して挙がっていた要因は2つでした。ひとつは前日のアメリカのハイテク株高で、AI・半導体・データセンター関連が買われて指数を支えたこと。もうひとつが「これから円高が進むのではないか」という警戒で、日本経済新聞は「円安修正で車・商社売り」と書いています。協調介入を受けて先行きの円高を警戒する動きが、自動車や商社の重しになりました。ここは少しややこしいのですが、この日のドル円そのものは、朝方より円安の側で推移しました(レンジは157円18銭〜157円96銭)。動いた向きと、株式市場が身構えた向きが、逆だったことになります。

NIKKEI 225 · 直近12営業日(7/17→8/4)
日経平均 直近12営業日チャート 2026/7/17〜2026/8/4 7月23日66,423円の期間高値から、熊本地震のあった7月28日と29日の下落で61,434円まで下げ、円買い介入が伝わった7月31日に64,362円へ急反発、8月3日は63,755円へ反落し、8月4日は202円高の63,958円で1日ぶりに反発した推移 67,000 66,000 65,000 64,000 63,000 62,000 61,000 7/23 66,423 期間高値 7/29 61,434 最安値 8/4 63,958 ★1日ぶり反発 7/17 7/22 7/24 7/28 7/30 8/4

※終値ベース。7月20日(月)は海の日で休場のため営業日から除いています。

🇺🇸 米国株式市場(8/4火 終値・ダウが初の54,000ドル台、S&P500も最高値/原油はさらに5.7%安)

NYダウ
54,085.88
▲ +907.47ドル(+1.71%)
終値で最高値・初の54,000ドル台
S&P500
7,736.52
▲ +136.02pt(+1.79%)
終値で最高値(6/2以来)
NASDAQ総合
26,584.99
▲ +671.09pt(+2.59%)
3指数で最も上げたが最高値ではない

ニューヨークは3指数そろって大幅高で、NYダウは907.47ドル高の54,085.88ドル。初めて54,000ドルに乗せ、終値としての最高値を更新しました。前日8月3日にも693.38ドル高で最高値を更新していたので、2日続けての更新です。S&P500も7,736.52で、6月2日以来の最高値終値となりました。

⚠️ ここは分けて書きます。最高値を更新したのはダウとS&P500の2つで、ナスダック総合は違います。この日いちばん上げたのはナスダック(+2.59%)でしたが、水準は26,584.99で、6月2日につけた27,093.90にはまだ約500ポイント届いていません(各社が「終値で最高値」と報じたのも、ダウとS&P500の2つについてです)。「上昇率がいちばん大きい」と「最高値を更新した」は別の話で、同じ日に両方の見出しが並ぶと混ざりやすいところです。

上げた理由として複数の解説で共通して挙がっていたのは、ホルムズ海峡をめぐる協議が近く合意に至るのではないかという期待でした。ベッセント米財務長官がCNBCで「今日か明日にも合意の可能性がある」と述べたことが直接の引き金です。これを受けて原油が一段と下げ、リスクを取る動きが強まりました。個別では、Palantirが約3割高と2年超ぶりの大幅高になり、四半期の売上が200億ドルを超えたキャタピラー(ダウ構成銘柄で、1株の値段も高い銘柄です)が指数を押し上げています。フィラデルフィア半導体指数は6%高でした。

⚠️ ただし、この「期待」には裏づけの弱さがあります。イラン外務省の報道官は「米国とは交渉していない」と明言していて、ホルムズ海峡の通航確保についてはオマーンとの協議で進めているという立場です(AFP)。アラグチ外相はそのオマーンとの協議が「最終段階」だとしていますが(日本経済新聞)、報道官は協議は航路のルートに関するもので、封鎖されている海峡を開放するかどうかは別の問題だとも言っています。合意したのではなく、合意への期待で買われた——この区別は、昨日と同じく今日も必要だと思います。

💴 為替・金利・商品(8月5日 朝 JST時点)

USD/JPY(ドル円)
157円台後半
8/5 6:20 JST時点で157.75〜157.80円
8/4のレンジは157.18〜157.96円
EUR/JPY(ユーロ円)
181円台後半
8/5 6:38 JST時点で181.94円
米国債10年利回り
4.614%
前日の4.68%台から約7bp低下
8/5 5:49 JST時点(日経)

為替は、介入でつけた円高の水準から2円以上戻したところにいます。8月3日の東京で一時155円20銭台まで進んだ円高は、その夜のニューヨークで157円台に戻り、8月4日はアジア時間に157円66銭あたりまで上値を伸ばして、17時時点でも157円台後半(時事通信)。ニューヨークの序盤に157円96銭まで買われたところが頭で、そこからベッセント米財務長官の円をめぐる発言(中身は後で触れます)が重しになり、157円50銭台に押し戻されています。1日を通してのレンジは157円18銭〜157円96銭で、値幅は80銭ほど。先週末からの荒れ方を思えば、落ち着いた一日でした。

なお、8月4日のニューヨーク終値については、6時台に出る相場クローズの記事を今朝は取れていません。ザイFX!(トレーダーズ・ウェブ配信)の4時時点がドル円157円65銭、ユーロ円181円81銭で、おおむね157円台後半・181円台後半で引けたという書き方にとどめておきます。ここを1銭単位で断定できるほどの裏は、今朝の時点では取れていません。

金利は、アメリカの10年債利回りが4.614%へ、前日の4.68%台から約7bp低下しました。株が最高値を更新した日に長期金利が下がるのは、原油安でインフレの心配が薄れたからだと説明されています。金利が下がった=利下げが近い、と読みたくなるところですが、そういう話ではありません。これは利上げへの警戒がゆるんだということです。アメリカの政策金利は3.50〜3.75%で、7月末の会合では3人の地区連銀総裁が利上げを主張して反対票を投じています。日本の長期金利のほうは、日本相互証券が公表している8月3日の終値が2.820%。8月4日分はまだ出ていないので、8月5日午前の公表を待つことになります(財務省の確定値のページには、今朝はアクセスできませんでした)。

ただ、確定値が出ていなくても、8月4日に何があったかは分かります。この日の10年国債の入札が低調でした。応札倍率は2.56倍(応募5兆624億円に対し、実際に落札されたのは1兆9,791億円)で、日本経済新聞は「2025年5月以来の低さ」と伝えています。落札価格の最低と平均の差(テール)も46銭(最低98円46銭・平均98円92銭)に開きました。買い手が少なければ価格は下がり、価格が下がると利回り(金利)は上がります。入札前は8月3日の終値2.820%より少し低い2.78%台にいましたが、そこから一時2.861%まで上昇しています(みんかぶ)。同じ時間帯に為替も振れましたが、それを入札の結果だと説明していた記事は、私が見た範囲では1社だけでした。因果までは言えないので、同じ時間帯に動いた、という事実だけ置いておきます。

商品はWTI原油先物の9月限が清算値75.77ドル(前日比−4.57ドル・−5.7%)と、2日続けて5%超の下落になりました。取引時間中には75.16ドルまで下げ、期近物として約3週間ぶりの安値です。NY金先物の12月限は清算値4,152.60ドル(+62.10ドル・+1.5%)で反発。アメリカの長期金利が下がって、利息を生まない金の相対的な不利が薄れたためと説明されています(日本経済新聞)。

🏘️ 令和8年熊本地震のその後(発生から1週間・工場は再開が進みましたが、まだ全部ではありません)

7月28日に起きた令和8年熊本地震について、亡くなられた方に心よりお悔やみを申し上げます。被災された方々にお見舞い申し上げます。

発生から1週間となった8月4日16時30分時点で、亡くなった方は38人(災害との関連を調査中の方を含みます)。負傷者は重傷18人・軽傷109人、住家の被害は全壊699棟・半壊1,045棟・一部破損5,920棟で、避難している方は7,500人あまりとされています。一部破損は昨日書いた5,540棟から380棟ほど増え、全壊は700棟から699棟へ1棟減りました。負傷者は123人から127人へ。調査が進んで集計が組み替わっている段階で、災害の初期は増える方向にも減る方向にも動きます。

昨日の記事で「高市首相が激甚災害に指定する方針を表明した」と書きました。そのあとの動きを補っておきます。激甚災害の指定は、8月4日には閣議決定されていません。NHKは8月4日23時すぎの時点で「政府は今週7日にも『激甚災害』への指定を閣議決定する方向で調整」と伝えています。地域を限定しない「本激」とする方向という話は変わっていません。指定の閣議決定は、方針の表明(8月3日)から4日ほど置かれた形です。

一方、同じ8月4日の閣議で決まったものもあります。昨日「今日8月4日の閣議で予備費200億円超の支出が決まる見通し」と書いた件は、実際に決定されました。総額は242億円で、内訳は災害復旧に206億円(九州自動車道などの橋の復旧を含みます)、プッシュ型の物資支援に24億円(水や食料品、段ボールベッド、スポットクーラーなど)、救助業務の支援に12億円(応急仮設住宅の提供など)。木原官房長官が記者会見で明らかにしています。

生活への影響では、九州新幹線の熊本〜鹿児島中央が、8月中の運行再開は難しいとされています。九州自動車道など複数の区間で通行止めが続き、日本郵便やヤマト運輸の配送も止まったり遅れたりしている地域があります。

🏭 熊本の工場は動き出しました。ただし九州の外では、止まる期間が延びています

昨日と同じく、再開したところと止まっているところを両方書きます。ただ今日は、もう1つ書かなければいけないことがあります。8月4日、ホンダが埼玉と三重の四輪車の工場について、停止を8月19日まで延ばすと発表しました。この3拠点が止まること自体は8月3日に伝えられていて(当初は8月7日まで)、昨日の記事では私が書ききれていませんでした。今回の発表は、その止まる期間がさらに延びたという内容です。

▼ 8月4日に発表された、ホンダ四輪工場(九州の外)の停止延長
  • 埼玉製作所(埼玉県寄居町・小川町):8月5日〜19日
  • 鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市/N-BOXなど):8月6日〜19日
  • ホンダオートボディー(三重県四日市市):8月6日〜19日

あいだの8月8日〜16日は夏季休業なので、実際に増えたのは17日〜19日の3日間です。理由は「部品の安定調達のめどが立たない」(ホンダ公式サイトの8月4日更新版)。
※日本経済新聞・共同通信は、ホンダ本体の埼玉・鈴鹿の2製作所を挙げています。ホンダオートボディーは、公式サイトに並べて記載されている関連会社です。

熊本でいくつかの部品工場が止まると、福岡や愛知や埼玉や三重の完成車工場が止まる。先週から続いていたその構図が、今週さらに一段伸びたということになります。以下は、昨日の整理をその後の動きで更新したものです(すでに通常の稼働に戻っている三菱電機 熊本と東京エレクトロンは省いています)。再開の話だけ並べると「熊本は戻った」と読めてしまうので、そこは今日も分けます。

▼ 8月4日に動き出した/すでに動いている拠点
  • ソニーセミコンダクタ 熊本テクノロジーセンター(菊陽町/画像センサー):8月4日から段階的に操業を再開しました。昨日は「予定」としか書けませんでしたが、再開したことが確認できています。震災前の水準に戻るのは8月中旬の見込み
  • ルネサス 川尻工場(熊本市南区):8月5日の予定を1日前倒しして、8月4日に再開
  • JASM(TSMC熊本第1工場):8月4日から段階的に再開し、8月中旬に震災前の水準へ戻る見通し。昨日は「完全復旧の時期は未定」と書きましたが、見通しが立った形です
  • ルネサス 錦工場(球磨郡錦町):7月29日に再開済み
  • アイシン九州(熊本市南区):7月31日に一部部品の生産テストを始め、順次再開へ。今回、完成車工場を止めているドア部品の供給元です
  • 三菱自動車:再開へ(時事通信)
▼ まだ止まっている拠点
  • ホンダ 熊本製作所(大津町・国内で唯一の二輪車の生産拠点):8月7日まで停止。そのあと8月8日〜16日が夏季休暇にあたるため、生産が戻るのは実質8月17日以降になります。四輪の埼玉・三重は上のとおり8月19日まで
  • トヨタ:トヨタ自動車九州の宮田(福岡県宮若市)・苅田(同京都郡苅田町)・小倉(同北九州市)の3工場が8月5日まで田原工場(愛知県田原市)が8月7日まで停止と発表されています
  • 日産:福岡県の2拠点が8月5日まで(同じく部品が届かないため)
  • アステモ宇城(二輪・四輪向けの焼結部品):人的被害があり損傷も大きく、再開時期は未定のままです

※トヨタの福岡3工場と日産の2拠点は「8月5日まで」という発表以降の続報を、今朝はつかめていません。予定どおり動き出したかは今日の続報待ちです。

半導体の工場は、1週間で「未定」が「8月中旬」に変わりました。一方でアステモ宇城は、昨日から状況が変わっていません。ここは人的被害のあった拠点です。そして完成車のほうは、止まる期間がむしろ延びています。先ほどのトヨタの決算が「その影響は今回の通期業績見通しには反映されていない」としているのは、まさにこの、まだ底が見えていない部分のことです。

🗓️ 今日の焦点:23時の米ISM非製造業と、弱かった昨夜の米指標

昨夜アメリカで出た指標は、3つとも予想を下回るか、弱い内容でした。6月の貿易収支は733億ドルの赤字(予想730億ドルの赤字)、6月のJOLTS求人件数は735.9万件(予想747.0万件・前回759.4万件。予想は昨日「750.0万件」と書きましたが、集計元によって差があります)、6月の製造業新規受注は前月比−0.3%(予想+0.2%)。JOLTSは求人の数を見る統計で、8月7日の雇用統計の前哨戦として見られています。株が最高値を更新した日に、労働需要のほうは弱まって見えた、という並びでした。

今日の最大の材料は日本時間23時に出る、7月の米ISM非製造業景況指数です。市場予想は54台半ば、前月は54.0でした。おとといの製造業(55.6・約4年ぶりの高水準)に続いてサービス業も強ければ、利上げへの警戒がまた強まる可能性があります。アメリカの経済の7割前後はサービス業なので、こちらのほうが規模としては大きい指標です。

為替をめぐっては、8月4日に片山財務相とベッセント米財務長官がオンラインで会談しています。片山財務相は「必要とあれば断固たる措置を取ることをお互いにしっかり合意している」と述べました(TBS NEWS DIG)。ベッセント長官はブルームバーグに対し「問題なのは円の水準だ」「円相場の安定は米国だけでなくアジア地域全体にとって極めて重要」と述べています。介入の翌週も、当局が言葉のほうを出し続けている状態です。

日本側が実際にいくら使ったのかは、財務省の公表を待つことになります。予定は2段階です。まず8月7日(金)8時50分に、4月〜6月分の日次データ。ただしこれは4〜6月が対象なので、今回の7月末の介入は入りません。7月30日深夜(日本時間)の分と7月31日、そして観測の出ている8月3日の分が対象に入るのは、8月28日(金)19時に出る月次のほう(対象期間は7月30日〜8月26日)です。ただしそこで出るのは期間の合計額だけで、どの日にいくら使ったかの内訳は、さらに四半期ごとの日次公表を待つ必要があります(いずれも財務省の公表予定表。予定は変更されることがあります)。

中央銀行の会合は日米ともに今月はありません。日銀の次回会合は9月17・18日(政策金利は6月16日の会合で0.75%から1.0%に引き上げられ、7月31日の会合では据え置かれています)、FOMCは9月15・16日です。日米とも市場が織り込んでいるのは利下げではなく利上げで、日本については協調介入を受けて9月の利上げを見込む向きが増えていると伝えられています(ブルームバーグ)。

📖 今日の経済用語

想定為替レート(そうていかわせレート/Assumed Exchange Rate)

想定為替レートとは、会社が1年間の業績見通しを立てるときに「1ドルは何円として計算するか」と置いた前提のことです。海外で稼ぐ会社の売上や利益は、円に直すときのレート次第で金額が変わってしまうため、見通しを出すには何らかの前提を置くしかありません。トヨタは2027年3月期の前提を期初に1ドル=150円と置いていましたが、実際には円安で推移したため、8月4日の決算発表で160円へ置き直しました。この見直し(1ユーロ=180円から181円への変更も含みます)で、営業利益の見通しが4,800億円ぶん増えています。昨日の「為替感応度」が1円動いたらいくら変わるかを表す数字だとすれば、想定為替レートはその計算の出発点をどこに置いたかにあたります。2つはセットで見る数字です。

▼ 押さえておきたい3つの視点
  • 会社の予想であって、相場の予想ではありません:想定レートは経理上の前提で、その会社が「これから円はこうなる」と予測して発表しているものではありません。保守的に置く会社もあれば、実勢に寄せる会社もあります
  • 実勢とのズレの向きを見る:前提より円安が続けば見通しは上振れやすく、前提より円高が続けば下振れやすくなります。トヨタの前提160円に対して、8月4日の実勢は157円台後半でした
  • 置き直したときは、増えた利益の中身を確かめる:前提を円安に見直せば、事業が何も変わらなくても円換算の利益は増えます。上方修正のニュースを見たときは、それが売れたからなのか前提を変えたからなのかで、意味がまったく違います

▶ 「想定為替レート」をたとえ話と図解でもっとくわしく読む(経済用語辞典)

💬 お金バイバイマンからの一言

「上方修正」という言葉の見出しだけが流れていくのを見ていて、少し引っかかっていました。中身を開けたら、為替の前提を150円から160円に置き直した分だけで4,800億円。上乗せした4,000億円より、むしろ大きいくらいでした。しかも同じ日に、1兆円の自社株買いまで出しています。会社が悪いという話ではありません。前提を実態に合わせるのは当たり前の作業ですし、そう書いてある資料をそのまま出しています。ただ、見出しになる言葉と、その中身の距離は、けっこうあるものだなと思いました。

世間では「決算が良ければ株は上がる」という受け止めが自然だと思いますし、私もそう考えるほうが多いです。ただ昨日は、上方修正と1兆円の自社株買いを出した会社の株が1.5%下げていて、しかも置き直した前提の160円より、実勢はもう2円ほど円高の側にありました。数字が出そろっているのに、どっちに転ぶかは分からない。こういうときに私ができるのは、置かれている前提を確かめて、それだけメモしておくことくらいです。今日も特に何もしません。

📊 8月4日の総括

日本株
1日ぶり反発
202円高。ただしプライムでは下がった銘柄が1.4倍
米国株
ダウが54,000ドル台へ
ダウとS&P500が最高値、ナスダックは違う。原油−5.7%
トヨタ
上方修正+自社株買いでも下落
上乗せ4,000億円の正体は想定レート160円への置き直し(為替だけなら+4,800億円)
📚 参考にした一次情報源

本記事の主要な数値・統計・要人発言は、以下の公式・準公式ソースを2つ以上で照合して作成しています。個別の報道にもとづく数値・発言(トヨタの為替感応度、要人の発言、寄与度や騰落銘柄数の集計など)は、本文中にその都度、媒体名を明記しています。

  • トヨタ自動車 — 2027年3月期 第1四半期 決算短信・決算説明資料・説明会Q&A(2026年8月4日開示)
  • 総務省消防庁 — 令和8年熊本地震(8月4日16時30分現在)
  • 財務省 — 10年利付国債(第383回)の入札結果/日本銀行・米連邦準備制度理事会(FRB)— 政策金利および会合日程
  • 日本経済新聞(電子版)
  • CMEグループ(NYMEX/COMEX)— WTI原油9月限・金12月限の清算値(8月4日)

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。為替は取得時刻を記載したリアルタイム値で、変動します。8月4日のニューヨーク終値は一次記事を取得できておらず幅で記載しています。日本国債10年利回りは確定値が日本相互証券の8月3日終値までのため幅表記で、8月4日の場中の値は情報サイトの表示にもとづきます。商品は清算値(settle)・限月を明記しており、時間外の値とは異なります。トヨタの為替感応度(1円あたり約500億円)は開示資料の中に該当する数字を見つけられず、報道にもとづく数値です。熊本地震の被害は8月4日16時30分時点で、続報により変わります。発表日程は変更されることがあります。

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この記事を書いた人

「お金バイバイマンの経済ニュース」運営者。

月曜から土曜の毎朝、日経平均・米国株・為替などマーケットの動きを「なぜ動いたのか」まで追いかけて、図解つきでやさしく解説しています。"今日の経済用語"コーナーでは、ニュースに出てくる言葉を1日1語ずつ深掘り中。気づけば用語辞典は70語を超えて、いまも増え続けています。

じつは昔、SNSのキラキラした投資情報に憧れて、情報商材を買ってしまったことがあります。遠回りの末にたどり着いたのが「長期・分散・積立でコツコツ」。相場が荒れた日も、合言葉は「今日も何もしません」です。

朝の意見コラム『今朝の経済、私はこう見る』は、noteで平日の毎朝、連載しています。

好きなものは、お酒・サウナ・食べ歩き。経済ニュースも、それくらい気軽な習慣にしてもらえたら嬉しいです📈

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