はじめに:NISA後の「次の一手」としての考え方
投資信託の eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) にNISAで投資している方は多いと思います。
リベシティの皆さんは投資に前向きな方も多く、年間のNISA枠を使い切ってしまう方や、
数年後にNISA枠が埋まり、特定口座での積立を検討している方も増えてくるのではないでしょうか。
現在の年齢や目的にもよりますが、
「NISAの1800万円枠で老後資産を目指すなら、それ以上投資信託を増やす意味はあるのか?」
「NISAを使い切ったら、キャッシュフロー目的で高配当株に回したい」
「若いうちに“使うための投資”に切り替えたい」
──といった考え方も人それぞれです。
結局のところ、自分が納得できる形でお金と向き合うことが何より大切だと思っています。
そのうえで、
「特定口座でも投資信託を積み立てている方」や「今後始めようと考えている方」に向けて、
こんな方法もあるよ、という一つの考え方をお伝えします。
1. 投資信託を複数持つと、なぜ資産拡大しやすくなるのか?
投資信託を1本だけにまとめて運用するのはシンプルで管理が楽ですが、
複数に分けておくことで**「税金を払うタイミングをコントロールできる」**という大きなメリットが生まれます。
これは“税金の繰り延べ”という効果で、
同じリスクでも手元に残るお金を増やす考え方です。
2. 同じ投資先でも“分けて積み立てる”ことで生まれる差
例:3本の投資信託を時期をずらして購入した場合

合計ではどちらも同じ5,000万円ですが、
評価損益率の小さいCファンドから売却すれば課税額を抑えられるという点がポイントです。
3. 複数保有で得られる税金メリットの具体例
- 1本だけを100万円売却した場合:
元本60万円、利益40万円 → 税金約8万円 - 評価損益率の低いCファンドを100万円売却した場合:
元本77万円、利益23万円 → 税金約4.6万円
→ 同じ100万円を取り崩しても、約3.4万円の差。
この差額を再投資できるため、長期的に見ると資産が増えやすくなります。
4. 「税金の繰り延べ効果」でリターンを高める
この戦略の本質は、「税金を後回しにする」こと。
評価益の小さいファンドから売却することで、先に税金を払わずに資金を運用に回すことができます。
結果的に、複利の効果が長く続き、資産の伸びが加速するのです。
5. よくある疑問:「複数持つと複利効果が薄まるのでは?」
よくある誤解ですが、複数に分けても複利効果は同じです。
例えば、1本の投資信託に100万円を年利5%で運用すると年間5万円のリターン。
一方、50万円×2本に分けても、それぞれ2.5万円×2=5万円のリターンで変わりません。
重要なのは「運用総額」と「平均利回り」であり、分けたから不利になることはありません。
6. 複数保有のもう一つの利点:もしもの時にも柔軟に対応できる
投資信託は本来、長期でじっくり積み立てていくことが前提ですが、
人生では思わぬ出費や資金が必要になる場面もあります。
そのようなとき、複数の投資信託を分けて持っていれば、
評価損益が比較的少ないファンドから売却することで、
税金負担を抑えながら必要な資金を確保しやすくなります。
また、もし売却時点で評価損が出ていた場合には、
その損失を確定させて他の利益と損益通算すること(いわゆる「損出し」)も可能です。
あくまで“緊急時の選択肢”として知っておくだけでも安心です。
🔹証券会社別のおすすめ組み合わせ例
同じ投資先(S&P500)に投資していても、運用会社が違えば別の投資信託として扱われます。
信託報酬も低く、複数保有に最適な組み合わせは以下の通りです。
- SBI証券の場合
➡︎ eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
+ SBI・V・S&P500インデックス・ファンド - 楽天証券の場合
➡︎ eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
+ 楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド
どちらも同じS&P500に連動しており、信託報酬も非常に低コスト。
組み合わせておくことで、将来の定額取り崩しなどにおいて税金の繰延効果を得られる可能性があります。
長期投資を前提とする場合、このような複数保有は資産形成の効率化にもつながります。
7. デメリットとまとめ
複数保有のデメリットは、せいぜい「保有数が増える」ことくらい。
それ以外は管理の手間も少なく、リスクを変えずに資産効率を高められる合理的な方法です。
✅ まとめ:複数保有は“長期的な税金コントロール戦略”
- 同じ投資先でも、時期をずらして複数の投資信託を持つと税金をコントロールできる
- 評価益の小さいファンドから売ることで「税金の繰り延べ」が可能
- 信託報酬の低いS&P500系ファンドを選べば、初心者でも簡単に実践できる
- リスクは変わらず、複利効果もそのまま
- 長期投資を前提とした「将来の取り崩し」において、節税しながら資産を効率的に増やせる
💬 最後に
NISAの非課税枠を使い切った後も、
特定口座での積立を通じて、税金の繰延効果を活かしながら長期的に資産形成を続けることができます。
「投資信託は1本で十分」と考える方も多いですが、
複数保有という選択は、同じリスクでより効率的に資産を育てる長期戦略です。
焦らず、自分のペースで積み上げていきましょう。
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